オリンゴ属(Bassaricyon)は、新熱帯区アライグマ科の小さな動物である。ニカラグアからペルーにかけての中央アメリカ及び南アメリカ熱帯雨林に生息する[1]。樹上性かつ夜行性で、生息域は海面高から高度2750mまでである[2]。形態や習性は、近縁のキンカジュー属によく似るが、オリンゴ属は樹に巻き付くのに適した尾や押し出し可能な舌を持たず、鼻口がより長く、また肛門腺を持つ。遺伝的解析により、最も近縁なのは、実際はハナグマ属であることが示された[3][2]。キンカジュー属が現存の他のアライグマ科の属から分岐したのが2260万年であるのに対し[4]、オリンゴ属とハナグマ属の分岐は、約1020万年前と推定されている[2]。従って、オリンゴ属とキンカジュー属の間の類似性は、平行進化の一例ということになる。

オリンゴ属
コスタリカのフサオオリンゴ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目 Carnivora
: アライグマ科 Procyonidae
: オリンゴ属 Bassaricyon
Allen, 1876
  • Bassaricyon alleni
  • Bassaricyon gabbii
  • Bassaricyon medius
  • Bassaricyon neblina

オリンゴ属を構成する種の数については、分類学者の間で議論がある。B. alleniB. beddardiB. gabbiiB. lasiusB. pauliという5つの種を認める立場や、B. alleniB. gabbiiとの2つの種だけからなるとする立場、さらにはB. gabbii単一種の属であるとする立場がある[5]。最近まで、フサオオリンゴ(B. gabbii)のみがよく知られており、単にオリンゴとも呼ばれていた。オリンゴ属が動物園に展示されることは滅多になく、しばしばキンカジューと誤同定される。

アレンオリンゴ(B. alleni)に似ているが区別される未記載のオリンゴが2006年にKristofer Helgenによってエクアドルのアンデス山脈Las Maquinasで発見された[6]。彼はこの種をオリンギト(B. neblina)と名付け、2013年8月15日に発見を公表した[7]

解剖学、形態学、DNA、野外観察、地域分布等のデータから、Helgenらは、オリンゴ属には以下の4つの種が認められることを示した[2]

属の分化は、約350万年前にオリンギトが他から分化したことで始まり、その後約180万年前にフサオオリンゴが分化し、低地に住む残りの2種は約130万年前に分化した[2]。時期と地域分布から、最初の属の分化は、アメリカ大陸間大交差の際に、オリンゴ属の祖先が中央アメリカから侵入してすぐの頃に、南アメリカ北西部で起こったことが示唆されている[2]

オリンゴ属(Bassaricyon)  

アレンオリンゴ(B. alleni)

B. medius

フサオオリンゴ(B. gabbii)

オリンギト(B. neblina)

出典

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  1. ^ Wozencraft, W.C. (2005). "Order Carnivora". In Wilson, D.E.; Reeder, D.M (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494
  2. ^ a b c d e f g Helgen, K. M.; Pinto, M.; Kays, R.; Helgen, L.; Tsuchiya, M.; Quinn, A.; Wilson, D.; Maldonado, J. (2013-08-15). “Taxonomic revision of the olingos (Bassaricyon), with description of a new species, the Olinguito”. ZooKeys 324: 1–83. doi:10.3897/zookeys.324.5827. 
  3. ^ K.-P. Koepfli, M. E. Gompper, E. Eizirik, C.-C. Ho, L. Linden, J. E. Maldonado, R. K. Wayne (2007-06). “Phylogeny of the Procyonidae (Mammalia: Carvnivora): Molecules, morphology and the Great American Interchange”. Molecular Phylogenetics and Evolution 43 (3): 1076–1095. doi:10.1016/j.ympev.2006.10.003. PMID 17174109. 
  4. ^ Eizirik, E.; Murphy, W. J.; Koepfli, K.-P.; Johnson, W. E.; Dragoo, J. W.; Wayne, R. K.; O’Brien, S. J. (2010-02-04). “Pattern and timing of diversification of the mammalian order Carnivora inferred from multiple nuclear gene sequences”. Molecular Phylogenetics and Evolution 56 (1): 49–63. doi:10.1016/j.ympev.2010.01.033. 
  5. ^ Reid, F. & K. Helgen 2008. Bassaricyon gabbii. In: IUCN 2013. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.1. Downloaded on 16 August 2013.
  6. ^ Handbook of the Mammals of the World (2009). ISBN 978-84-96553-49-1
  7. ^ Stromberg, Joseph (August 15, 2013). “For the First Time in 35 Years, A New Carnivorous Mammal Species is Discovered in the American Continents”. Smithsonian Magazine. August 15, 2013閲覧。