イージス・アショア
イージス・アショア(英: Aegis Ashore[1][2])は、イージス弾道ミサイル防衛システムの陸上コンポーネントである[3][4]。
概要
編集元となったイージス弾道ミサイル防衛システムは、アメリカが開発した海上の弾道ミサイル防衛システムであるが、イージス・アショアというのは、イージス・システムの中の陸上に設置される「コンポーネント」(システムの一部を荷う、ひとまとまりの部分)である。「Ashore (アショア)」は「陸上の」という意味で、当システムの開発元であるロッキード・マーティン社の公式サイトでは一般人にも分かりやすく解説するために、従来のイージスを「Aegis Afloat」(=海上のイージス)とカッコづけで(レトロニムで)呼んで、それとの対比を含んだ形でのイージス・アショアの紹介文・解説文を掲載している[1]。
つまり、分かりやすく説明することが許されるなら、当初からある、艦船に搭載されたイージス(のコンポーネント)をざっくりと「海上版」と呼べるなら、イージス・アショアはその「陸上版」ということである。イージス・アショアは弾道ミサイルによる脅威が次第に増大したことに対処するために開発されたものである。
- 構成
このシステムは、10年間にわたって近代化が行われ続けていた弾道弾迎撃ミサイル「SM-3ブロックIB」および「SM-3ブロックIIA」を備えた再配置可能なイージスBMDシステムで構成されている。海洋イージスBMDシステムのためのアドオンに加えて、イージス・アショア・システムは、より広範囲のPhased Adaptive Approach(PAA)と呼ばれるシステムのフェーズIIおよびIIIの一部であり、NATOのヨーロッパ地域における弾道ミサイル防衛システムとしてスペインのロタ海軍基地、ドイツのラムシュタイン空軍基地、ルーマニアのデヴェセルロケット基地に配備されている Europian Phased Adaptive Approach (EPAA) の基本的な要素を含む。
2015年のルーマニアへのAN/SPY-1導入とSM-3ブロックIBミサイルの段階的な展開後、2018年からNATOは、ポーランドで、アメリカ・日本と協力して、より現代的で、より長い航続距離とより大きな速度を有し、中距離弾道ミサイルや、一部の大陸間弾道ミサイルにも対応するSM-3ブロックIIAミサイルを開発する。
日本における運用
編集2018年7月30日、日本政府はイージス・アショア用にAN/SPY-7(V)1を2基購入する計画を承認し、山口県と秋田県への配備を計画していた。2025年から陸上自衛隊が運用を開始する予定であったが、2020年6月15日、河野太郎防衛相(当時)がイージス・アショア導入計画の停止を発表した[5]。
2020年12月18日、日本政府は「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について」と題する閣議決定を行い[6]、その中で、イージス・アショアの代替案について、「イージス・システム搭載艦」を2隻建造し、それらを海上自衛隊が運用すると決定した[7]。2021年1月27日、アメリカミサイル防衛局と米海軍イージス艦の技術部門代表(TECHREP)は、米ニュージャージー州ムーアズタウンにおいて、AN/SPY-7を搭載したイージス武器システムベースラインJ7.Bのソフトウェアのリリースに伴う試験に成功した[8]。2018年にイージス・アショアの導入決定と同時に、AN/SPY-7の導入を決定して以来、AN/SPY-7に適合した日本向けイージス武器システムの開発が進められていたが、今回の試験によって、試験的に海上配備されたAN/SPY-7を搭載したイージス武器システムベースラインJ7.Bが、弾道ミサイル防衛(BMD)目標の捜索・追跡・識別を行う能力を有する事が確認された[8]。イージス武器システムベースラインJ7.Bは、既に海上自衛隊のまや型護衛艦で運用されているベースラインJ7の改良型で、AN/SPY-7を搭載することができ、米海軍のイージス艦に搭載されるベースライン9及びベースライン10(予定)の機能を有する[8]。次回の試験は2021年10月に、イージス武器システム全体の能力向上試験が実施され、システム完成後はAegis Production Test Center(PTC)にて、イージス武器システムの適合試験・認証取得が実施される予定である[8]。
登場作品
編集- 『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』
- エルジア王国軍の対空防衛システムとして登場。
- ミサイル防衛を主とした現実と異なり、SPY-1を配置した構造物周辺に多数のCIWSと地対空ミサイルを配置した対空陣地的なものとなっており、エルジア首都ファーバンティに1基が、南部の港湾都市アンカーヘッドのアンカー港とダキアーク港に1基ずつ設置されている。
脚注
編集- ^ a b LOCKHEED MARTIN, Aegis Ashore
- ^ 「Ashore」とは「陸上の」という意味。
- ^ “イージス・アショア 配備停止 極秘決定はなぜ?”. NHKニュース. (2020年6月25日) 2020年6月25日閲覧。
- ^ “ナレーションなしは余白も響く”. 産経ニュース (2021年12月11日). 2021年12月11日閲覧。
- ^ “イージス・アショアの配備に関する河野防衛大臣臨時会見”. 防衛省 (2020年6月15日). 2020年6月24日閲覧。
- ^ “新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について 2020年12月18日閣議決定” (PDF). 2021年7月4日閲覧。
- ^ “「イージス・システム搭載艦」は本当にベストな選択か? イージス・アショア代替問題”. 乗りものニュース. (2021年1月4日) 2021年3月24日閲覧。
- ^ a b c d “The SPY-7 Hybrid Defense Security Cooperation Project with Japan Completes Initial Engineering Demonstration of Capability” (英語). 2021年3月24日閲覧。
参考文献
編集- “The European Phased Adaptive Approach at a Glance” (英語) (2014年11月18日). 2015年3月16日閲覧。
- “Aegis Ashore” (英語) (2015年3月16日). 2018年8月17日閲覧。