サイプレス・ヒルCypress Hill)はアメリカカリフォルニア州で結成された、ヒップホップグループである。ラテン系アメリカ人による音楽グループとしてアメリカでは初めて複数のプラチナ認定を受けたグループであり、全世界で2000万枚を超えるセールスを誇る。1990年代、特に初期の4枚のアルバムを発表した時期においてはウエスト・コースト・ヒップホップの先駆的グループとしても言及されるほどの影響力を持つ[1]。サイプレス・ヒルはまた、アメリカ国内における医療用及び嗜好品用マリファナの合法化を支持している事でも知られ、メンバー自らマリファナを積極的に摂取する等の活動を展開している。2010年、スヌープ・ドッグがクリエイティブ・チェアマンを務めるプライオリティ・レコーズに移籍。

サイプレス・ヒル
Cypress Hill
基本情報
別名 DVX
出身地 アメリカ合衆国の旗アメリカ合衆国
ジャンル ウエスト・コースト・ヒップホップハードコアヒップホップ
活動期間 1988年 - 現在
レーベル Ruffhouse(英語版記事)
コロムビア・レコード
Priority Records(英語版記事)
EMI Records(英語版記事)
共同作業者 アルケミスト
コットンマウス・キングス
ピットブル
トラヴィス・バーカー
公式サイト https://cypresshill.com/
メンバー B-リアル
DJマグス
セン・ドッグ
エリック・ボボ
旧メンバー メロウ・マン・エース

来歴

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Germany 1998

現メンバーの一人であるセン・ドッグと元メンバーであるメロウ・マン・エースはキューバ出身の兄弟であり、1971年アメリカ合衆国へ一家で移住し、カリフォルニア州サウスゲイトに住居を構えた。セン・ドッグとメロウ・マン・エースの2人は1988年に、ニューヨーク出身でThe 7A3(英語版記事)のDJをしていたDJマグス、ロサンゼルス出身のB-リアルの2人と出会い、DVX (Devastating Vocal Excellenceの略)という名のヒップホップグループを結成する。このグループが現在のサイプレス・ヒルの原型となる。後にメロウ・マン・エースはグループを離れ、それを機にグループ名をサイプレス・ヒルへと改めている。このサイプレス・ヒルという名前は、サウスゲイトにあるCypress Avenueという通りに由来している[2]

1989年にデモテープを制作しレコード会社との契約に成功、1991年にはデビューアルバムCypress Hillを発表する。このアルバムから「The Phuncky Feel One」、「How I Could Just Kill a Man」、「Hand on the Pump」、「Latin Lingo」の4曲がシングルカットされ、特に「The Phuncky Feel One」、「How I Could Just Kill a Man」の2曲は地元ラジオ局や大学内で流されるカレッジ・ラジオでヘビーローテーションされる程の人気を得た。また「Hand on the Pump」、「Latin Lingo」の2曲の歌詞はスペイン語英語が組み合わされており、以降スペイン語の頻繁に登場する歌詞はグループの特徴となっている。最終的にアルバムはアメリカ国内だけで2ミリオンセールスを達成しBillboard 200では最高31位につけた。さらに2パックが出演していた映画『ジュース』へサウンドトラックを提供する等活動の範囲を広げ、1992年にはロラパルーザへの出演も果たしている。

1993年にセカンドアルバムBlack Sundayを発表、3ミリオンセールスを達成しデビュー2年目にして早々にBillboard 200を制した。シングルカットされた「Insane in the Brain」ではクロスオーバーを志向したサウンドを展開。その縁からかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのツアーに登場した。

1994年Woodstock '94に出演し、そのステージ上にて著名なパーカッショニストウィリー・ボボの息子でありビースティ・ボーイズとのセッション経験を持つエリック・ボボをパーカッション担当の新メンバーとして紹介した。

1995年、サードアルバムCypress Hill III: Temples of Boomを発表、アメリカレコード協会よりプラチナ認定を受けるヒットとなった。またNORMLへの支援を目的としてマリファナの合法化を主張する雑誌として知られるハイ・タイムズが主導して制作したコンピレーションアルバムHempilation: Freedom Is NORMLBlack Sunday収録の「I Wanna Get High」を提供した。さらにザ・シンプソンズへのゲスト出演も果たし、アニメ内ではあるがロンドン交響楽団と共演した。

メンバー

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元メンバー

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音楽的特長

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トラック

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DJマグスが主に担当。ローファイで切れのあるビートとベースラインに、ギター等様々な生楽器を多用し、その上にサイレン音等のエフェクトをのせたトラックが特徴。生楽器の多用という点では同じくウエスト・コースト・ヒップホップに分類されるドクター・ドレーウォーレン・Gらが作り出したGファンクと共通するが、それとも一味違う独特な雰囲気を醸し出している。

ラップ

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セン・ドッグとB-リアルのツインMCスタイルを特徴としている。B-リアルの異様に甲高く鼻にかかったような声はサイプレス・ヒルの最大の特徴の一つであるが、彼によればDJマグスとセン・ドッグが彼の地声を気に入らなかったために自ら考え出したものとのことである[3] 。このようなボーカルのスタイルに行きついた経緯について彼は「他人と明確に異なった個性を主張したいのであれば自らの持つすべてを利用すべきである」と主張している。 対して、セン・ドッグは低い声を特徴とし暴力的な歌詞とシャウトを多用している。2人の声は非常に対照的でありながら共に混ざり合い一種の協調を生んでいると評される。

元々B-リアルは歌詞担当のメンバーとして加入したが、セン・ドッグとメロウ・マン・エースのスペイン語の会話を目にした際に英語とスペイン語を組み合わせた歌詞というアイディアの着想を思いつき、これ故に正式なメンバーとして迎え入れられたという経緯がある。

また、サイプレス・ヒルはある種のマンガ的雰囲気をまとった暴力性を歌詞に持ち込んだと評される。

パーカッション

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エリック・ボボによるティンバレス等ラテン系の打楽器は、特にライヴにおいては音の多彩さと厚み、迫力を増し、ラテン・ミュージックとヒップホップ/ロックのミクスチャーという効果的な役目も果たしている。

ロックへの接近

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元々、そのダークな世界観、元ギャングというハードコアな経歴や過激な歌詞、多彩な音を使用した重量感のあるミクスチャー的サウンドであったが、2000年リリースのアルバム「Skull & Bones」でヘヴィなディストーションギターに生ドラム&ベースという編成のバンドでレコーディング、ヘヴィ・ロックのサウンドを本格的に取り入れた。ライヴでもバンドを引き連れていることがある。また、1stアルバム収録の「How I Could Just Kill A Man」はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンによってロック・カバーされていて、ライヴで共演したこともある。 2017年、B-リアルがハリウッド・アンデッド の5thアルバム、『Five』の収録曲の一つに参加している。

マリファナ嗜好

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思想、歌詞の内容の大部分を占めている要素がマリファナである。喫煙器具であるボングの使用方法を解説する「Hits From The Bong」や、ホームグロワー(家でマリファナを栽培する人々)に捧げた「Dr. Greenthumb」等、マリファナに関する楽曲を数多く発表、愛好家だということを強調するとともに、合法化を主張し続けている。ライヴではステージ上で巨大ボングを持ち出してきて、自身だけでなく観客にも吸わせるというパフォーマンスが有名。極太ジョイント(マリファナを巻きタバコ状にしたもの)をステージ上で吸うことも。マリファナ仲間として楽曲やライヴで共演したアーティストはKottonmouth Kingsスヌープ・ドッグなどがいる。また、マリファナを題材にした映画「ビー・バッド・ボーイズ」にゲスト出演した。

ストリート・カルチャーへの影響-ファッション

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チカーノ・サグ(ギャング)スタイルのファッションや振る舞いは、その音楽性と相まって世界中のストリートカルチャーに影響を与えた。特に彼らが広告モデルも務めるロサンゼルスの「Joker Brand」はチカーノ・サグ・ファッションの象徴として、頻繁にステージ上などで着用する彼らによって名が知れ渡ったといっても過言ではないだろう。 そして最近では、DJマグスが手がけるブランド「Soul Assassins」(en:Soul Assassins)が話題をよんでいる。

ディスコグラフィー

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関連項目

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脚注

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  1. ^ Paul Edwards著『How to Rap: The Art & Science of the Hip-Hop MC』 Chicago Review Press 2009年 pp.316
  2. ^ Whiplash (2006年4月6日). “Cypress Hill” (ポルトガル語). 2019年2月1日閲覧。
  3. ^ Coleman, Brian. Check The Technique: Liner Notes For Hip-Hop Junkies. New York: Villard/Random House, 2007, pp. 122–123.

外部リンク

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