ウォーカー循環(ウォーカーじゅんかん、英語: Walker circulation)とは、太平洋赤道域の大気の東西循環のことである[1][注釈 1]。熱帯太平洋西岸(インドネシア付近)で上昇気流を、熱帯太平洋東岸(ペルー沖)で下降気流を生じさせる[4]。この名称の由来は、南方振動の発見者のギルバート・ウォーカーである[1]

ウォーカー循環の概略図

原理

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太平洋の海水面温度。西太平洋のほうが海水温が高い。

ウォーカー循環は海水温の地域差によって発生する[5]。赤道付近では貿易風が吹いていて、貿易風が海水に加える応力により赤道海流が発生する(これは風成循環の一種である)[5]。しかし陸地の存在により海流の進路が妨げられるため、太平洋の西側で温かい海水が集積し、熱帯暖水プール英語版が形成される[5]。一方、太平洋の東側では赤道海流による海水の流出の補填として、冷たい深層水湧昇する[5]。これにより赤道太平洋では東西で温度差が生じる[5]

この温度差によって、西太平洋では積雲対流が活発化し、上昇気流が強化される[6]。また気温上昇に伴い低気圧が形成され、大気下層では東風が発生する[1]。ここで大気上層では西風が吹き、ペルー沖では下降気流が発生する[5]。これにより東西循環ができ、ウォーカー循環が形成される[5]

エルニーニョ・南方振動との関係

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通常時
ラニーニャ現象発生時
エルニーニョ現象発生時

エルニーニョ現象のときは、対流が活発な地域が太平洋中部に移動する[7]。太平洋の中部・東部における温度躍層[注釈 2]の深度が深くなるほか、太平洋上での高水温域も東側に移動する。西太平洋では大気の下降が発生する[9]ほか、西風が発生し、ウォーカー循環は弱まる[1]

ラニーニャ現象のときは、西大西洋や海洋大陸にて対流活動の活発化が進行し、ウォーカー循環が強まる[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ インド洋や大西洋においても同様の循環が生じていることが認められており[2]、広義では海洋大陸からインド洋方面、および大西洋上への東西循環も含む[3]
  2. ^ 太平洋での温かい海水と冷たい海水が接しているところで、水温の変化量が大きい箇所のこと[8]

出典

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  1. ^ a b c d 小倉 2016, p. 287.
  2. ^ 法則の辞典の解説”. コトバンク. 2018年4月7日閲覧。
  3. ^ 田中 2017, pp. 238–239.
  4. ^ 水野 2016, p. 195.
  5. ^ a b c d e f g 田中 2017, p. 238.
  6. ^ 植田 2012, p. 39.
  7. ^ 植田 2012, p. 29.
  8. ^ 小倉 2016, pp. 286–287.
  9. ^ 植田 2012, p. 30.
  10. ^ 植田 2012, p. 31.

参考文献

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  • 植田宏昭『気候システム学』筑波大学出版会、2012年。ISBN 978-4-904074-21-3 
  • 小倉義光『一般気象学』(第2版補訂版)東京大学出版会、2016年。ISBN 978-4-13-062725-2 
  • 水野一晴『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』NHK出版、2016年。ISBN 978-4-14-091240-9 
  • 田中博『地球大気の科学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2017年。ISBN 978-4-320-04711-2 

外部リンク

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