エオヒップスEohippus)は、始新世北アメリカ大陸に生息していた哺乳類。現生するウマ科動物の初期の属として知られている。かつてはヒラコテリウムシノニムとされていた[4]。和名は「あけぼのウマ」。

エオヒップス
生息年代: 始新世前期
全身骨格のレプリカ
地質時代
始新世
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 奇蹄目 Perissodactyla
: ウマ科 Equidae
: エオヒップス属 Eohippus
学名
Eohippus March1876[1]
模式種
Eohippus validus March, 1876[1]
= Orohippus angustidens
Cope1875[2][3]
下位分類(種)
  • E. angustidens

発見史

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1876年にオスニエル・チャールズ・マーシュニューメキシコ州から発見された前肢4本、後肢3本の指先にを持つ生物の全身骨格に基づいて「始新世のウマ」を意味する「エオヒップス」と名付けた[1]。さらにエドワード・ドリンカー・コープによってエオヒップスが北米最古のウマ科動物であることが断定され、またヒラコテリウムの化石との比較により、両者が同一の動物であるとの主張を行った[要検証]。この説は広く受け入れられ、長らくエオヒップスはヒラコテリウムのシノニムとされていたが、2002年の研究により再び別属として再分類されることとなった[3]

身体上の特徴

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森林地帯に生息、体高はおよそ20~30cmと、現在見られるウマ科動物と比較すれば非常に小型である。骨格では椎骨の発達が特に顕著であり、背から後躯にかけて強大な筋肉が備わり、優れた走力で捕食者から逃れていたと考えられている。また前肢4本、後肢3本の指は本来5本であったが、進化の過程で前肢の第1指、および後肢の第1指と第5指は退化し、完全に消失したと見られる。食性は草食で、口腔正面手前からいずれも小型の切歯犬歯小臼歯大臼歯を備え、木の若芽や草の実など柔らかい植物を摂取していたとされる。生息域や食性から、各個体が独自のテリトリーを有する単独生活者であったと推測されている。また、これらの特徴は初期の奇蹄類全体に見られるものであり、エオヒップスはウマ科動物のみならず奇蹄目全体の原型であるという見方も為されている。

脚注

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  1. ^ a b c Marsh, O.C. (1876). “Notice of new Tertiary mammals. V.” American Journal of Science 12: 401–404. doi:10.2475/​ajs.s3-12.71.401.
  2. ^ Cope, E.D. (1875). Systematic catalogue of the Vertebrata of the Eocene of New Mexico collected in 1874. In: G.M. Wheeler, ed. Geographical Surveys West of the Hundredth Meridian. Volume 1. pp. 5–37. United States Geological Survey. Washington D.C. doi:10.5962/bhl.title.104563.
  3. ^ a b Froehlich, David J. (2002-02-01). “Quo vadis eohippus? The systematics and taxonomy of the early Eocene equids (Perissodactyla)”. Zoological Journal of the Linnean Society 134 (2): 141–256. doi:10.1046/j.1096-3642.2002.00005.x. ISSN 0024-4082. https://academic.oup.com/zoolinnean/article-abstract/134/2/141/2624157?redirectedFrom=fulltext. 
  4. ^ ジャイルズ・スパロウ 著、日暮雅通・中川泉 訳「ウマ」、スティーヴ・パーカー 編『生物の進化大事典』養老孟司 日本語版総監修、犬塚則久 4-7章監修、三省堂、2020年、494–495頁。ISBN 9784385162409 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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