インディア・ムーア
インディア・アドリアナ・ムーア(Indya Adrianna Moore, 1995年1月17日 - )[1]は、アメリカ合衆国ニューヨーク出身の俳優、モデル。FXのテレビシリーズ『POSE/ポーズ』のエンジェル・エヴァンジェリスタ役などで知られている[2]。2019年に『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人(タイム100)」の1人に選出された[3]。ムーアはトランスジェンダーのノンバイナリーであり[4][5]、普段はthey/themの代名詞並びにshe/herの代名詞を使用している[6]。
インディア・ムーア Indya Moore | |
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2019年 | |
本名 | Indya Adrianna Moore(インディア・アドリアナ・ムーア) |
生年月日 | 1995年1月17日(29歳) |
出生地 | アメリカ合衆国 ニューヨーク |
職業 | 俳優、モデル |
ジャンル | 映画、テレビドラマ |
主な作品 | |
テレビドラマ 『POSE/ポーズ』 映画 『サタデーナイト・チャーチ -夢を歌う場所-』 |
生い立ち
編集インディア・ムーアはニューヨークのブロンクス区出身であり、ハイチ、プエルトリコ、ドミニカにルーツをもっている[1]。14歳の時に両親のトランスフォビアにより実家を離れ、里親のもとで暮らす[7]。引っ越しを繰り返し、最終的にニューヨークの5区全てで暮らした。高校で頻繁にいじめを受け、高校2年時に中退[8]。15歳でモデルとしてのキャリアを開始し、働きながらGeneral Educational Development(GED)を取得した[8][9]。
キャリア
編集初期
編集15歳でモデルとしてのキャリアを開始。当初こそファッション業界ではリスキーな選択として扱われたが、クリスチャン・ディオールやグッチなどの撮影の仕事をするようになる[8]。
ムーアはモデルとして仕事のオファーを受ける一方で、ファッション業界というボディイメージを重視する業界に次第に嫌気が差すようになっていた。そんな中、テレビシリーズ『ゲットダウン』で裏方の仕事をしていた際に、伝説のダンサーで社交界のベテランでもあるホセ・グティエレス・エクトラバガンザに出会う。彼はムーアに演技の道に進むことを勧め、インディペンデント映画『サタデーナイト・チャーチ -夢を歌う場所-』のオーディションを受けさせた[8]。その結果、ムーアはディジョンという役にキャスティングされ、同作は2017年4月23日のトライベッカ映画祭で封切られた[10]。『ハリウッド・レポーター』誌は、同作を「優しく、魂のこもった作品」と称賛[11]。翌2018年1月12日に、サミュエル・ゴールドウィンフィルムズの配給によってアメリカで本公開された[12]。
2017年初め、ムーアはニューヨークのファッション・ウィークにランウェイモデルとして出演し、スペイン版『VOGUE』誌に掲載された。同年、ケイティ・ペリーのシングル「Swish Swish」のミュージックビデオに出演。同年5月20日放送のバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』でペリーと共にライブパフォーマンスを行い[13][14]、「ハウス・オブ・エクストラバガンザ」のメンバーとしてクレジットされた[15]。
テレビシリーズ『POSE/ポーズ』への出演
編集2017年末、ムーアは1980年代後半のニューヨークのボール・カルチャーを描いたライアン・マーフィーら制作によるFXのテレビシリーズ『POSE/ポーズ』にキャスティングされた[16][17]。ムーアが演じたのは、MJ・ロドリゲス演じるブランカと共に「ハウス・オブ・アバンダンス」を出て「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」に加わるトランスジェンダーのセックスワーカー、エンジェル・エヴァンジェリスタである[18]。クリストファー・ストリート・ピアで働く内にエヴァン・ピーターズ演じるヤッピーのスタンに出会ったエンジェルは、彼の愛人となる[19]。
同シリーズは2018年6月3日に初放送され、批評家の称賛を集めた[20][21]。シーズン1には50人以上のトランスジェンダーの登場人物が配され、脚本のあるテレビシリーズとしては過去最多のトランスジェンダーのキャスト数を誇るエポックメイキングな作品となった[22][23]。『POSE/ポーズ』はシーズン3まで製作され、2021年6月6日をもって好評の内に完結した[24][25]。
大手エージェンシーとの契約と現在
編集2018年、ムーアはIMGモデルズ並びにウィリアム・モリス・エンデバー(WME)と契約を結び、WMEと契約した初めてのトランスジェンダーの俳優となった[26]。また、権利を奪われたグループに関する物語のプラットフォームを提供する制作会社Beetlefruit Mediaを設立[27]。その他にも、J.Viewsの「Don't Pull Away」(2017年)や、Blood Orangeの「Saint」(2018年)のミュージックビデオに出演した[28]。
2019年5月には、トランスジェンダーの俳優として初めてアメリカ版『ELLE』誌の表紙を飾った[29]。加えて、同年12月、『スティーブン・ユニバース』の続編アニメ『スティーブン・ユニバース・フューチャー』にノンバイナリーのシェップ役で出演し、声優デビューを果たす[30]。
2020年公開のチェ・グレイソン監督の短編映画『Magic Hour』にベラ役で出演。メアリー・シェリーによるゴシック小説『フランケンシュタイン』を性別に関係なくリメイクした作品であり、撮影は日本の東京で行われた。ムーアは同作でエグゼクティブ・プロデューサーも兼務した[31]。同年6月、LGBTQプライド・パレードの50周年を記念して、『Queerty』誌は「すべての人々の平等、受容、尊厳に向けて国を導く」50人の英雄の1人としてムーアを選出した[32][33]。
2021年7月16日に公開された、サイコスリラー映画『エスケープ・ルーム』の続編映画『エスケープ・ルーム: トーナメント・オブ・チャンピオンズ』にブリアナ・コリアー役で出演[34]。また、2022年12月16日アメリカ公開予定の『アクアマン』の続編映画『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』(邦題未定)に出演することも決定。放射線により高度な知能とテレパシー能力を身につけたサメのカーション役を演じる[35]。
出演作品
編集映画
編集公開年 | 邦題 原題 |
役名 | 備考 |
---|---|---|---|
2017 | サタデーナイト・チャーチ -夢を歌う場所- Saturday Church |
ディジョン | |
Spot |
ビジネスウーマン | 短編映画 | |
2019 | クイーン&スリム Queen & Slim |
女神 | 日本劇場未公開 |
2020 | The One |
ドクター・ワトキンス | 短編映画 |
Magic Hour |
ベラ | 短編映画 兼 エグゼクティブ・プロデューサー | |
ベビーシッターのモンスターハンティング・ガイド A Babysitter's Guide to Monster Hunting |
ペギー・ドルード | Netflix映画 | |
2021 | エスケープ・ルーム2:決勝戦 Escape Room: Tournament of Champions |
ブリアナ・コリアー | 日本劇場未公開 |
2023 | ニモーナ Nimona |
アラムザパム・デイヴィス | 声の出演 |
アクアマン/失われた王国 Aquaman and the Lost Kingdom |
カーション | 映画『アクアマン』の続編 |
テレビシリーズ
編集放送年 | 邦題 原題 |
役名 | 備考 |
---|---|---|---|
2018-2021 | POSE/ポーズ Pose |
エンジェル・エヴァンジェリスタ | メインキャスト 計25話に出演 |
2019 | スティーブン・ユニバース・フューチャー Steven Universe Future |
シェップ | アニメ『スティーブン・ユニバース』の続編/声の出演 第9話「卒業」 |
ミュージックビデオ
編集公開年 | タイトル | アーティスト |
---|---|---|
2017 | Swish Swish | ケイティ・ペリー |
Don’t Pull Away | J.Views (ft. Milosh) | |
2018 | Saint | Blood Orange |
私生活
編集ムーアはトランスジェンダー[36]のノンバイナリー[4][5]であり、they/themの代名詞並びにshe/herの代名詞を使用している[6]。また、14歳で実家を出たことや、高校2年生で学校を中退した原因となったいじめやトランスフォビアとの生涯にわたる闘いを率直に語っている[7]。
テレビドラマ『POSE/ポーズ』の共演者であるMJ・ロドリゲスとのインタビューの中で、ムーアは、ノンバイナリーであるにもかかわらず女性として見られることは、自身が依然として他の女性たちと同じように「監視と詮索」の目にさらされていることを意味し、力を取り戻すためにファッションを活用したいという願望を以下のように語った[4]。
ムーア:ファッションについてはそんな風に思っていますし、自分を表現するための自主性についてもそう思います。私はノンバイナリーですが、それについてあまり話したことはありません。でも、私を女性として見ている人々がいることは認識しています。私が女性やシスジェンダーの女性として、あるいはバイナリーとして見られているから、人々は女性が求められているのと同じ基準で私を見ようとするのです。
ロドリゲス:そうあるべきではないってことですよね?
ムーア:女性たちは皆そのように見られるべきではないということです。[4]
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b Yuan, Jada (2019年5月9日). “Indya Moore Just Wants to Be Free” (英語). ELLE. 2021年3月7日閲覧。
- ^ Out.com editors (2018年7月17日). “Cover Exclusive: The Cast of 'Pose' Takes Center Stage & Makes History” (英語) 2018年8月1日閲覧。
- ^ “Indya Moore, Ryan Murphy lead TIME 100's influential LGBT people · PinkNews” (英語). www.pinknews.co.uk. 2019年4月18日閲覧。
- ^ a b c d Rodriguez, Mj (January 11, 2019). “Indya Moore Brews A Perfect Cup of Tea” (英語). L'Officiel
- ^ a b @IndyaMoore (2019年9月13日). "I'm non binary, femme, Agender feels fitting too. My pronouns: they/them/theirs" (英語). X(旧Twitter)より2019年9月21日閲覧。
- ^ a b Silva, Cynthia (December 12, 2020). “'Pose' star Indya Moore is spreading holiday cheer to trans youth” (英語). NBC News August 15, 2021閲覧。
- ^ a b “This once-bullied trans actress is now the star of ‘Pose’” (英語). NEW YORK POST. (2018年5月31日) 2018年5月31日閲覧。
- ^ a b c d “Inside the Breakout of Indya Moore” (英語). WWD. (2018年7月27日) 2018年7月27日閲覧。
- ^ “Indya Moore on her acting career and how she found her way to FX’s ‘Pose’” (英語). Los Angeles Times. (2018年7月30日) 2018年7月30日閲覧。
- ^ “"Pose" Is Making Television History With These 5 Transgender Actors” (英語). Teen VOGUE. (2018年7月10日) 2018年7月10日閲覧。
- ^ “‘Saturday Church’: Film Review Tribeca 2017” (英語). The Hollywood Reporter. (2017年8月18日) 2017年8月18日閲覧。
- ^ “Exclusive: Transgender Youth Find Their Voice at Saturday Church” (英語). Out. (2018年1月21日) 2018年1月21日閲覧。
- ^ “Breakout Star Indya Moore on ‘Pose,’ Working With Evan Peters and Angel’s Red Pumps (Exclusive)” (英語). Entertainment Tonight. (2018年7月18日) 2018年7月18日閲覧。
- ^ “Video of the Day: Indya Moore and Elliott Sailors in J. Views’ “Don’t Pull Away”” (英語). GO Magazine. (2018年8月13日) 2018年8月13日閲覧。
- ^ “We identified the performers in Katy Perry’s ‘Swish Swish’ on SNL” (英語). Queerty. (2017年5月22日) 2017年5月22日閲覧。
- ^ “史上初!トランスジェンダー俳優5人がドラマレギュラー起用”. シネマトゥデイ. (2017年10月31日) 2017年10月31日閲覧。
- ^ “ドラマ『POSE』“LGBTQ+の伝説的カルチャー”を通して人間の本質を描く話題作が教えてくれること”. FRONTROW. (2019年4月22日) 2019年4月22日閲覧。
- ^ “Mj Rodriguez Is Ready for Her Cinderella Moment” (英語). Harper’s BAZAAR. (2021年8月19日) 2021年8月19日閲覧。
- ^ “Pose Breakout Star Indya Moore Debunks Myths About Normative Beauty and Body Hair” (英語). W. (2017年7月17日) 2017年7月17日閲覧。
- ^ “Pose: Season 1 - Rotten Tomatoes” (英語). Rotten Tomatoes. (2018年6月23日) 2018年6月23日閲覧。
- ^ “Pose: Season 1 - Metacritic” (英語). Metacritic. (2018年6月21日) 2018年6月21日閲覧。
- ^ “FX’s ‘Pose’: Ryan Murphy Sets Largest Transgender Cast Ever For Scripted Series” (英語). Deadline. (2017年10月25日) 2017年10月25日閲覧。
- ^ “New Ryan Murphy Musical Dance Series POSE Gets Full Season Order” (英語). Broadway World. (2017年12月27日) 2017年12月27日閲覧。
- ^ “祝!エミー賞ノミネート『POSE/ポーズ』が起こした革命についてキャストとプロデュサーが語りつくす” (英語). Harper’s BAZAAR. (2021年9月20日) 2021年9月20日閲覧。
- ^ “80年代NYのLGBTQコミュニティを映し出す『POSE』、シーズン3で終了” (英語). 海外ドラマNAVI. (2021年3月8日) 2021年3月8日閲覧。
- ^ “Beauty Is Beauty: Pose's Indya Moore Lands Coveted Contracts with IMG and William Morris” (英語). The Root. (2018年8月23日) 2018年8月23日閲覧。
- ^ “‘Pose’ Breakout Indya Moore Signs With WME (Exclusive)” (英語). The Hollywood Reporter. (2018年8月26日) 2018年8月26日閲覧。
- ^ “Blood Orange Debuts New “Saint” Video (ft Indya Moore)” (英語). GSLM. (2018年8月27日) 2018年8月27日閲覧。
- ^ “Indya Moore Makes History As First Trans Person to Cover Elle US” (英語). Out. (2019年5月9日) 2019年5月11日閲覧。
- ^ “Indya Moore Just Debuted as a 'Steven Universe' Character” (英語). Out. (2019年12月30日) 2019年12月30日閲覧。
- ^ “'Pose' Breakout Indya Moore To Star In, Executive Produce Modern 'Frankenstein' TV Series, 'Magic Hour'” (英語). shadowandact.com. (2018年7月9日) 2017年7月9日閲覧。
- ^ “Queerty Pride50 2020 Honorees” (英語). Queerty. (2020年6月30日) 2020年6月30日閲覧。
- ^ “Meet the world-class performers who are diversifying LGBTQ representation” (英語). Queerty. (2020-06–01) 2020年6月1日閲覧。
- ^ “‘Escape Room 2’ Now Opening Doors At End Of 2020” (英語). Deadline. (2020年3月28日) 2020年3月28日閲覧。
- ^ “「アクアマン」続編にビンセント・リーガンら新キャストが参加”. 映画.com. (2021年10月2日) 2021年10月2日閲覧。
- ^ “Cis People: You Can Relate to Trans Characters” (英語). PAPER. (2018年7月3日) 2018年7月3日閲覧。
- ^ “Pose star Indya Moore has come out as poly” (英語). PinkNews. (2018年12月27日) 2018年12月27日閲覧。