グロビドン類[1](グロビドンるい、学名Globidonta)は、アリゲーター亜科カイマン亜科、そして近縁な絶滅種を含むアリゲーター上科分岐群アメリカアリゲーターと、ディプロキノドンよりもそれに近縁な全ての種を含むステムベースの分岐群として定義されている。化石記録はアルバートチャンプサ英語版ブラキチャンプサ英語版といった後期白亜紀のものまで遡ることができる[2]。絶滅したグロビドン類は主に北アメリカ大陸ユーラシア大陸で繁栄しており、現生のものは南アメリカ大陸にも分布を拡大している。既知で最古のグロビドン類はフランスから産出したアキノドン英語版で、同時に最も基盤的な属でもある[3]

グロビドン類
地質時代
中生代後期白亜紀 - 新生代第四紀完新世(現世)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 四肢動物上綱 Tetrapoda
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜型下綱 Archosauromorpha
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
上目 : ワニ形上目 Crocodylomorpha
階級なし : 新鰐類 Neosuchia
: ワニ目 Crocodilia
上科 : アリゲーター上科 Alligatoridae
階級なし : グロビドン類 Globidonta
学名
Globidonta Brochu, 1999
下位分類群

特徴

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基盤的グロビドン類は全長1.5メートル程度と、小型のワニであった[1]。彼らは丸みを帯びた短い吻部と球根状のが特徴として挙げられる。一方で現生グロビドン類の吻部は扁平で、歯もより円錐形をなしており、初期のグロビドン類よりも一般化している。一般化した形態は特殊化した形態よりも祖先的と予想されることが多く、グロビドン類のように基盤的メンバーが特殊化を遂げているのは普遍的なことではない。これはエドワード・ドリンカー・コープが1894年に提唱した「非特殊化の法則」に反しているように見える。「非特殊化の法則」の下では、形態変化は常に特殊化の方向へ進み、特殊化した形態が再び「非特殊化」した状態へ戻ることはない。このパターンの変化は、グロビドン類では見られないが、アリゲーター上科クロコダイル上科の基盤的な属種で確認されている[4]

 
ヨウスコウアリゲーター

扁平な吻部をしたグロビドン類は、系統の進化の過程で少なくとも二度出現した。一度はカイマン、もう一度はアリゲーターである。ヨウスコウアリゲーターはやや鈍い吻部を持っていて特殊化していると考えることができるが、アルバートチャンプサのような基盤的グロビドン類のものほど丸く短いわけではない[4]

ディプロキノドンとグロビドン類の最も近い共通祖先がディプロキノドンに似た形態を示していたなら、一般化した吻部の形をしていたはずである。一方で、ディプロキノドンの一般化した形も、特殊な鈍い吻部を持つ祖先から生じた可能性もある。ディプロキノドンに近縁なディプロキノドン亜科バリフラクタの吻部は鈍い形状を示しており、祖先もそのような外見であったかもしれない[4]

系統

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以下は Martin (2007) に基づくクラドグラム[3]

 ディプロキノドン亜科 

バリフラクタ

ディプロキノドン

 グロビドン類 

アキノドン英語版

スタンゲロチャンプサ

アルバートチャンプサ英語版

ブラキチャンプサ英語版

 アリゲーター科 
 アリゲーター亜科 

ケラトスクス英語版

ハスシアコスクス

ナヴァジォスクス

アログナトスクス英語版

Wilwood alligatorid

プロカイマノイデア英語版

アランボウルギア英語版

ワンナガノスクス英語版

アリゲーター属

 カイマン亜科 

エオカイマン英語版

プルスサウルス

オルソゲニスクス英語版

モウラスクス英語版

カイマン属

クロカイマン属

コビトカイマン属

  •        Blunt-snouted
  •        Generalized
  •        Duck-like (broad, flat, and elongate)


以下は2018年に Lee と Yates が発表した、形態情報・分子情報(DNAシークエンシング)・層序データに基づいて行ったワニ目の系統解析のクラドグラム。アキノドンはグロビドン類どころかアリゲーター上科内に置かれず、ナヴァジォスクスはアリゲーター科よりも基盤的なグロビドン類に置かれた[5]

ワニ目
アリゲーター上科

レイディオスクス

ディプロキノドン亜科

ディプロキノドン

グロビドン類

スタンゲロチャンプサ

ブラキチャンプサ英語版

ナヴァジォスクス

アリゲーター科
カイマン亜科

カイマン属  

クロカイマン属  

コビトカイマン属  

アリゲーター亜科

アリゲーター属  

(クラウングループ)
(ステムグループ)

絶滅した基盤的ワニ目(メコスクス類英語版など)

Longirostres (en
クロコダイル上科

絶滅した基盤的クロコダイル上科

クロコダイル科

クロコダイル属  

Mecistops (en  

コビトワニ属  

(クラウングループ)
(ステムグループ)
ガビアル上科

絶滅した基盤的ガビアル上科

ガビアル科

ガビアル属  

マレーガビアル属  

(クラウングループ)
(ステムグループ)
(クラウングループ)
(クラウングループ)

出典

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  1. ^ a b 小林快次『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、51頁。ISBN 978-4-8329-1398-1 
  2. ^ Brochu, C.A. (2004). “Alligatorine phylogeny and the status of Allognathosuchus Mook, 1921”. Journal of Vertebrate Paleontology 24 (4): 857–873. doi:10.1671/0272-4634(2004)024[0857:APATSO]2.0.CO;2. 
  3. ^ a b Martin, J.E. (2007). “New material of the Late Cretaceous globidontan Acynodon iberoccitanus (Crocodylia) from Southern France”. Journal of Vertebrate Paleontology 27 (2): 362–372. doi:10.1671/0272-4634(2007)27[362:NMOTLC]2.0.CO;2. 
  4. ^ a b c Brochu, C.A. (2001). “Crocodylian snouts in space and time: phylogenetic approaches toward adaptive radiation”. American Zoologist 41 (3): 564–585. doi:10.1668/0003-1569(2001)041[0564:CSISAT]2.0.CO;2. 
  5. ^ Michael S. Y. Lee; Adam M. Yates (27 June 2018). “Tip-dating and homoplasy: reconciling the shallow molecular divergences of modern gharials with their long fossil”. Proceedings of the Royal Society B 285 (1881). doi:10.1098/rspb.2018.1071.