シレジア・インターアーバン

ポーランドのアッパーシレジア地方に路線網を有する路面電車

シレジア・インターアーバンポーランド語: Tramwaje w konurbacji górnośląskiej)は、ポーランドカトヴィツェビトムグリヴィツェベンジンポーランド語版などシロンスク県(アッパーシレジア)の各都市を結ぶ路面電車。全長170 kmを超える大規模な路線網を有しており、2021年現在は都市交通管理会社ポーランド語版(Zarząd Transportu Metropolitalnego、ZTM)による管理のもと、シレジア路面電車会社ポーランド語版(Tramwaje Śląskie S.A.)による運営が行われている[4][5][6]

シレジア・インターアーバン
超低床電車の2012N(2014年撮影)
基本情報
ポーランドの旗 ポーランド
シロンスク県
所在地 ベンジンポーランド語版ビトムホジュフチェラチドンブロヴァ・グルニチャグリヴィツェカトヴィツェムィスウォヴィツェルダ・シロンスカシェミャノヴィツェ・シロンスキェソスノヴィエツシフィエントフウォヴィツェザブジェ
種類 路面電車
路線網 32系統(2021年12月時点)[1][2]
開業 1894年(蒸気鉄道)
1898年(路面電車)[3]
運営者 シレジア路面電車会社ポーランド語版[4]
車両基地 5箇所
(うち1箇所は修理専門)[4]
路線諸元
路線距離 178.35 km[4]
軌間 1,435 mm[4]
複線区間 119.65 km[4]
電化区間 全区間[4]
電化方式 直流660 V
架空電車線方式[4]
路線図
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歴史

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蒸気鉄道から電化まで

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現在のシロンスク県に属するアッパーシレジア地方では、ドイツ時代の19世紀後半の時点で鉄道が輸送機関として使用されていたが、これらは工場の物資輸送が目的であり、工場の労働者が居住する都市や地域の発展に伴い旅客用の公共交通機関が求められるようになった。それを受け、1880年代から各地域を結ぶ鉄道路線の検討が始まり、1892年ドイツベルリンの企業とアッパーシレジア地方のビトム市との間に鉄道建設に関する契約が結ばれた。当初は軌間1,000 mmで貨物輸送も実施する計画が構想されていたが、前者は収益性の兼ね合いから785 mmに変更された他、後者に関しては行政から禁止が命じられ、実現しなかった。最初の路線となるビトム - ピェカルィ間の営業運転が始まったのは1894年5月27日であった[3][7][8][9]

以降は各地域へ向けて路線網の延伸が進められたが、その中で騒音や煤煙が問題視され、1895年にはビトムやグリヴィツェ市内中心部の運用が鉄道馬車に変更される事態となった。それを受け、1896年以降蒸気鉄道を当時の最新技術であった路面電車へ置き換える計画が開始され、発電所の建設を経て1898年に最初の電車が営業運転を開始した。また、同年にはカトヴィツェに本社を置く別企業も路面電車の建設を開始し、1899年以降順次路線網を広げていった。これらの2つの企業は競争を避けるため同年7月7日に合併が行われ、シレジア地方鉄道株式会社(Schesische Kleinbahn Aktien Gesellshaft)が設立されている。以降同社は路線網の電化を積極的に実施し、1901年12月までに蒸気機関車を用いた営業運転は終了したとされている[3][7][10][11]

第二次世界大戦まで

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1907年時点の路線図
 
1939年時点の路線図

20世紀に入って以降もアッパーシレジア地方の路面電車網は急速に拡大し、各都市に向けての延伸が続いた。その中で1912年6月14日には従来の軌間785 mmよりも広い軌間1,435 mm(標準軌)の路線がカトヴィツェ市内に開通し、以降はビトムを始め各都市に同様の軌間を持つ路線が順次拡大した[7][10][12]

これらの路線網の転機となったのは第一次世界大戦終戦後の1922年にアッパーシレジア地方がドイツポーランドに分割された事で、路面電車網も多くの箇所で国境に接触した。これに伴い、シレジア地方鉄道はポーランド側、ドイツ側の各企業に分割され[注釈 1]、以降は双方で軌間の標準軌化を含んだ路線の延伸・近代化が進められた他、ソスノヴィエツザブジェなど、独自の鉄道事業者を立ち上げ路面電車の運営に参入する事例も多く現れた。また、一部区間では貨物輸送も実施されるようになった[10][13][14]

その後、第二次世界大戦の勃発によりアッパーシレジア地方はドイツによって占領され、その影響でポーランド側の路面電車網の多くはドイツ側の企業によって管理される事となった。占領下でも軌間の標準軌化といった工事が進められていたが、ドイツ軍は撤退時に橋梁を始めとする施設を破壊し、終戦後はそれらの復旧に費やされた[15][16]

社会主義時代

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1975年時点の路線図

第二次世界大戦後、アッパーシレジア地方の路面電車網は運輸省の傘下にあるシレジア・デブロウスキー盆地電気鉄道会社(Koleje Elektryczne Zagłębie Śląsko-Dąbrowskiego)に統一され、1948年まで軍の管理下に置かれた。その後、同年に路線バスと共にカトヴィツェ州に設立された公営組織に運営権が引き継がれ、同組織は1951年カトヴィツェ地方運輸公社ポーランド語版(Wojewódzkie Przedsiębiorstwo Komunikacyjne w Katowicach、WPK Katowice)となった[15][17]

それ以前の1946年から路面電車網は再度拡大を始め、各都市や鉱山、工場を結ぶ路線が次々と開通した。その中にはポーランド向けの路面電車車両を生産していたコンスタルポーランド語版(現:アルストム)の工場と接続する区間(1959年開通)も含まれていた。また、戦後も僅かに残った軌間785 mmの路線についても改軌が進められ、1952年までに全区間が軌間1,435 mmに統一された。車庫についても新設や移設が積極的に実施された他、1968年からは運賃徴収方式が順次信用乗車方式に置き換えられていった[15][18]

1970年代からは施設や通信設備の近代化工事も行われたが、一方で同年代以降施設の老朽化や路線バスの普及に伴い一部区間の廃止も実施され、路面電車が姿を消した都市も存在した。ただし、1979年に一旦廃止されたビトムのピエルカスカ通り(ulicy Piekarskiej)の区間については住民からの抗議運動もあり1982年に営業運転を再開している[15][19]

民主化以降

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1992年時点の路線図

1989年ポーランドの民主化の影響により、長年に渡りアッパーシレジア地方の交通機関を運営していたカトヴィツェ地方運輸公社は1991年に解散し、路面電車の運営事業は路面電車・通信事業公社(Przedsiębiorstwo Komunikacji Tramwajowej、PKT)に継承された。その後、同事業者はポーランドの行政改革を受けて2003年シレジア路面電車会社ポーランド語版として再編された後、2007年以降は沿線自治体が株主となる株式会社として運営が行われている。また、施設の管理組織については2019年にそれまでのアッパーシレジア工業地域共同連合ポーランド語版が再編され、2021年現在の都市交通管理公社ポーランド語版となっている[6][20][21][22][23][24][25]

民主化以降、特に2000年代以降は路線バス網の拡充や運用の非効率性などを理由とした一部区間の廃止が断行されたが、一方で1990年代からは施設の近代化工事や超低床電車の導入、既存の車両の更新工事を始めとした車両の近代化が継続して行われている。特に2000年代以降は欧州連合からの支援を受けた大規模な近代化が進められており、今後もカトヴィツェやソスノビエツ市内における延伸を始めとした各種計画が存在する[20][21][26][27][28][29][30]

系統

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2021年12月現在、シレジア・インターアーバンには以下の系統が存在する[1][2]

系統番号 経路 経由都市 備考
0 Stroszek Zajezdnia → Zawodzie Zajezdnia
Zawodzie Zajezdnia → Chorzów Stadion Śląski Pętla Zach.
ビトム
ホジュフ
カトヴィツェ
以下の区間は一部列車のみ運行
・Stroszek Zajezdnia - Chorzów Stadion Śląski Pętla Zach.
・Katowice Plac Wolności - Zawodzie Zajezdnia
・Zawodzie Zajezdnia → Katowice Plac Wolności[31]
1 Gliwice Zajezdnia - Chebzie Pętla グリヴィツェ
ザブジェ
ルダ・シロンスカ
[32]
2 Gliwice Zajezdnia → Stroszek Zajezdnia
Bytom Plac Sikorskiego → Gliwice Zajezdnia
グリヴィツェ
ザブジェ
ビトム
Bytom Jagiellońska → Bytom Plac Sikorskiego、Bytom Plac Sikorskiego → Stroszek Zajezdnia間は一部列車のみ運行[33]
3 Stroszek Zajezdnia → Makoszowy Pętla
Makoszowy Pętla → Zabrze Pole Ludwik
ビトム
ザブジェ
グリヴィツェ
Stroszek Zajezdnia → Zabrze Pole Ludwik間は一部列車のみ運行[34]
4 Gliwice Zajezdnia → Zaborze Pętla グリヴィツェ
ザブジェ
[35]
5 Zaborze Pętla → Stroszek Zajezdnia
Bytom Plac Sikorskiego → Zaborze Pętla
ザブジェ
グリヴィツェ
ビトム
Bytom Jagiellońska → Bytom Plac Sikorskiego、Bytom Plac Sikorskiego → Stroszek Zajezdnia間は一部列車のみ運行[36]
6 Brynów Centrum Przesiadkowe - Bytom Szkoła Medyczna カトヴィツェ
ホジュフ
ビトム
[37]
7 Zawodzie Zajednia - Bytom Plac Sikorskiego カトヴィツェ
ホジュフ
シフィエントフウォヴィツェ
ビトム
Zawodzie Zajednia - Zawodzie Centrum Przesiadkowe間は一部列車のみ運行[38]
9 Gliwice Zajezdia → Chorzów Stadion Śląski
Chorzów Stadion Śląski → Stroszek Zajezdnia
グリヴィツェ
ザブジェ
ルダ・シロンスカ
ビトム
シフィエントフウォヴィツェ
ホジュフ
カトヴィツェ
以下の区間の電停は一部列車のみ停車
・Gliwice Zajezdia → Bytom Plac Sikorskiego
・Bytom Jagiellońska → Bytom Zamłynie
・Chebzie Pawła - Chebzie Pętla
・Bytom Plac Sikorskiego → Stroszek Zajezdnia[39]
11 Stroszek Zajezdnia → Katowice Plac Miarki
Katowice Plac Miarki → Chorzów Metalowców
ビトム
ホジュフ
カトヴィツェ
Stroszek Zajezdnia - Chorzów Metalowców間は一部列車のみ運行[40]
13 Siemianowice Plac Skargi - Katowice Plac Wolności シェミャノヴィツェ・シロンスキェ
カトヴィツェ
Katowice Rynek - Katowice Dworzec PKP間の電停は一部列車のみ停車[41]
14 Zawodzie Zajezdnia → Brynów Centrum Przesiadkowe
Brynów Centrum Przesiadkowe → Szopienice Pętla
カトヴィツェ Zawodzie Zajezdnia → Szopienice Pętla間は一部列車のみ運行[42]
15 Osiedle Zamkowe Pętla - Katowice Plac Wolności ベンジンポーランド語版
ソスノヴィエツ
カトヴィツェ
Osiedle Zamkowe Pętla - Pogoń Akademiki間は一部列車のみ運行[43]
16 Siemianowice Plac Skargi →Brynów Centrum Przesiadkowe
Brynów Centrum Przesiadkowe → Wełnowiec Plac Alfreda
シェミャノヴィツェ・シロンスキェ
カトヴィツェ
Siemianowice Plac Skargi - Wełnowiec Plac Alfreda、Katowice Rynek - Katowice Św. Jana間は一部列車のみ運行[44]
17 Gliwice Zajezdnia → Chorzów Rynek
Chorzów Rynek →Stroszek Zajezdnia
グリヴィツェ
ザブジェ
ビトム
シフィエントフウォヴィツェ
ホジュフ
以下の区間の電停は一部列車のみ停車
・Gliwice Zajezdnia → Bytom Plac Sikorskiego
・Bytom Łagiewnicka → Bytom Jagiellońska
・Bytom Plac Sikorskiego → Stroszek Zajezdnia[45]
19 Stroszek Zajezdnia - Katowice Plac Wolności ビトム
ホジュフ
カトヴィツェ
[46]
20 Szopienice Pętla - Chorzów Batory Zajezdnia カトヴィツェ
ホジュフ
[47]
21 Tworzeń Huta Katowice - Milowice Pętla ドンブロヴァ・グルニチャ
ベンジンポーランド語版
ソスノヴィエツ
[48]
22 Czeladź Dworzec - Tworzeń Huta Katowice チェラチ
ベンジンポーランド語版
ドンブロヴァ・グルニチャ
[49]
23 Chorzów Stadion Śląski Pętla Zach. - Zawodzie Zajezdnia カトヴィツェ [50]
26 Osiedle Zamkowe Pętla - Konstantynów Okrzei ソスノヴィエツ
ベンジンポーランド語版
Osiedle Zamkowe Pętla - Pogoń Akademiki間は一部列車のみ運行[51]
27 Osiedle Zamkowe Pętla - Konstantynów Okrzei ソスノヴィエツ
ベンジンポーランド語版
[52]
28 Osiedle Zamkowe Pętla - Tworzeń Huta Katowice ベンジンポーランド語版
ドンブロヴァ・グルニチャ
[53]
35 Osiedle Zamkowe Pętla - Zagórze Pętla ベンジンポーランド語版
ソスノヴィエツ
Osiedle Zamkowe Pętla - Zagórze Pętla間は一部列車のみ運行[54]
36 Zawodzie Zajezdnia - Brynów Centrum Przesiadkowe カトヴィツェ [55]
38 Stroszek Zajezdina → Bytom Powstańców Śląskich
Bytom Kościół św. Trójcy → Stroszek Zajezdina
ビトム Stroszek Zajezdina → Bytom Powstańców Śląskich間は一部列車のみ運行[56]
41 Dąbrowa Górnicza Urząd Pracy Pętla - Milowice Pętla ドンブロヴァ・グルニチャ
ベンジンポーランド語版
ソスノヴィエツ
[57]
42 Dąbrowa Górnicza Urząd Pracy Pętla - Czeladź Dworzec ドンブロヴァ・グルニチャ
ベンジンポーランド語版
チェラチ
[58]
43 Gliwice Zajezdna → Chorzów Batory Zajezdnia
Chorzów Batory Zajezdnia → Koszutka Słoneczna Pętla
グリヴィツェ
ザブジェ
ルダ・シロンスカ
シフィエントフウォヴィツェ
ホジュフ
カトヴィツェ
Gliwice Zajezdna → Koszutka Słoneczna Pętla、Chorzów Batory Zajezdnia → Chorzów Batory Zajezdnia間は一部列車のみ運行[59]
45 Zawodzie Zajezdnia - Katowice Plac Wolności カトヴィツェ [60]
46 Zawodzie Zajezdnia → Zawodzie Zajezdnia
Brynów Centrum Przesiadkowe → Koszutka Słoneczna Pętla
カトヴィツェ Zawodzie Zajezdnia方面はラケット式環状系統[61]
49 Stroszek Zajezdnia - Bytom Plac Sikorskiego ビトム [62]

車両

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営業用車両

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2021年現在、シレジア・インターアーバンで営業運転に使用されている車両は以下の通り。これらの車両は以下の4都市に設置されている車庫に配置され、各車庫が管理する区域の系統で運用に就いている他、修理はホジュフに位置する車両工場で行われる[4][63]

一覧

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シレジア・インターアーバン 営業用車両一覧
(2024年3月1日現在)[63]
形式 車種 両数 備考
ベンジン カトヴィツェ ビトム グリヴィツェ 合計
N 2軸車 - - 2両 - 2両
105N ボギー車 - 1両 - - 1両
105Na 105Na ボギー車 14両 5両 10両 16両 45両
105N-2K
105 2K
9両 - 16両 6両 31両 更新車両
105N-HF 11AC 14両 4両 15両 12両 45両 更新車両
105NF C 8両 - 14両 9両 31両 更新車両
111N ボギー車 - - - 6両 6両
116Nd 3車体連接車 - - - 17両 17両 部分超低床電車
8両は更新工事を実施[21]
PT8 PT8 3車体連接車 - - - 5両 5両
Ptm 5両 - - 5両 10両 更新車両
部分超低床電車
E1 2車体連接車 2両 - - - 2両 臨時列車用
"ツイスト" 2012N 3車体連接車 10両 20両 - - 30両 部分超低床電車
2012N-10 - 8両 - - 8両 部分超低床電車
2017N - 32両 - - 32両 部分超低床電車[64]
"モデルス・ベータ" MF 16 AC BD 3車体連接車 5両 - 7両 - 12両 部分超低床電車
MF 11 AC BD ボギー車 - - 3両 - 3両 部分超低床電車
MF 10 AC 5両 - 8両 - 13両 部分超低床電車
合計 72両 70両 75両 76両 293両
 
N(2013年撮影)

第二次世界大戦中に製造されたドイツの戦時型2軸車クリークスシュトラーセンバーンワーゲン)を基に、戦後のポーランドで開発された車両。シレジア・インターアーバンには1949年以降1954年までに137両が導入された。2021年現在も近代化工事を受けた2両(954、1118)が営業用車両として在籍し、ビトム市内を走る38号線で営業運転に使用されている[63][65][66]

105N・105Na

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105N(2012年撮影)
 
105Na(2011年撮影)

アメリカ合衆国で開発された高性能路面電車・PCCカーの技術を基に開発された、抵抗制御方式を採用しているボギー車。シレジア・インターアーバンには新造車両として1975年以降105Nは264両、制御装置や車体構造を変更した105Naは227両導入された他、2006年2008年にもクラクフ市電ポーランド語版から36両の105Naの譲渡が行われた。2000年代以降は一部車両に対してポーランド各地の企業・工場で近代化工事が行われており、前面形状の変更、車内の座席や床の滑り止めの交換、電気機器の更新など多岐に渡る工事が実施されている[63][67][68]

また、1989年には電機子チョッパ制御方式を採用した105NTを2両導入したが、故障の頻発を始めとする欠陥が原因となり短期間で営業運転から離脱した[63][67]

 
111N(2012年撮影)

1993年から導入が実施された車種。基本的な構造は105Naと同様だが運転台や乗降扉が車体両側に設置されており、ループ線が存在しない系統でも折り返し運転が可能である。ザブルスカ通り(ulicy Zabrskiej)の橋梁改修工事に合わせて導入が実施され、2021年時点で6両が在籍する[63]

 
116Nd「カーリク」(2015年撮影)

シレジア・インターアーバン初の超低床電車(部分超低床電車)で、カーリク(Karlik)と言う愛称を持つ。車内の64 %が床上高さを下げた低床構造になっている他、回生ブレーキが搭載されており電力の回収が可能である。2021年時点で17両が在籍しており、うち2両は冷房装置の搭載をはじめとした更新工事が施されている[21][63][69]

PT8・Ptm

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PT8(2012年撮影)

元はドイツフランクフルト・アム・マインの路面電車(フランクフルト市電)で使用されていた両運転台の3車体連接車。導入に際してはポーランドの安全基準への適合や機器の交換が実施された。その後、10両については中間車体の低床車体への交換、制御方式の電機子チョッパ制御への変更、片運転台・片方向化といった近代化工事が施され、形式名も「Ptm」に改められている。一方で5両については未改造のまま使用されたが、路線の整備が進んだ事による両運転台車両の需要減少やバリアフリーへの未対応といった状況から2024年5月までに営業運転から離脱した[63][70][71][72]

 
E1(2019年撮影)

元はオーストリアウィーンウィーン市電)へ向けて1970年代に製造された2車体連接車。ポーランドでの使用に合わせた安全対策や近代化などの工事を受けて2011年から2012年にかけて25両が導入されたが、老朽化のため2021年3月14日をもって定期運転を離脱し、同年6月時点で在籍するのは臨時列車用に在籍する2両のみである[63][73]

2012N・2012N-10・2017N

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2012N「ステップ」(2020年撮影)

ポーランドの鉄道車両メーカーのペサが開発した部分超低床電車2013年以降導入が実施されており、2021年現在は以下の車種が在籍する[63][64][74][75][76]

  • 2012N - 全長32 m、低床率74 %。愛称は「ステップ」(Step)。2013年から2014年にかけて導入。
  • 2012N-10 - 2012Nの増備車。2020年以降導入。
  • 2017N - 全長25 m、低床率69 %。愛称は「グワレック」(Gwarek)。2020年以降導入。

MF 16 AC BD・MF 10 AC・MF 11 AC BD

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MF 16 AC BD「スカルベック」(2015年撮影)

ポーランドの路面電車車両メーカーのモダトランスが開発・製造した部分超低床電車2015年に導入されたMF 16 AC BD以降、2021年までに以下の車種が導入されている[63][77][78]

  • MF 16 AC BD - 両運転台の3車体連接車。低床率は23 %。愛称は「スカルベック」(Skarbek)。
  • MF 10 AC - 片運転台のボギー車。愛称は「カシア」(Kasia)。
  • MF 11 AC BD - 両運転台のボギー車。愛称は「カシア」。

保存車両

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シレジア路面電車会社では、他都市から譲渡された車両を含め、歴史的な路面電車車両の動態保存運転を実施している。2021年現在の保存車両は以下の通り[65][79]

シレジア・インターアーバン 保存車両一覧
(2021年6月21日現在)[65][79]
形式 番号 車種 備考
Nポーランド語版 1100 2軸車
4Nポーランド語版 1167 2軸車
4ND1ポーランド語版 1263 2軸車 付随車
13N 308 ボギー車 2012年ワルシャワ市電から譲渡[80]
102N 8 2車体連接車
102Na 183 2車体連接車
105N 338 ボギー車 [81]
546 [82]


事業用車両

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脚注

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注釈

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  1. ^ シレジア地方鉄道はドイツ側の事業者となった。

出典

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  1. ^ a b Rozkład jazdy”. Metropolitan Transport Authority. 2021年12月31日閲覧。
  2. ^ a b Schematy i mapy”. Metropolitan Transport Authority. 2021年12月31日閲覧。
  3. ^ a b c Patryk Mataniak (2018-1). “Od karocy do pierwszego elektrycznego tramwaju”. Silesia Tram News (Tramwaje Śląskie S.A.): 8-9. https://www.tram-silesia.pl/stn/201801/tram_01_18_net.pdf 2021年12月31日閲覧。. 
  4. ^ a b c d e f g h i Infrastruktura techniczna”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2021年12月31日閲覧。
  5. ^ 名取紀之 (2012年7月19日). “"未舗装路側軌道"を求めて。(下)”. ネコ・パブリッシング. 2012年8月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  6. ^ a b OD STYCZNIA ZARZĄD TRANSPORTU METROPOLITALNEGO”. Zarząd Transportu Metropolitalnego (2018年12月27日). 2021年12月31日閲覧。
  7. ^ a b c HISTORIA ŚLĄSKICH TRAMWAJÓW - PRZED ELEKTRYFIKACJĄ”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2008年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  8. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 9.
  9. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 12-14.
  10. ^ a b c HISTORIA ŚLĄSKICH TRAMWAJÓW - TRAMWAJE ELEKTRYCZNE DO 1922 ROKU”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2008年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  11. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 33-34.
  12. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 37-38.
  13. ^ HISTORIA ŚLĄSKICH TRAMWAJÓW - POD DWOMA ZARZĄDAMI W LATACH 1922-1939”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2008年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  14. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 62-63,68-69,78.
  15. ^ a b c d HISTORIA ŚLĄSKICH TRAMWAJÓW - PAMIĘTNE PÓŁWIECZE 1939-1989”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2008年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  16. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 106-107.
  17. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 107-108.
  18. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 113.
  19. ^ Krzysztof Soida 1998, p. 119.
  20. ^ a b HISTORIA ŚLĄSKICH TRAMWAJÓW - OSTATNIA DEKADA XX WIEKU”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2008年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  21. ^ a b c d Modernizacja linii 6/41”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2007年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月31日閲覧。
  22. ^ Krzysztof Soida, Zbigniew Danyluk & Przemysław Nadolski 2012, p. 160-161.
  23. ^ Krzysztof Soida, Zbigniew Danyluk & Przemysław Nadolski 2012, p. 190-198.
  24. ^ Krzysztof Soida, Zbigniew Danyluk & Przemysław Nadolski 2012, p. 198-214.
  25. ^ Struktura własnościowa”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2021年12月31日閲覧。
  26. ^ Krzysztof Soida, Zbigniew Danyluk & Przemysław Nadolski 2012, p. 281-295.
  27. ^ Aktualności”. Tramwaje Śląskie S.A.. 2021年12月31日閲覧。
  28. ^ Nowa trasa tramwajowa na Zagórze w Sosnowcu z umową”. TransportPubliczny (2020年4月28日). 2021年12月31日閲覧。
  29. ^ Tramwaje Śląskie z unijna kasą na tabor i infrastrukturę”. INFOTRAM (2017年12月11日). 2021年12月31日閲覧。
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参考資料

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  • Krzysztof Soida; Zbigniew Danyluk; Przemysław Nadolski (2012-10-5). TRAMWAJE GÓRNOŚLĄSKIE (TOM 2). 978-83-931006-6-8. ISBN 978-83-931006-6-8 
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  • Marek Graff (2015/7-8). “Nowy tabor tramwajowy w Polsce”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy "TTS" Sp. z o.o). https://yadda.icm.edu.pl/baztech/element/bwmeta1.element.baztech-b6a4adc0-b1a1-43b7-8650-28c3efcbc459/c/Graff_Nowy.pdf 2021年12月31日閲覧。. 

外部リンク

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