カロリス盆地
カロリス盆地 (Caloris Basin) は、水星に現存する最大の衝突地形である[注 1]。盆地の直径は約1550 kmに達し、これは水星の直径の1/4よりも大きい。およそ36億年前に直径100 km程度の小惑星の衝突によって作られたと考えられている。名前の"カロリス"は、ラテン語で「熱」を意味する。
惑星 | 水星 |
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座標 | 北緯30度30分 西経189度48分 / 北緯30.5度 西経189.8度座標: 北緯30度30分 西経189度48分 / 北緯30.5度 西経189.8度 |
直径 | 約 1550 km |
名祖 | ラテン語の熱 |
観測
編集マリナー10号による観測
編集カロリス盆地は巨大なクレーターであり、さらに水星には厚い大気も無いため、水星を周回する衛星軌道に投入した探査機などからであれば、非常に目立つ地形である。しかし、水星は太陽から大きく離れる事がないため、地球からの観測は困難である[注 2]。このため、水星の表面の巨大な地形なのにもかかわらず、カロリス盆地の存在をヒトが知ったのは、1974年にアメリカの惑星探査機であるマリナー10号が、水星にフライバイした際であった。ただ、フライバイによる観測だったため、マリナー10号によって撮影できたのは、水星表面の半分にも満たず、カロリス盆地は全景が写っていなかった。それでも、この写真からカロリス盆地の直径は、恐らく1300 km程度であろうと推定した[2]。
メッセンジャーによる観測
編集カロリス盆地と周辺地形
編集水星の表面全体は、2008年1月14日に水星でスイングバイを行ったメッセンジャーにより、初めて撮影された。メッセンジャーは2011年3月18日に水星を周回する軌道への投入に成功し、世界で初めて水星を周回する軌道に入った探査機となった[3]。水星の周回軌道に入ったメッセンジャーによって、水星の表面の詳細な観測が行えたため、カロリス盆地の正確な大きさは、約1550 kmであったと判明した[2]。カロリス盆地の構造は、比較的平坦な円形の平原の周囲を、複数のクレーター壁が同心円状に取り巻いた、多重リング構造をしている。なお、同じように多重リング構造を持った巨大クレーターとしては、地球の衛星の月の東の海や、木星の衛星の1つであるカリストのバルハラクレーターなどが挙げられる。
カロリス盆地の中央には放射状の溝が見られ、パンテオンにちなんで「パンテオン地溝帯」と命名された。カロリス盆地の周囲には、高さ2000 mのカロリス山脈も存在する。水星に小惑星が衝突しカロリス盆地の原型が生成した際に、カロリス山脈が形成されたと推定されている[4]。なお、カロリス盆地は小惑星の衝突によってできたクレーターが、水星から噴き出した熔岩によって底部が埋められ、盆地の底が作られたと考えられている。
対蹠点への影響
編集水星のカロリス盆地に対して対蹠点に当たる地点付近には、山と谷が入り乱れた複雑な地形が存在する。これはカロリス盆地を作った隕石衝突によって発生した衝撃波が、衝突地点から水星の内部や表面を伝搬し、ちょうど水星の裏側で合流して、そのエネルギーによって地面が歪んだために生成した地形だと考えられており、対蹠点地形と呼ばれている。
もしもカロリス盆地を作った小惑星が、もう少し大きかったら、水星は粉々になっていただろうと推測される[4]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b “Planetary Names: Search Results”. Gazetteer of Planetary Nomenclature. 国際天文学連合. 2015年12月6日閲覧。
- ^ a b 田近 英一(監修)『【大人のための図鑑】惑星・太陽の大発見』 p.75 新星出版社 2013年7月25日発行 ISBN 978-4-405-10802-8
- ^ 小谷 太郎 『宇宙の謎に迫れ! 探査機・観測機器61』 p.44 ベレ出版 2020年3月25日発行 ISBN 978-4-86064-611-0
- ^ a b c 『徹底図解 宇宙のしくみ-太陽系の星々から137億年彼方の宇宙の始まりまで (カラー版徹底図解)』新星出版社、2005年11月、42頁。ISBN 978-4405106512。
関連項目
編集- 太陽系の天体の最も大きなクレーターの一覧
- テーベ (衛星) - カロリス盆地を形成した小惑星と同程度の大きさの木星の衛星