エレン・ベーカー

東京書籍の中等学校用英語教科図書の登場人物

エレン・ベーカー(Ellen Baker)は、東京書籍が発行する日本小学校中学校英語教科書NEW HORIZON』の2016年度版より登場している外国語指導助手(ALT)[2]

エレン・ベーカー
Ellen Baker
NEW HORIZON
2016年度版〜)のキャラクター
作者 電柱棒
ミキ・クラーク[1]
詳細情報
性別 女性
職業 外国語指導助手(ALT)
家族 マイク・ベーカー(弟)
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
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概要

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1966年昭和41年)に刊行を開始した『NEW HORIZON』は、日本の中学校で使用される英語の検定教科書で2016年度の採択率(シェア)が33.8%を占め国内第1位となっている[3]。東京書籍に限らず、日本の中学校で使用される多くの英語教科書では3学年を通じて登場人物を共通化してストーリー性を持たせる編集方針が採られているが、2012年2015年度版までの『NEW HORIZON』では素朴なタッチのイラストが用いられていた[4]

東京書籍では『NEW HORIZON』を使用して英語を学習した元中学生をターゲットに「教科書に登場した人物たちのその後」を題材にした参考書『ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる』を2011年(平成23年)に刊行するなど従来から漫画アニメに関心の高い層の取り込みを図って来たが[5]、2016年度の改訂作業において以前に『ミライ系NEW HORIZON』の挿絵を担当したイラストレーター電柱棒を起用し[6][7]、イラストのタッチを一新した。東京書籍は複数社の取材に対し、以下のように意図を説明している[6][8]

グローバル化の時代に英語教育の大切さがうたわれています。そのため、義務教育においては、全員の英語力を高めるためにさまざまな施策が行われています。全員といっても、生徒によって興味のあるなしということは出てきますので、できるだけ多くの生徒に学習しようという意欲を持ってほしいと思い、生徒に関心の高いタッチのイラストに変えることにしました。

インターネット・コムでは「学校教育と、若い世代を引きつけるアニメ文化の双方をよく把握した担当者の配慮を感じる」と評している[2]。また、キャラクターデザインを担当した電柱棒はエレンのデザインコンセプトについて「国籍以外は特に東京書籍さんからは指定もなく自由でしたので、とにかく僕自身が見てかわいいと思えるキャラクターを作ろうと心がけました」[9]、また人物像については「教師というよりは友達のような感覚で親しんでもらえるようなキャラクターとして描いたつもりです」と語っている[7]

人物

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アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン出身[7]。前任者(2012年〜2015年度版『NEW HORIZON』に登場)で同じくボストン出身のメアリー・ブラウン(Mary Brown)に代わって、日本の緑中学校にALTとして赴任してきた[6]金髪で瞳の色はエメラルドグリーン[10]。年齢は2016年4月7日放送の日本テレビNEWS ZERO』で取り上げられた際に「20代後半」と紹介されている。ボストン・レッドソックスのファン[7]

Course 1(1年)の巻頭人物紹介によれば弟のマイク・ベーカー(Mike Baker)も来日しており、中華料理店で働いている。緑中学校での教え子は柔道部員の安藤咲、サッカー部員の伊藤光太、インド人バンド活動をしているディーパ・ミートラ(Deepa Mitra)、カナダ出身で日本の文化に興味があり留学しているアレックス・グリーン(Alex Green)ら[6]。光太の姉でロンドンに居住している伊藤絵美は2008年2011年度版の『NEW HORIZON』に若葉中学校の生徒として登場しており、同校にALTとして赴任していたカナダ人のアン・グリーン(Ann Green)はアレックスの親戚である[6]。2012年〜2015年度版に緑中学校のALTとして登場していたメアリー・ブラウンはアメリカへ帰国しており、Course 2(2年)で咲がホームステイでボストンを訪れた際にホストとなっている[6]

なお、エレンが登場するのは1年教材のCourse 1と3年教材のCourse 3の2冊で、2年教材のCourse 2には一切登場していない。理由をツイッターで問われたイラストレイターの電柱棒は「あいどんとのー」と慌てるエレンのイラストを自己アカウントに投稿している。

現在のNEW HORIZON(2021年)~では、2年教材のCourse 2に1ページのみ登場している。3年教材のCourse 3では、弟と同姓同名のマイク・ベーカーが外国語指導助手(ALT)として登場し、教師用指導書上でエレン・ベーカーの弟と説明されている。

演じた女優

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東京書籍では教科書の会話を実写映像により再現した教材用のDVDを販売しており、ミキ・クラークがエレン役を演じている[1]

反響

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2016年度が始まって間もない2016年4月5日Twitterで「新しく中学校に入学した弟が持って帰ってきた英語の教科書。登場人物可愛すぎない?」というツイートがCourse 1の一部を抜粋した写真付きで投稿された[11]。このツイートが当日の内に「エレン先生が可愛い」という感想と共に広く拡散され、2日後には5万5000回以上のリツイートと5万回以上の「いいね!」を記録した[12]。併せて、Twitterではコラージュ画像の投稿が流行したりpixivにエレンの二次創作のイラストが一斉に投稿されるなどの大きな反響を呼んだことを始め[9][8]ニコニコ動画では「久々にアイドルの器があるキャラクターが出てきた」としてオリジナルのキャラクターソングが投稿され、初日だけで1万回以上の再生回数を記録した[4]

一方では未成年者、特に『NEW HORIZON』を使用して学習する中学生に不適切な(性的な表現を含む)二次創作が見られることについて「教育のものなのに大丈夫なのか」と懸念する声も挙がっていたが、東京書籍では「弊社としては、生徒さんに英語学習への関心を持ってもらえたらということを考え、細かい配慮をしているので、静謐な環境で学習が進むことを願っている」とコメントしている[8]。この反響の広がりについて、exciteでは2002年(平成14年)に永岡書店が刊行したアンデルセン原作の童話『赤いくつ』の絵本に登場する主人公のカーレンが人気を博した際の経緯との類似性を挙げ、当時との広がり方の相違点について「Twitterを媒介として、ものすごく多くの人に広まった。スピードがとにかく早い。トレンド入りし、ハッシュタグでつながり、元ツイートがRTで拡散される(中略)全世界から容易に見えてしまうTwitter上で、話題はひたすらに肥大化してしまった」と指摘している[13]

二次創作に対する許諾申請を求める見解の発表

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キャラクターデザインを担当した電柱棒はBuzzFeed Japanの取材に対して「あくまで学校教材なので、教育現場を離れて騒ぎになると保護者の方々から悪い印象を受けたりしないかと気になってもいる」とファン活動の行き過ぎを不安視するコメントを発していたが[9]、後日に本人のサイト上で設定画を公開した際には「インタビュー記事が拡散されて俺が自ら不安を煽っていくスタイルみたいになっててワロタ」と前置きしたうえで「ほんとすんませんでした考えが足りてなさすぎました。あんまり気にせず楽しんでください」と述べている。

その後、ある個人が著作権管理団体教科書著作権協会(JACTEX)に二次創作の許諾に関する問い合わせを行ったところ、否定的な回答を受け取ったという報告がTwitterに投稿され「余計なことをするな」と炎上する騒動が発生した[14]4月13日、東京書籍は「TMNEW HORIZONのキャラクターについて」と題するプレスリリースを通じてJACTEXを通じて使用許諾申請を求める見解を表明した[14][15]

英語学習がますます重要性をもつ時代となる中、できるだけ多くの中学生の皆さんに、英語学習に意欲をもって取り組んでいただけるよう、これらのキャラクターを設定いたしました。

(中略)

教材、図書、インターネット等でのキャラクターの使用をご希望の場合、許諾申請は教科書著作権協会(http://www.jactex.jp/)までお願いいたします。上記のキャラクター設定の趣旨から著しく逸脱すると見なさざるをえないケース等、許諾できない場合もありますことを、あらかじめご理解ください。

朝日新聞(withnews)の取材に対し、東京書籍の法務担当者は教科書のキャラクターを使用した性的な表現を含む二次創作が公表されていることについて、保護者から複数件の苦情があったことを明らかにしたうえで「社会的責任を考え、動くことになりました」とプレスリリースの意図を声明した[14]。「未成年者に不適切なものに限らず二次創作全般を禁止する意図があるのか」との問いに対しては「教科書のキャラをとりあげていただけることはありがたいのです。未来の日本を支える子どもを育てるという教科書の特性を認識して頂けるとよいのですが」として明言を避けながらも「これ以上教科書の品質をおとしめることがあったり、ビジネスへの利用があったら、なんらかの対応も必要になるかも」と状況を注視する姿勢を見せている[14]

商品

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2017年にLINEスタンプが配信されている[16]

2017年8月21日にエイトステーション株式会社よりTwitter上で2018年版カレンダーの発売が発表された。学校教材で唯一商品化が認められた。発売は2017年9月初旬[17]。商品タイプは3種類[18]

脚注

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出典

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  1. ^ a b 実写でもかわいい Twitterで話題となった実写映像版エレン先生に関して東京書籍に聞いてみた”. ねとらぼ. ITmedia (2016年4月15日). 2016年4月16日閲覧。
  2. ^ a b 話題の「エレン・ベーカー先生」―NEW HORIZONの公式サイトにも登場”. インターネットコム (2016年4月7日). 2016年4月9日閲覧。
  3. ^ “三省堂の英語教科書は微減 中学教科書シェア”. 日本経済新聞. (2015年10月30日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG30H7Z_Q5A031C1CR8000/ 2016年4月9日閲覧。 
  4. ^ a b 信原一貴 (2016年4月8日). “英語教科書のエレン先生 未公開ラフ画から読み解く人気の秘密”. withnews. https://withnews.jp/article/f0160408002qq000000000000000W03610101qq000013244A 2016年4月9日閲覧。 
  5. ^ 次世代型教科書? 「ミライ系 NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる」”. ITmedia (2011年8月19日). 2016年4月9日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 英語教科書の「エレン先生」人気は出版元も想定外 なぜあのイラストが採用されたのか、そして初の試みとは”. ねとらぼ. ITmedia (2016年4月8日). 2016年4月9日閲覧。
  7. ^ a b c d 安藤健二 (2016年4月8日). “「エレン・ベーカー先生」英語教科書の挿絵が人気爆発。作者の狙いは?”. ハフィントン・ポスト. https://www.huffingtonpost.jp/2016/04/08/ellen-baker_n_9640964.html 2016年4月9日閲覧。 
  8. ^ a b c エレン先生で話題の「NEW HORIZON」イラスト一新の狙いを出版社に訊いた”. インサイド (2016年4月8日). 2016年4月9日閲覧。
  9. ^ a b c Takumi Hariyama (2016年4月7日). “話題沸騰中の英語教科書「エレン先生」 イラスト担当者に話を聞いた”. BuzzFeed Japan. 2016年4月9日閲覧。
  10. ^ 金子則男 (2016年4月11日). “「可愛すぎる金髪教師」英語の教科書で萌え化が進行?”. R25. リクルート. 2016年4月14日閲覧。
  11. ^ “登場人物が可愛く進化 英語の教科書「NEW HORIZON」のエレン・ベーカー先生が話題に”. BIGLOBEニュース. (2016年4月6日). http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0406/blnews_160406_7609102006.html 2016年4月9日閲覧。 
  12. ^ “中学英語教科書『NEW HORIZON』の挿絵 エレン先生が可愛すぎると話題に”. ガジェット通信. (2016年4月7日). https://getnews.jp/archives/1441235 2016年4月9日閲覧。 
  13. ^ “英語教科書「エレン先生」騒動の問題点はどこか”. エキサイト. (2016年4月13日). https://www.excite.co.jp/news/article/E1460476261333/ 2016年4月14日閲覧。 
  14. ^ a b c d 大内奏 (2016年4月14日). “英語教科書エレン先生、二次創作はOK? 「余計なことするな」炎上”. withnews. https://withnews.jp/article/f0160414004qq000000000000000W03b10701qq000013262A 2016年4月14日閲覧。 
  15. ^ 「エレン・ベーカー先生」二次創作、東京書籍が「許諾申請」を求める見解公表”. 弁護士ドットコム (2016年4月14日). 2016年4月14日閲覧。
  16. ^ 可愛すぎる“エレン先生”が喋る&動く! 中学校の英語教科書「NEW HORIZON」がアニメスタンプに”. インサイド (2017年1月13日12時30分). 2017年9月1日閲覧。
  17. ^ [1] エイトステーション(Twitter) 2017年8月21日
  18. ^ 教科書のエレン先生がカレンダーになって登場 サイズは選べる3タイプ”. ねとらぼ. ITmedia (2017年9月1日0時0分). 2017年9月1日閲覧。

外部リンク

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