ケプラー1625b I
ケプラー1625b I (英: Kepler-1625b I) とは、太陽系外惑星 ケプラー1625bの周りを公転している可能性がある、初めて発見されたとされる太陽系外衛星候補である。はくちょう座の方向に約8000光年離れている[6]。トランジット法を用いて2017年に発見が報告された[1]。
ケプラー1625b I Kepler-1625b I | |
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ケプラー1625bとケプラー1625b Iの想像図
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星座 | はくちょう座 |
分類 | 太陽系外衛星 |
軌道の種類 | 周回軌道 |
発見 | |
発見年 | 2017年[1] |
発見者 | Hunt for Exomoons with Kepler[2] |
発見方法 | トランジット法[1] |
現況 | 存在しない可能性有り |
軌道要素と性質 | |
軌道の種類 | 周回軌道 |
軌道長半径 (a) | 300万km[2] 0.02005 au[2] |
公転周期 (P) | 22日[3] |
軌道傾斜角 (i) | 42-49 °[4] |
ケプラー1625bの衛星 | |
位置 | |
赤経 (RA, α) | 19h 41m 43.0401596937s[5] |
赤緯 (Dec, δ) | +39° 53′ 11.498985535″[5] |
固有運動 (μ) | 赤経: -2.145 ミリ秒/年[5] 赤緯: -4.799 ミリ秒/年[5] |
年周視差 (π) | 0.4065 ± 0.0358ミリ秒[5] (誤差8.8%) |
距離 | 8000 ± 700 光年[注 1] (2500 ± 200 パーセク[注 1]) |
物理的性質 | |
半径 | 0.437+0.0705 −0.0642 RJ[1] |
質量 | 0.06 MJ[1] |
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概要
編集木星 | ケプラー1625b I |
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ケプラー1625b I はまだ存在が確定しているわけではないが、確認されれば、史上初めて発見された太陽系外衛星となる。ケプラー1625b I は2017年に初めて検出の兆候が報告され[2]、2017年10月からハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測が行われた。2018年10月初旬に『サイエンス・アドバンシス』誌で観測結果を報告する論文が発表された[3]。
存在への疑問
編集2018年10月の論文[3]では、海王星程度の質量の衛星によるTTVと海王星程度の半径の衛星による減光が示されている。2019年2月に公表された際分析では、衛星の可能性を示唆した。しかし、傾いた軌道を持つホット・ジュピターが原因である可能性があり、将来のドップラー分光法を用いた観測が可能かもしれないことを示唆した[7]。
また、2019年4月のハッブル宇宙望遠鏡を用いた研究では、衛星の存在を示す信号がアーティファクトである可能性が指摘された。この研究結果では、ケプラー1625b I は実在しない天体である可能性があることが指摘されている。また、検出されているケプラー1625b のトランジット時刻の変動は、ケプラー1625b I ではなくケプラー1625系の別の惑星の引力によって引き起こされている可能性がある。ケプラーによる観測ではそのような惑星は検出されていないが、ケプラーの観測技術では検出できなかった可能性もある[8]。
2020年8月、別に発見されていた6つの太陽系外衛星候補の分析が行われ、ケプラー1625bについても行われた。その結果、ケプラー1625b I が改めて衛星候補であることが判明した[9]。
2021年10月に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測を予定している[6]。
特性
編集主星であるケプラー1625bは、木星程度かそれ以上の質量を持つ太陽系外惑星であるが、ケプラー1625b I は、海王星程度の質量(地球質量の10倍[10])を持つとされる巨大な衛星であると推測されている[11]。ケプラー1625b I の公転周期は約22日である[3]。また、ケプラー1625b I はケプラー1625b から平均300万km 離れて公転しているとされる。ケプラー1625b は木星の10倍の質量で、衛星はその1.5%程の質量と推測されている[12]。ケプラー1625b I の半径は地球の4.9倍である[3]。また、衛星はガスが主成分とみられ、太陽系内の衛星とは異なった方法で形成されたと考えられている。
ケプラー1625b I は巨大な衛星であるため、孫衛星を持っている可能性もある[13]。主星であるケプラー1625b の平衡温度が253 K (−20 °C; −4 °F)であるため、孫衛星が存在している場合は居住可能であると推測されている[14][4][15][16]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e “The Extrasolar Planet Encyclopaedia — Kepler-1625 b I”. 2020年5月23日閲覧。
- ^ a b c d Teachey, A.; Kipping, D. M.; Schmitt, A. R. (2017). “HEK. VI. On the Dearth of Galilean Analogs inKepler, and the Exomoon Candidate Kepler-1625b I”. The Astronomical Journal 155 (1): 36. arXiv:1707.08563. Bibcode: 2018AJ....155...36T. doi:10.3847/1538-3881/aa93f2. ISSN 1538-3881.
- ^ a b c d e Teachey, Alex; Kipping, David M. (2018). “Evidence for a large exomoon orbiting Kepler-1625b”. Science Advances 4 (10). arXiv:1810.02362. Bibcode: 2018SciA....4.1784T. doi:10.1126/sciadv.aav1784.
- ^ a b Teachey, Alex; Kipping, David M. (2018-10-03). “Evidence for a large exomoon orbiting Kepler-1625b”. Science 4 (10): eaav1784. arXiv:1810.02362. Bibcode: 2018SciA....4.1784T. doi:10.1126/sciadv.aav1784. PMC 6170104. PMID 30306135 .
- ^ a b c d e “Kepler-1625”. 2020年9月21日閲覧。
- ^ a b “Astronomers Find First Evidence of Possible Moon Outside Our Solar System”. NASA (2018年10月4日). 2020年5月23日閲覧。
- ^ Heller, Rene; Rodenbeck, Kai; Giovanni, Bruno (2019). “An alternative interpretation of the exomoon candidate signal in the combined Kepler and Hubble data of Kepler-1625”. Astronomy and Astrophysics 624: 95. arXiv:1902.06018. Bibcode: 2019A&A...624A..95H. doi:10.1051/0004-6361/201834913.
- ^ Laura Kreidberg; Rodrigo Luger; Megan Bedell (2019-04-24). No Evidence for Lunar Transit in New Analysis of HST Observations of the Kepler-1625 System. arXiv:1904.10618. Bibcode: 2019ApJ...877L..15K. doi:10.3847/2041-8213/ab20c8.
- ^ “An Independent Analysis of the Six Recently Claimed Exomoon Candidates”. 2020年9月21日閲覧。
- ^ Neptune-Size Exomoon Candidate May Be the Captured Core of a Giant Planet、SPACE.2020年5月23日閲覧。
- ^ 「系外衛星」の存在が濃厚に、確認されれば初、ナショナル ジオグラフィック.2020年5月23日閲覧。
- ^ “系外惑星の衛星らしい天体を初めて発見”. AstroArts (2018年10月10日). 2020年5月23日閲覧。
- ^ Forgan, Duncan (4 October 2018). "The habitable zone for Earthlike exomoons orbiting Kepler-1625b". arXiv:1810.02712v1 [astro-ph.EP]。
- ^ “Astronomers Find First Evidence of Possible Moon Outside Our Solar System”. NASA (2018年10月3日). 2018年10月5日閲覧。
- ^ Drake, Nadia (2018年10月3日). “Weird giant may be the first known alien moon - Evidence is mounting that a world the size of Neptune could be orbiting a giant planet far, far away.”. National Geographic Society 2018年10月6日閲覧。
- ^ “Hubble finds compelling evidence for a moon outside the Solar System - Neptune-sized moon orbits Jupiter-sized planet”. SpaceTelescope.org. 2018年10月6日閲覧。
関連項目
編集- 太陽系外衛星
- ケプラー1625
- ケプラー1708 - ケプラー1708b - ケプラー1708b I
- MOA-2011-BLG-262L - 2013年に重力マイクロレンズ法で太陽系外衛星の可能性が示唆された天体 (未確認)。
- 1SWASP J140747.93-394542.6
- 孫衛星