カプリル酸(カプリルさん、caprylic acid)は、炭素数8の直鎖状脂肪酸で、IUPAC系統名オクタン酸 (octanoic acid) である。天然にはココナッツ母乳などに含まれる。常温常圧においては、弱い不快な腐敗臭を持つ油状の液体である[注釈 1]。なお、水にはほとんど溶けない。

カプリル酸
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識別情報
CAS登録番号 124-07-2 チェック
PubChem 379
ChemSpider 370 チェック
UNII OBL58JN025 チェック
EC番号 204-677-5
DrugBank DB04519
KEGG D05220 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL324846 チェック
特性
化学式 C8H16O2
モル質量 144.21 g/mol
外観 無色油性液体
匂い 弱い不快な腐敗臭
密度 0.910 g/cm3[1]
融点

16.7 °C, 290 K, 62 °F ([3])

沸点

239.7 °C, 513 K, 463 °F ([1])

への溶解度 0.068 g/100 mL[1]
溶解度 アルコールクロロホルムエーテル二硫化炭素石油エーテルアセトニトリルに溶ける。
log POW 3.05
蒸気圧 0.25 Pa
酸解離定数 pKa 4.89[2]

1.055(at 2.06–2.63 K)

1.53(at −191 °C)

屈折率 (nD) 1.4285
熱化学
標準生成熱 ΔfHo -636 kJ/mol
標準定圧モル比熱, Cpo 297.9 J/K mol
危険性
NFPA 704
0
3
1
COR
引火点 130 °C (266 °F)
発火点 440 °C (824 °F)
半数致死量 LD50 10.08 g/kg (orally in rats)[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

工業的には香料として用いられるエステルの合成や染料の製造に利用される。

生理作用と応用

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抗菌活性を持ち、しばしばカンジダ症の治療に供される。栄養学者エリカ・ホワイト (Erica White) によれば、カプリル酸はに感染したカンジダ菌への対処に有効である。カンジダ菌は腸でコロニー形成することも多いが、長鎖脂肪酸が存在すると細胞膜組織に侵入しにくくなる。このため栄養学者はカンジダ症の患者にはまずカプリル酸を勧め、その後クローブ油やオレガノ油などの植物油に移行する。それらの植物油には、より簡単に筋肉・関節・洞といった体組織に浸透しやすい、短い鎖長の脂肪酸が含まれている。

バクテリア感染症の治療にも用いられる。

カプリル酸は胃で作られるペプチドホルモン、グレリンの3番目のアミノ酸残基であるセリンに結合し、そのヒドロキシ基(OH基)をアシル化する。これによりグレリンは活性型となり、視床下部の摂食中枢に作用して空腹感をもたらす。他の脂肪酸も同様な効果を持つとされる。

多く含む食品

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カプリル酸を多く含む食品には次のものが代表的である。

注釈

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  1. ^ オクタン酸(カプリル酸)の常圧での融点は約16.7 ℃であるため、常温(25 ℃)においては液体であるものの、寒冷な場所では固体となる。なお、同じ直鎖状の飽和炭化水素鎖を持ったカルボン酸の中では、酢酸(エタン酸)がほぼ同じ融点を持つ。蟻酸(メタン酸)、プロパン酸酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、ヘキサン酸ヘプタン酸は、いずれもオクタン酸や酢酸と比べて常圧での融点が低い。

出典

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  1. ^ a b c d Budavari, Susan, ed. (1996), The Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals (12th ed.), Merck, ISBN 0911910123 
  2. ^ Lide, D. R. (Ed.) (1990). CRC Handbook of Chemistry and Physics (70th Edn.). Boca Raton (FL):CRC Press 
  3. ^ Beare-Rogers, J.; Dieffenbacher, A.; Holm, J.V. (2001). “Lexicon of lipid nutrition (IUPAC Technical Report)”. Pure and Applied Chemistry 73 (4): 685–744. doi:10.1351/pac200173040685. http://iupac.org/publications/pac/73/4/0685/. 
C7:
エナント酸
飽和脂肪酸 C9:
ペラルゴン酸