エモい
意味
編集感情が揺さぶられた時や、気持ちをストレートに表現できない時[1]、「哀愁を帯びた様」[3]、「趣がある」[4]「グッとくる」などに用いられる。
概要
編集元々は音楽のジャンルの一つである「イーモウ(Emo)」からきており、メロディアスで哀愁的な音楽性と切ない心情を吐露する歌詞が特徴的なロックミュージックを指す[3]。音楽シーンでは1980年代から使われていた[3]。パンクロックの一種である「エモーショナル・ハードコア」の略称であるとも言われる[2]。エモーショナル・ハードコアは、メロディアスな音楽に感情的な歌詞をのせたロックミュージックで、ここから派生して激情的・感動的な音楽を「エモい」と表現している[2]。
ただし、日本語の「えもいわれぬ」から派生したとする説も存在する[5]。
コラムニストの荒川和久は、「『エモい』を日本で一番よく使っているのはメディアアーティストの落合陽一。落合にとっての『エモい』とは、ロジカルの対極にある、一見ムダなもの。『もののあはれ』や『いとをかし』である」と解説している[4][6]。また、荒川本人も著書「超ソロ社会」の中で、「エモい」という感情が消費を動かすという「エモ消費」という概念を提唱している[4][6]。メディアアーティストの落合陽一は2016年のインタビュー記事<“21世紀の魔法使い”落合陽一「人間にとってエモいこと以外は全部コンピューターにやらせればいい」>の中で[7]「文字どおり「エモーショナル」ってことなんですけど、ロジカルの対極にある、一見ムダなもの。要するに「いとをかし」ですよ。」と述べている。日本語学者の飯間浩明も、同様に古代の「あはれ」と似た意味があるとしており、「『いとあはれ』と言っていた昔の宮廷人は、現代に生まれていたら『超エモい』などと表現していたはず」と述べている[1]。
Googleトレンドの記録では、2005年頃から「エモい」というキーワードで僅かに検索が行われており、2017年前後から急速に検索数が増加している[8]。「エモい」の検索数の急増は、音楽業界からその他への広がりを見せた時期と一致している。
若者言葉としての「エモい」
編集若者言葉としての「エモい」自体は2007年頃から存在していたが[1][9]、三省堂の「今年の新語 2016」で2位にランクインしたことをきっかけに話題になった[10]。
ベンチャー企業「COMPLExxx(コンプレックス)」の調査に拠れば、10 - 20代の女性中心516名のうち、79%が「エモい」について「知っている」と回答[1]。使うシーンとしては「ぐっと来た瞬間、感動した瞬間」53%、「『ヤバい』の代用」20%、「悲しい、寂しいなど暗い感情のとき」10%であり[1]、同社代表より「言葉にできない絶妙な感情を表現する目的で、これまでの『ヤバい』と似た使われ方をしている」との指摘がなされている[10]。日経MJの記事でも、「エモい」について「『うれしい、切ない、寂しい』などの複数に交じった感情を表現するとき、『ヤバい』と似た使われ方をされる」と解説しているが[1]、前出の荒川は「ヤバい」の代用という意味は正しくないと述べている[3]。2016年に入り若者の間で「エモい」が使われるようになった要因として、「ストレートに感情を表現できないモヤモヤが増えたため」との指摘がある[1]。
2006年12月に出版された大修館書店「みんなで国語辞典!」においては、「エモい」について「怒って感情を露にすること」と解説されている[9]。
脚注
編集- ^ a b c d e f g h 角田康祐、世瀬周一郎 (2017年8月14日). “エモい、知らなきゃ損ヨ!、「ヤバい」に続く若者コトバ、複雑・不可解な感情表現、女性消費の新基準に。” (日本語). 日経MJ (日本経済新聞社): p. 1 - 日経テレコンにて2017年10月9日閲覧。
- ^ a b c “「今年の新語2016」で堂々第2位 「エモい」ってどういう意味?” (日本語). ねとらぼアンサー. ITmedia (2016年12月11日). 2017年10月9日閲覧。
- ^ a b c d 荒川和久 (2017年10月1日). “独身を幸せにする「エモい」という感情の正体 インスタ映えに熱狂する人の心理とは?” (日本語). 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2017年10月9日閲覧。
- ^ a b c 荒川和久 (2017年8月13日). “「エモい」は若者言葉ではない? 広めたのは落合陽一さん。エモ消費時代が来る!” (日本語). ソロで生きる力@荒川和久. はてなブログ. 2017年10月9日閲覧。
- ^ “【1300人アンケート】「エモい」を簡単に解説!意味や語源からエモいの具体例まで紹介”. 2020年12月5日閲覧。
- ^ a b 荒川和久(日本語)『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書・1079)』PHP研究所、2017年1月27日、197-199頁。ISBN 978-4-569-83276-0。
- ^ https://wpb.shueisha.co.jp/news/technology/2016/10/28/74283/
- ^ “Google トレンド”. Google Trends. 2020年10月21日閲覧。
- ^ a b 高橋秀実 (2007年3月11日). “「みんなで国語辞典!」北原保雄監修 日常茶化す若者たち” (日本語). 読売新聞(東京朝刊) (読売新聞東京本社): p. 12 - 読売記事検索にて2017年10月9日閲覧。
- ^ a b 新田祐司 (2017年5月26日). “若い女性のもやもやした感情、「エモカワイイ」、飾らぬ姿に共感、ベンチャーがプロデュース、人気じわり。” (日本語). 日経MJ (日本経済新聞社): p. 4 - 日経テレコンにて2017年10月9日閲覧。