シバテリウム
シバテリウム(Sivatherium 、シヴァテリウムとも)は新生代鮮新世前期から更新世後期(あるいは完新世前期)にかけて生息した、大型草食動物の絶滅した属。脚や首はそれほど長くないため外観の印象は異なるが、キリン科に属する。属名 Sivatheriumの Siva はヒンドゥー教の最高神の一柱である破壊神シヴァ(Shiva)に由来し、獣 -therium とあわせ「シヴァの獣」の意となる。
シバテリウム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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シバテリウム模型
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
鮮新世 - 更新世? | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Sivatherium Falconer & Cautley, 1836[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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形態
編集肩高1.7[2] - 2.2 m、全高3m、頭骨長70 cm、体重1,250kg[3][4]。現生のキリンに及ばぬとはいえ大型の動物である。頭部には二対の角を持ち、一対は眼窩上のやや小さな円錐形の突起、もう一対は特徴的な翼状の大型のものである。これらの角は、現生のキリンのように皮膚に覆われていた(オッシコーン、Ossicone)か[2]、あるいはウシなどの様に角質の鞘で覆われていた[5]と推定されている。体型はキリンに比べて首や四肢が短く、また骨太な体幹を持つため、ウシやヘラジカに似た形態となっている[3][2]。
またシバテリウム属に見られる進化の傾向としては、後期の種になるほど中手骨が中足骨に比して相対的に短くなることが知られているが、これは先行する祖先的な種が木の葉を主食としていた(いわゆる Browsing)のに対し、(狭義の)草食(いわゆる Grazer)へと二次的に進化していく過程にあったためとされる。[2]しかし一方、現生のキリンにつながる系統の種は、四肢と首を伸ばす事でより木の葉食への傾向を強めていった。
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シバテリウム頭骨
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生態復元想像図
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S. giganteum 想像図
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1890年代における復元図
進化
編集キリン科は現生のオカピに似た形態のパレオトラグス Palaeotragus などの初期群から進化した事が知られている。これらのグループは森を生息域としていたが中新世において乾燥化が全世界的に進行し、鮮新世において大半のグループが草原への進出を余儀なくされた。[6]かれらのうち、現生のキリンにつながる系統は脚を伸ばす(結果的に首も伸びる)事で高木の葉を食べる事に適応した。一方、硬いイネ科の植物を食べる適応を見せていたのがシバテリウム亜科であり、シバテリウムはその系統の最後に現れた属である。[2]またオカピは森林に留まったものたちの子孫とされ、その形態は中新世からほとんど変化していない[6]。
分布・生息域
編集アジア、アフリカ、ヨーロッパから化石が出土。模式種 S. giganteum がインド、シワリク層群から知られている。[3]また S. maurusium がキリン属の初期種ジラファ・ジュマエ Giraffa jumae などとともにアフリカ大陸東部に生息していた[2]。
人間との関係
編集シバテリウムの化石記録は更新世で途絶え、完新世からは知られていない。しかし先史時代、サハラ砂漠の岩陰遺跡の壁画にシバテリウムらしき動物が描かれていることが知られている[3]。また、数千年前のメソポタミアの遺跡からはやはりシバテリウムらしき古代シュメール人の手による小さな青銅像も出土している[7]。これらのことから、シバテリウムあるいはその近縁種が歴史時代まで僅かではあるが生き延びていた可能性が高いとされる。彼等の衰退と絶滅の原因は様々なものが考えられるが(氷河期とその終結に伴う気候変動、シカ科やウシ科などの他の偶蹄類などとの競争等)人間による狩猟圧や生息環境の変化もその一因となった可能性はある。
脚注
編集- ^ The Paleobiology Database
- ^ a b c d e f 『アフリカの哺乳類』 132頁
- ^ a b c d 『絶滅哺乳類図鑑』 180頁
- ^ Basu, Christopher; Falkingham, Peter L.; Hutchinson, John R. (January 2016). “The extinct, giant giraffid Sivatherium giganteum: skeletal reconstruction and body mass estimation”. Biology Letters 12 (1): 20150940. doi:10.1098/rsbl.2015.0940. PMC 4785933. PMID 26763212 .
- ^ 『脊椎動物の進化』 431頁
- ^ a b 『絶滅巨大獣の百科』 81頁
- ^ 『脊椎動物の進化』 432頁
参考文献
編集- 富田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年、180, 182頁頁。ISBN 4-621-04943-7。
- Alen Turner、Mauricio Anton 著、富田幸光 訳『アフリカの哺乳類 : その進化と古環境の変遷』丸善、2007年、129 - 135, 221, 224頁頁。ISBN 978-4-621-07834-1。
- エドウィン・ハリス・コルバート、マイケル・モラレス『脊椎動物の進化(原著第5版)』田隅本生、築地書房、2004年、431 - 432頁頁。ISBN 4-8067-1295-7。
- 今泉忠明 著、日本ネコ科動物研究所編 編『絶滅巨大獣の百科』データハウス〈動物百科〉、1995年、80 - 81頁頁。ISBN 4-88718-315-1。
関連項目
編集外部リンク
編集- 川崎悟司イラスト集・シバテリウム - ウェイバックマシン(2019年1月1日アーカイブ分)
- Sivatherium
- Sivatherium at the Saketi Fossil Park