コメンテーター
コメンテーター(en:commentatorもしくはPundit)とは、特定の分野 (一般的には政治、時事問題、社会科学、科学技術、スポーツ等) についてマスメディアに意見や解説を提供する者。
日本のマスコミにおけるコメンテーターとは、テレビ、ラジオなどのニュース番組やワイドショー(情報番組)などで自らの考えや意見を述べる者のこと。学術的な集会や大学院等の高等教育でのコメンテーターが別途存在し、その意味は別途である。
概要
編集テレビ番組などで、自分の意見や考えを述べる人を指す。
研究者や文化人などの有識者、実務経験者(医者や弁護士)、ジャーナリストが多いが、専門知識を有さないタレントがコメンテーターとして出演することもある。
コメンテーターの役割として、一般視聴者の代弁者となることで視聴者の共感や反感を呼び、番組の内容を視聴者の身近なものと認識させる、番組制作者の意見を代弁する、番組の流れにアクセントをつけるという役割がある[1]。一方で、コメンテーターの視野の狭さ、無難なコメントの多さ、奇抜さを狙ったキャラクター作り、コメンテーターに依存するテレビ局の存在などが問題視される[1]。
コメンテーターの発言内容が不適切だったり、事実と異なったりした場合に、SNS上で炎上することもあり、後日謝罪することもある。
欧米、アジア、中東のニュース番組ではアンカーマン制を取っており、討論番組とニュース番組の差別化が図られているため、日本のニュース番組の様にストレートニュースの中で解説をする番組は存在しない。
歴史(日本)
編集日本においては太平洋戦争中は放送局は日本の政府や大本営側がねつ造する情報を垂れ流しにしていたが(大本営発表など)、太平洋戦争後に報道が政権を監視する役割を担うようになり、そして昭和後期など報道番組が「ワイドショー化」する以前は、ひとつのニュースごとにクロスオーナーシップ及びテレビ局と資本関係の結び付きのある新聞社の編集委員、放送局の解説委員、ならびに通信社の編集委員、外部の専門家や専門性の高い評論家等が加わりニュース解説を行っていた。
1980年代後半以降からのニュース番組の「ワイドショー化」により、一人のコメンテーターが複数のニュースを解説するようになった。そのため、解説の専門性は低下し、コメンテーター個人意見の比率が高くなった。また、報道番組とワイドショーのコメンテーターの人選には歴然とした区別があった。報道番組のコメンテーターには編集委員・解説委員等がキャスティングされ、ワイドショーのコメンテーターは、庶民の声の代弁者であり、専門家としての役割は求められず、イエロージャーナリズムである芸能人のゴシップへの無責任なコメントを売り物にしていた。
1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件以降のオウム真理教事件の報道で、ワイドショーにおいても時事問題を積極的に扱うようになり、必然的にコメンテーターのキャスティングで弁護士やジャーナリストを積極的に起用し、時事問題をコメントするようになった[注 1][2]。庶民の声と称して、番組にある種の政治的傾向を帯びさせたり、かなりつっこんだ指摘をすることも可能となったが報道する側と報道される側の区別はあった。
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行時に、医学的知識が無いコメンテーターの無責任な発言により、コメンテーター不要論やコメンテーターの倫理を求める声が出た。
2022年、安倍晋三元総理が暗殺され、国葬が行われた。その際に、国葬についてテレビ朝日社員のコメンテーター玉川徹が「国葬に電通が入っている」と発言し、SNSで大炎上した。その後、玉川徹は別室から謝罪し、謹慎に追い込まれた。この件でも、コメンテーターの責任を問う声が噴出した。
コメンテーターがコメントしないケース
編集2023年、市川猿之助が母親の自殺ほう助をした件について、「DayDay」(日本テレビ系)で、山里亮太は「これからは法律で決まったこと、法が裁くこと以外に関しては、勝手なことを言うべきではないと思う」と発言し炎上した。
2024年、お笑い芸人の松本人志の性加害疑惑が週刊文春に報じられ、各局ワイドショーで取り扱われた。多くのコメンテーターが「まだ事実かどうかはわからない」旨の発言をした。それについて上沼恵美子は『何もわかってないからコメントできません』は誰でも言える。それをコメントするのがコメンテーターや」と発言した。
コメンテーターに関するコメント(日本)
編集高堀冬彦
編集2014年、元スポーツニッポンの記者で週刊現代専属契約記者の高堀冬彦は、文藝春秋2014年11月号の竹内洋 関西大学東京センター長のワイドショー(情報番組)批判記事を引合いに出し、「経歴や立場が不明確なまま世論を誘導する危険」と「曖昧かつ無責任な発言でミスリードする危険」と述べ、「テレビ業界は、コメンテーターのキャスティングに見識や経験より、数字(視聴率)を持っているタレントを使っているのかもしれない。万一、そうだとすれば、奇怪な形で世論の一部が生まれている不思議な先進国ということになる。」「視聴率は得られにくいかもしれないが、「分からない」「難しい」「知らない」と口にするコメンテーターは信用出来、単に「社会が悪い、政治が悪い」と叫ぶだけでは、アジテーターになりかねない」と述べた[3]。
森永卓郎
編集2014年の毎日新聞の情報によると、経済アナリストの森永卓郎は普天間基地移設問題について「海兵隊は占領にいく部隊だから海兵隊が日本を守ることはありえない。日本がアメリカに逆らった時に、日本を占領するために常駐していると思っている」と述べた事に対し制作側からお蔵入りになり、またリベラル派を自称するコメンテーターがワイドショー(情報番組)、討論番組のオファーが減り干されており、その原因が安倍政権のプレッシャーと主張していた[4]。しかし、後に「国民からのニーズが無くなって来たから」だと自身で分析した[5]。
青山繁晴
編集前独立総合研究所の社長で現参議院議員である青山繁晴は2014年の著書において、日本のメディアの問題点として、「ニュース、情報番組に出演しているコメンテーターの多くが芸能プロダクションと所属契約しており、生活の糧としている[6]。」「そのため現在の憲法をベースにした、平和主義の言い分(なんちゃってリベラル)を主張しないとテレビ等のメディアに出演出来なくなるので、迎合した主張しか出来ない。」と主張した[7][注 2]。
古賀茂明
編集2015年のことだが、元経産省官僚の古賀茂明が2015年3月27日放送の報道ステーション(テレビ朝日)番組放送中、自身の番組コメンテーター降板の件を安倍政権からの圧力だと思い抗議する事案があった。この件を契機に吉田慎一社長は4月28日の定例会見の中で謝罪と担当職員の処分、そして、コメンテーターとの調整部署として「コメンテーター室(仮称)」を置くと発表した[8][9][10]。
勝谷誠彦
編集2015年10月のNEWSポストセブンの情報によると、コラムニストの勝谷誠彦は、自身の情報、バラエティ番組降板理由に対して、NHKだけでなく民放であってもコメントの中に具体的な企業名などは入れてはいけないという暗黙のルールが有り、不祥事があればスポンサーの関連企業を批判するようなコメントを言って来たが、「テレビ、ラジオ局や制作スタッフに対して色々言ってたからですよ。例えば、[日本人がシリアで捕まっている時(ISILによる日本人拘束事件)に、そのニュースを冒頭だけで止めて、後は延々と芸能人の結婚のニュースをやるというのは、日本のテレビ局としてどうしたものか…]と言う事等を番組の幹部に前から意見していたら、クビになった」と分析した[11]。
橋下徹
編集2015年の産経WESTの情報によると、当時大阪市長であった橋下徹は、自身の大阪都構想に対して「分からない」と答えるコメンテーターに対して、事前に与えられたテーマについて情報収集、勉強をせずに出演していると述べた[12]。
松本人志
編集2015年、松本人志(ダウンタウン)は、コメンテーターとして芸人ならではの「すっとんきょう」な発言を求められているとし「『すっとんきょうなことを言うな』とクレームがくる」とコメンテーターの難しさを語った[13]。
有本香
編集2016年、ジャーナリストの有本香は自身が出演している『バイキング』(フジテレビ)のCM裏にて、芸能人のポジションでは保守派のポジションから発言出来る人間がいないこと、日本の選挙権を所持していない外国人タレントが日本の政治に対して極端な視点で物を言うことに対して疑義をはさんだ[14][15]。
武田鉄矢
編集2017年の『ワイドナショー』(フジテレビ)の番組内で、春香クリスティーンの芸能活動休業原因の話題で「中途半端なコメントしか話せない自分に悩みがあった」と吐露したことを受けて、歌手の武田鉄矢は「日本のコメンテーターで高学歴の方がいっぱい出てるじゃないですか? そういう人たちが今、日本のニュース番組(ワイドショー)を切り盛りしてるが、彼らの最大の欠点は『分かりません』って言わないこと。そういうコメンテーターってものすごく危険。」と述べた[16]。
小田嶋隆
編集2020年の週刊ポストで「専門性がないのに『伝える力』に長けていることが問題です。庶民の視点は、往々にして誤解や偏見を含んでいる。だからこそ専門家の目を通す必要があるのに、芸人コメンテーターは視聴者の感じるモヤモヤした感情を脊髄反射で言語化してしまう。」とし、芸人コメンテーターに批判的な立場を取った。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b 金井啓子「コメンテーター職における大学教員の果たす役割の一考察」『近畿大学総合社会学部紀要』第5巻、近畿大学総合社会学部、2016年9月、45-53頁。
- ^ a b ネット時代 弁護士らTVコメンテーターで重宝される法令遵守枠 SAPIO 2015年5月号
- ^ 現代ビジネス 視聴率重視で起用されるテレビコメンテーターたちの危うさ 2014年11月19日
- ^ 特集ワイド:番組改編「政治家との力関係が変化している」【テレビから消えた、辛口コメンテーター】毎日新聞 2014年4月2日 東京本社版夕刊
- ^ NEWSポストセブン 森永卓郎氏 沖縄に米軍基地なぜあるかの解説収録ボツの理由 2015年4月5日 16:00
- ^ 青山繁晴『ぼくらの真実』扶桑社、2014年、193-194頁。ISBN 9784594069827。
- ^ 青山繁晴『ぼくらの真実』扶桑社、2014年、94-95頁。ISBN 9784594069827。
- ^ 「コメンテーター室」新設へ 産経ニュース 2015年4月28日 15:13
- ^ テレビ朝日の報道が「マイルドブレンド化」? メディアが政府に牙を抜かれる異常事態(水島 宏明) 東洋経済Online 2015年5月6日
- ^ →「古賀茂明 § 報道ステーション騒動」も参照
- ^ NEWSポストセブン 勝谷誠彦氏、数々の降板の理由を語る 番組への批判が背景か 2015年10月21日 18:00
- ^ 「勉強せずに『分からない』というコメンテーターは会見に来い」橋下氏、テレビ報道に怒り爆発産経WEST 2015年1月15日
- ^ 絶滅寸前の“辛口コメンテーター” コメンテーター自体の役割に変化 2015年11月14日 8:40
- ^ 『真相深入り!虎ノ門ニュース』総集編(楽屋入り) 3/26放送分 - YouTube
- ^ 『真相深入り!虎ノ門ニュース』楽屋入り 5/19配信分 - YouTube
- ^ “泉谷しげる、休業宣言の春香クリスティーンに「テレビに必要なのは即戦力」”. ザ・テレビジョン (2017年11月26日). 2017年12月1日閲覧。
関連項目
編集- 解説委員
- 編集委員
- メディア・リテラシー
- パネリスト
- 評論家(英語における本来の意味)