ゴダールの映画史
『ゴダールの映画史』[1](仏語Histoire(s) du cinéma、「単数(複数)の映画史」の意)は、ジャン=リュック・ゴダール脚本・監督による、1988年 - 1998年の間に断続的に製作および発表され1998年に完成した、全8章からなるフランスのビデオ映画シリーズである。2002年に84分の再編集版『映画史特別編 選ばれた瞬間 Moments choisis des histoire(s) du cinéma』が製作され、2005年に公開された。
概要
編集構成
編集本作の構成は以下の全8章。邦題は2000年の完全版日本公開時のもの。
- 1A すべての歴史 1A Toutes les histoires 1988年 - 1998年 51分
- 1B ただ一つの歴史 1B Une histoire seule 1988年 - 1998年 42分
- 2A 映画だけが 2A Seul le cinéma 1994年 - 1998年 27分
- 2B 命がけの美 2B Fatale beauté 1994年 - 1998年 29分
- 3A 絶対の貨幣 3A La monnaie de l'absolu 1995年 - 1998年 27分
- 3B 新たな波 3B Une vague nouvelle 1995年 - 1998年 27分
- 4A 宇宙のコントロール 4A Le contrôle de l'univers 1997年 - 1998年 28分
- 4B 徴(しるし)は至る所に 4B Les signes parmi nous 1988年 - 1998年 37分
- 再編集版
- 映画史特別編 選ばれた瞬間 Moments choisis des histoire(s) du cinéma 2002年 84分
略歴
編集- 1989年 「1A」「1B」のファースト・ヴァージョン完成。
- 1994年 「2A」「2B」のファースト・ヴァージョン完成。
- 1995年 「3A」「3B」のファースト・ヴァージョンがロカルノ国際映画祭で上映。ディスカッションに日本から蓮實重彦参加。
- 1996年 「4A」がトロント国際映画祭で上映。製作に出資しているゴーモン社がビデオからフィルムへの変換作業を開始。
- 1997年 「3A」「4A」の35ミリプリント・ヴァージョンが第50回カンヌ国際映画祭で上映。ゴーモン社のラボ部門が総力を注いだこのヴァージョンにゴダールは不満を表明、変換作業が頓挫する。
- 1998年 全8章が完成。フランスのガリマール出版社がゴーモン社と提携、4巻のDVDブックを出版。追ってゴーモン社が4巻のVHSを発売。
- 1999年7月 - 8月 当初から製作に出資しているカナル・プリュスが全欧で毎週1章ずつ放映。
- 1999年11月5日 ドイツECMレコードが全サウンドトラック5枚組、英仏独各語版揃い4巻のCDブックを出版(ISBN 3829153295)
日本での受容
編集1992年5月20日 - 5月21日、『ゴダールの映画史』の邦題で1988年、1989年に先行して発表された1Aと2Aが、『第一章 すべての歴史』、『第二章 単独の歴史』としてWOWOWで2日連続放映された。1994年2月24日、キネコで上映プリントを製作、ACTで劇場公開された。字幕は寺尾次郎。
1998年に全8章の作品として完成した『映画史』は、フランス映画社の配給、「映画史翻訳集団2000」の字幕により、2000年5月13日に1Aから2Bまでの4章が、6月10日に3Aから4Bまでの4章が公開になった。DVDは紀伊国屋書店から『ジャン=リュック・ゴダール 映画史 全8章』ボックスとして、「映画史日本DVD制作集団2001」の詳細なリファレンス(総合監修浅田彰)が付されたものが翌2001年11月22日に発売された。
2005年にフランスで公開された『映画史特別編 選ばれた瞬間』は、2006年8月5日 - 8月6日、フランス映画社の配給で公開された。DVDは紀伊国屋書店から翌2007年3月24日に発売された。
- 映画史翻訳集団2000
松岡葉子、武田潔、堀潤之、橋本一径、ベルナール・エイゼンシッツ、アンドリュー・リトヴァク、蓮實重彦、浅田彰、山田宏一、奥村昭夫、小沼純一、藤原えりみ、細川晋、野谷文昭、桜井美奈、金谷重朗、吉岡芳子、冨田三起子、高水美佐、竹内紀子、川喜多和子、柴田駿
スタッフ
編集- 監督 ジャン=リュック・ゴダール
- 脚本 ジャン=リュック・ゴダール
- 撮影 ジャン=リュック・ゴダール、ピエール・バンジェリ、エルヴェ・デュアメル
- 録音 フランソワ・ミュジ、ピエール=アラン・ベス、ジャン=リュック・ゴダール
- 編集 ジャン=リュック・ゴダール
- 製作 カナル・プリュス(仏テレビ局Canal+)、フランス国立映画センター(CNC)、JLGフィルム、フランス3シネマ(仏テレビ局France 3)、ラ・セット・シネマ(仏テレビ局La Sept)、ゴーモン(Gaumont)、ヴェガ・フィルム
キャスト
編集- ジャン=リュック・ゴダール
- ジュリー・デルピー
- サビーヌ・アゼマ
- アラン・キュニー
- ジュリエット・ビノシュ
- セルジュ・ダネー
- ジャン=ピエール・ゴス
- アンヌ=マリー・ミエヴィル
- アンドレ・マルロー (アーカイヴ・フッテージ)
- パウル・ツェラン (アーカイヴ・フッテージ)
- エズラ・パウンド (アーカイヴ・フッテージ)
参考文献
編集- 『ゴダールの神話』、雑誌「現代思想」臨時増刊号、青土社、1995年10月20日 ISBN 4791719921
註
編集- ^ 本ページタイトル作成に際し、たんに『映画史』(ページタイトルは重複を避けるために「映画史 (映画)」)、あるいはDVDタイトル『ジャン=リュック・ゴダール 映画史 全8章』とする選択肢も存在したが、紛らわしさと煩雑さから、シンプルで明快な日本初出タイトルを採用した。