イニュエンドウ
『イニュエンドウ』 (Innuendo) は、イギリスのロックバンド・クイーンの14枚目のアルバムである。ボーカルのフレディ・マーキュリー存命時にリリースされたという意味において、クイーンの実質的ラストアルバムである[2]。
『イニュエンドウ』 | ||||
---|---|---|---|---|
クイーン の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 1989年 - 1990年 | |||
ジャンル | ハードロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
東芝EMI パーロフォン ハリウッド・レコード | |||
プロデュース |
クイーン デヴィッド・リチャーズ | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
クイーン アルバム 年表 | ||||
| ||||
『イニュエンドウ』収録のシングル | ||||
|
概要
編集各曲の作曲者は1曲を除きメンバー全員がクレジットされている。これは前作『ザ・ミラクル』からのやり方を踏襲するもので、個人での作曲クレジットによる印税の分配でのトラブルを回避する役割と、作曲方法を個人の作業ではなく各人が持ち寄った素材をセッション形式で仕上げていく方法が取られ始めたためで、ひとつの曲を完成させる過程において、複数の曲のモチーフをつなぎ合わせる作業も行われていたことがデモ音源などで確認できる。
実質的なラストアルバムであることから、リリースの10ヶ月弱後のマーキュリーの死という要素を切り離して評価することは難しいが、イギリスではチャートにおいて初登場1位を記録するなど、1980年代初期のアメリカを意識した音楽性から、ヨーロッパ的な音楽性の回帰が歓迎された。本国イギリスでは、5曲がこのアルバムからシングルカットされ、チャートの上位へ達する。
アルバムタイトルの「イニュエンドウ」は、ほのめかし、あてこすり、風刺などの意味があり、マーキュリーがスクラブルをする際によく使う単語だったという[3]。
アルバムジャケット
編集アルバムジャケットは19世紀のフランスの風刺画家J・J・グランヴィルのイラスト「Jaggler of Universes」が使われ、アルバムのアートワーク及びこのアルバムからのシングルのアートワークにもグランヴィルのイラストが使われた。
アルバムのインナースリーブ写真、収録曲のプロモーションビデオなどは、衰弱の進むマーキュリーの病状を隠すかのように、厚めのメーキャップ、モノクロームやアニメーション、後処理を施したものが多用されている。
発売日
編集チャート
編集国 | チャート成績 | 売り上げ | ||
---|---|---|---|---|
最高位 | チャートイン週 | 獲得ディスク | [4] | |
United States | 30 | Gold | 555.000 | |
United Kingdom | 1 | 37 | Platinum | 635.000 |
Germany | 1 | Platinum | 855.000 | |
Italy | 1 | 670.000 | ||
France | Platinum | 347.500 | ||
Netherlands | 1 | Platinum | 220.000 | |
Spain | 3 | Platinum | 305.000 | |
Switzerland | 1 | 2x Platinum | 100.000 | |
Austria | 2 | Platinum | 60.000 | |
Canada | Gold | 90.000 | ||
New Zealand | Platinum | 16.000 | ||
収録曲
編集- クレジットは、全曲「クイーン」名義。
- *印はシングルCDタイトル曲。
- ※LP版では「ドント・トライ・ソー・ハード」が「愛しきデライラ」と「ザ・ヒットマン」の間に入る(「ライド・ザ・ワイルド・ウインド」までがA面、それ以降がB面である)。
- イニュエンドウ - Innuendo *
- プログレッシヴ・ロックのバンド、イエスのギタリストであるスティーヴ・ハウがフラメンコギターのソロで参加している。
- プロモーションビデオは過去の映像のメンバーの動きをコラージュし、ダ・ヴィンチ風、ピカソ風、ポロック風に加工した作品になっている。
- フレディ・マーキュリー追悼コンサートでロバート・プラントが歌ったが、声が出ていない等の理由で、その後発売された、ビデオ、DVDソフトではカットされている。(NHK FMでオンエアされた際には声の出ていないところも含めて放送されている)
- 曲風はラヴェルのボレロ風リズムと音階で始まり、徐々に盛上る。アコースティックギターのソロが入ると、一旦静かな独唱の中間部を通る、5拍子のフラメンコギターを含めた展開部から、合唱部分を通り、ドラマティックなフラメンコ風ソロと変拍子が入り、提示部のボレロ風メロディーに戻る複雑な構成である。
- シングルチャート1位を獲得。
- 狂気への序曲 - I'm Going Slightly Mad *
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー
- 歌詞は、フレディのもとを学生時代からの友人で舞台俳優であるピーター・ストレイカーが訪れたときにしたお喋りがもとになっている、歌の中で一単語がどうしても気に入らず、朝4時まで悩んだなどの逸話が残されている。
- プロモーションビデオはフレディが道化師を演じる大部分がモノクロの映像作品。ペンギンに扮したブライアンとのコスプレと本物のペンギンが共演していたり、ゴリラのぬいぐるみが出てきたりとユーモアに富んだ内容になっている。
- ヘッドロング - Headlong *
- 作詞・作曲:ブライアン・メイ
- ブライアンが「クイーンの曲として採用してもらえるか半信半疑であったため、後の自分のソロアルバムに使う事も念頭に置いていたが、すんなり採用された」と自身のインタビューで答えている。
- プロモーションビデオはスタジオでのカットを主にまとめられている。また、PVではAメロに入る前にCD版になかったフレーズが追加されている。
- 2013年に再発された当アルバム(リミテッド・エディションと呼ばれる。以下同様に呼称)のボーナストラックにブライアンボーカルの"エンブリオ・ウィズ・ガイド・ボーカル"というバージョン名で収録されている。
- アイ・キャント・リヴ・ウィズ・ユー - I Can't Live With You
- 作詞・作曲:ブライアン・メイ
- 「ヘッドロング」同様、ブライアンが「採用してもらえるか半信半疑であったが、すんなり採用された」と自身のインタビューで答えている。
- 後のベストアルバム「クイーン・ロックス」にて演奏を差し替えた'97 retakeというバージョンが収録されている。また、リミテッド・エディションのボーナストラックにも同バージョンが収録。
- ドント・トライ・ソー・ハード - Don't Try So Hard
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー
- ライド・ザ・ワイルド・ウインド - Ride The Wild Wind
- 作詞・作曲:ロジャー・テイラー
- リミテッド・エディションのボーナストラックにて"アーリーバージョン・ウィズ・ガイド・ボーカル"という名前でロジャーボーカルのトラックが収録されている。
- 神々の民 - All God's People
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー、マイク・モラン
- もともとフレディのソロアルバム『バルセロナ』に収録を予定していた「アフリカ・バイ・ナイト」という曲であったが、ボーカルのパートナーであるモンセラート・カバリェに拒否されたために、バンドの曲として録音されたもの。
- 輝ける日々 - These Are The Days Of Our Lives *
- 作詞・作曲:ロジャー・テイラー
- フレディの生前、最後にクイーンとして撮影されたPVがこの曲のものである。フレディの死後に発売されたシングル「ボヘミアン・ラプソディ」のB面に収録された。
- フレディ・マーキュリー追悼コンサートではジョージ・マイケルとリサ・スタンスフィールドがデュエットで歌った。
- 近年のクイーン+ポール・ロジャースのツアーでも演奏されている。ボーカルはロジャー(ドラムは自動演奏)。
- 愛しきデライラ - Delilah
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー
- ザ・ヒットマン - The Hitman
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、ジョン・ディーコン
- ビジュウ - Bijou
- 作詞・作曲:フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ
- 旧邦題は「バイユー」「バイマー」。
- ショウ・マスト・ゴー・オン - The Show Must Go On *
- 作詞・作曲:ブライアン・メイ、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラー
- フレディ・マーキュリー追悼コンサートではエルトン・ジョンが歌った。
- モーリス・ベジャール・バレエ団で使われている。
担当
編集クイーン
- フレディ・マーキュリー - リードヴォーカル、コーラス、ピアノ、キーボード、ドラムマシン
- ブライアン・メイ - エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、、リードヴォーカル、コーラス、キーボード、ピアノ、ドラムマシン、スライドギター
- ジョン・ディーコン - エレクトリックベース、キーボード
- ロジャー・テイラー - ドラムス、コーラス、パーカッション、キーボード、ドラムマシン、リードヴォーカル
外部ミュージシャン
- スティーヴ・ハウ - フラメンコギター
- マイク・モラン - キーボード
- デヴィッド・リチャーズ - キーボード
脚注
編集- ^ “Queen – Innuendo”. Discogs. 2019年2月21日閲覧。
- ^ “【ロッキング・オンを読む】クイーン特集、完全ディスコグラフィー後編 :『ザ・ゲーム』から『メイド・イン・ヘヴン』まで【全文公開】”. ロッキング・オン (2019年1月2日). 2019年1月19日閲覧。
- ^ 管理人 (2021年10月24日). “フレディ・マーキュリーについてあなたが知らないかもしれない15の事実”. uDiscoverMusic | 洋楽についての音楽サイト. 2021年10月25日閲覧。
- ^ MJD (2020年1月25日). “QQueen albums and songs sales” (英語). ChartMasters. 2022年9月20日閲覧。