ジヒドロピラン (dihydropyran) とは、分子式が C5H8O と表される環状エーテルで、酸素1個と二重結合1個を含む6員環構造を持つもの。ピランが2個水素化を受けた構造に当たる。二重結合の位置の違いによる異性体が存在する中で 3,4-ジヒドロ-2H-ピラン (3,4-dihydro-2H-pyran) が有機合成において使用頻度が高いため、単に「ジヒドロピラン」という場合は通常 3,4-ジヒドロ-2H-ピラン を指す。DHP と略称される。有機合成化学において、アルコールヒドロキシ基保護するために用いられる。

ジヒドロピラン
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3,4-ジヒドロピラン
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3,6-ジヒドロピラン
識別情報
CAS登録番号 110-87-2 チェック
PubChem 8080520540
ChemSpider 7789 チェック
特性
化学式 C5H8O
モル質量 84.12
外観 無色の液体
密度 0.992 g/mL at 25 °C
融点

-70 °C, 203 K, -94 °F

沸点

86 °C, 359 K, 187 °F

への溶解度 有機溶媒
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成

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3,4-ジヒドロ-2H-ピランはテトラヒドロフルフリルアルコールアルミナ上で 300-400 ℃ に加熱して合成される[1]

 
DHPの合成法

利用

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3,4-ジヒドロ-2H-ピランは非水条件、酸触媒のもとにアルコールと反応してテトラヒドロピラニルエーテル(THPエーテル)を作る。THPエーテルは酸と水で容易に元のアルコールに戻すことができることと、酸以外の試薬に対しては比較的耐久性を示すため、アルコールの保護に用いられる。

 
アルコールのTHP保護、脱保護

ジヒドロピランはラネーニッケルのもとの水素化によりテトラヒドロピランに変換される[2]

脚注

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  1. ^ Sawyer, R. L.; Andrus, D. W. "2,3-Dihydropyran" Organic Syntheses, Coll. Vol. 3, p.276 (1955); Vol. 23, p.25 (1943). オンライン版
  2. ^ Andrus, D. W.; Johnson, J. R. "Tetrahydropyran" Organic Syntheses, Coll. Vol. 3, p.794 (1955); Vol. 23, p.90 (1943). オンライン版