アーケードゲーム基板
アーケードゲーム基板(アーケードゲームきばん)とは、アーケードゲームに使用するプリント基板、またはそれに各種電子部品を搭載した状態の、入出力装置を除いたアーケードゲームシステム一式のこと。ゲーム用語で単に「基板」と言った場合、多くはこのアーケードゲーム基板のことを指す。「基盤」とするのは誤字。
システム基板
編集新しいゲームを作る度に基板を設計していてはコストがかかるので、多くの場合は主な回路を共通部分として使用し、ゲームによってプログラムROMを差し替えるなどして効率化を図る。このとき、共通して使用するベースとなる基板をシステム基板、またはマザーボードと呼ぶ。家庭用ゲーム機で言えば、システム基板がゲーム機本体、ゲーム部分がカートリッジやCD-ROMにあたる。
通常の基板が12万円から30万円程度なのに対して、ソフトのみの場合はおおよそ半額が相場であるため、基板部分が安価な場合は専用基板として販売したほうが利益率が高い。そのためシステム基板として販売される理由の1つとして、高機能な基板で導入コストは高いが、あとから高機能を生かしたソフトウェアを安価に供給するという宣伝がなされる。
ただし、人気作の場合は基板とセットでの発売日のほうが早く設定されるため、メリットがさほど受けられない場合も多い。また、システム基板で大ヒット作が出た場合、追加生産時のコストを抑えるため使用しない機能を省いた専用基板を作成し、原価を抑えることも行われる。
もう一つの理由はゲーム交換の簡便さと低コストを売りにしたものである。こちらは感覚的に家庭用ゲーム機に近いものであり、さほど高機能ではない場合もある。
一方、業界紙「ゲームマシン」第477号(1984年8月1日)によると、ハードの高度化によりグレードアップされたり、無許可で複製するコピー業者が現れた場合[注釈 1]に基板を変更するなど、新たなシステム基板へ移り変わっていったという[2]なお、新基板が開発された後でも、さほどスペックを要求しないゲームであれば旧基板のユーザーを対象に製作し、安価で販売することもある。
コピー対策の一つとしてドングルが採用されている。大型で設置に時間がかかるゲームの場合、筐体部分を稼働開始日より早くゲームセンターに到着するように発送し、ドングルのみを稼働開始日に到着するように発送するという手法が取られている。
初期のシステム基板は、基板に搭載したROMを直接交換する方式をとっていた。後年になりゲーム部分をサブボードとして供給する方式が普及した。更に後年になるとロムカートリッジ、CD-ROM等で供給する方式も登場している。
後述の互換基板以外の基板は単にプリントサーキットボード形式と呼ばれることもある。プリントサーキットボード形式の基板を採用したゲームはケイブの「怒首領蜂最大往生」が最後となっている[3]。
互換基板
編集アーケードゲーム基板は、各メーカーの得意分野を生かすため、または家庭用ゲーム機との差別化のために、性能を重視した専用に近いハードを設計していた。それに対し互換基板では、家庭用ゲーム機の技術を応用し、基板の性能での差別化よりも価格面での有利さを生かすことに主眼を置いた。家庭用ゲーム機の性能が向上するにつれ、徐々に両者の性能差は小さなものとなっていった。
MVSとNEO-GEOは業務用と家庭用でハードウェアスペックが同一(初期の、メモリーカード対応タイトルではセーブデータも互換、ついで言えば初期タイトルにおいては業務用OP価格と家庭用の小売価格が同じ)という特殊な例である。
1990年代前半以降、大手メーカー各社は独自の3DCG基板を開発するが、ハードウェアの複雑化、性能向上の困難さにより基板が大型化・高価格化し、大型筐体などでしか活用できないものになっていた。その打開策として、高性能と低価格を兼ね備えて成功していた当時の家庭用ゲーム機の3DCG技術を、業務用基板に応用する道を選んだ。双方でアーキテクチャが共通している場合が多いため、アーケードから家庭用への移植が簡単になった。ただし、これが災いしてプレイヤーのアーケード離れと、ゲームセンター運営者のビデオゲーム離れを招いた。このために見込み販売本数を従来よりも少なく見積もることとなり、基板のコストダウンの効果をさほど受けることが出来なくなった。このため、市場縮小に伴いメーカーの設定する基板価格は高騰する一方である。
2000年代以降は、基板を独自設計することにコスト的なメリットが完全に無くなっており、PC互換で汎用OS搭載のゲーム基板が各社から発売されるようになった。DVD-ROMやハードディスクで供給されるものが主流となっており、ハードディスクを採用してなおかつネットワークに接続しているゲームの場合は、ネットワークを介してゲームのアップデートを行う事が多い。
主な互換アーキテクチャ
編集- ファミリーコンピュータ
- 任天堂VS.システム(任天堂)
- セガ・マークIII
- システムE(セガ)
- メガドライブ
- Cボード / C2ボード(セガ)
- メガドライブ互換基板(データイースト)、High Seas Havoc(邦題・キャプテンラング)のアーケード版に使用。基板にSEGAのカスタムチップ類が搭載されている。
- NEO-GEO
- MVS(SNK)[4]
- プレイステーション
- SYSTEM10 / SYSTEM11 / SYSTEM12(ナムコ)、ZN-1 / ZN-2(ソニー/ソニー・コンピュータエンタテインメント)、GX700 / GV999 / ZV610 / GQシステム(コナミ)、TPSシステム(テクモ)、FXシステム / G-NETシステム(タイトー)
- セガサターン
- ST-V(セガ)
- NINTENDO64
- Aleck64(セタ)
- ミッドウェイ・ゲームズのクルージンUSAやキラーインスティンクトなどで、NINTENDO64の海外向けの仮称だったULTRA64とNINTENDOのロゴがデモで表示されるが、実際には別のアーキテクチャ上で動作する[5]。
- PlayStation 2
- SYSTEM246 / SYSTEM256 / SYSTEMスーパー256(ソニー・コンピュータエンタテインメント/ナムコ)、2000年代のコナミ作品(『ポップンミュージック』シリーズ、『ダンスダンスレボリューション』など)で採用。 ※コナミは一部作品でPS2互換基板ではなく業務用に改造したPS2そのものを採用していた。
- ドリームキャスト
- NAOMI / NAOMI2 / SYSTEMSP(セガ)、ATOMISWAVE(サミー)
- Xbox
- Chihiro(セガ)
- ニンテンドーゲームキューブ
- トライフォース(ナムコ・セガ・任天堂)
- PC/AT互換機(パーソナルコンピューター)
- WOLFシステム、Taito Type X / Taito Type X+ Taito Type X2(タイトー)、LINDBERGH、RING、Nu、ALLS(セガ)、System N2、SYSTEM ES1(ナムコ)、eX-BOARD(エクサム)、SkoPRO(AMI、サクセス、スコーネック)、現在のコナミ製品(PCを採用したコナミ製品にはシステム基板名が定められていない)。Type X、RING、eX-BOARD、SkoPRO、コナミ基板はWindows系OS、LINDBERGH(BLUEは除く)、System N2、SYSTEM ES1、AP-3はLinuxを、WOLFシステムはMS-DOSを採用。LINDBERGH(BLUEのみ)、RINGはWindows XPを使用。SYSTEM ES2PLUS、ES3はWindows 7を、NuはWindows 8のOSを、ALLSはWindows 10を使用。
- PlayStation 3
- SYSTEM357(バンダイナムコゲームス)
- Wii
- Wii互換基板(カプコン) ※『タツノコ VS. CAPCOM』で使用[6]。
- PlayStation 4
- アーケード用にカスタマイズしたPlayStation 4本体を『ディシディア ファイナルファンタジー』(スクウェア・エニックス、コーエーテクモゲームス)に採用[7][8]。
アーケードゲーム基板の一覧
編集- IGS
-
- PGMシステム / PGM2 / PGM3
- アイマックス
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- MACSシステム
- アイレム(現・アイレムソフトウェアエンジニアリング)
-
- アイレムM62システム / アイレムM72システム / アイレムM82システム / アイレムM92システム
- アタリ
-
- Atari System 1 / Atari System 2 / G1 / G42 / GX2 / Cojag / GT
- Flagstaff / Phoenix / Seattle / Media GX / Vegas / Denver
- アルゼ(旧 ユニバーサル販売)
-
- AP-3
- exA-Arcadia(エクサ・アルカディア)
- エクサム
- エスアイエレクトロニクス
- SNK(旧社)[4]
-
- Multi Video System(MVS)/ ハイパーネオジオ64
- カネコ
-
- AXシステム / スーパーカネコノバシステム
- カプコン
- ケイブ
-
- CV1000
- コナミ(現・コナミデジタルエンタテインメント→コナミアミューズメント)
- サミー
- ジャレコ
- セイブ開発
-
- SPIシステム
- セガ
-
- セガ・システム1 / システム2 / システムE(セガマークIII互換)
- Cボード / C2ボード(メガドライブ互換)
- セガ・システム16 / セガ・システム18 / セガ・システム24
- X-BOARD / Y-BOARD / セガ・システム32
- Sega Megatech (海外市場向け)/ Sega Mega Play(海外市場向け)
- Model1 / Model2 / Model3 / ST-V(セガサターン互換)
- NAOMI / NAOMI2 / SYSTEMSP(ドリームキャスト互換)
- HIKARU / Chihiro(XBOX互換) / LINDBERGH
- RINGWIDE / RINGEDGE / RINGEDGE2 / Nu / ALLS
- セタ
-
- Aleck64(Nintendo64互換)
- ソニー
- タイトー
- テクモ(現・コーエーテクモゲームス)
-
- TPS
- データイースト
- ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント→バンダイナムコアミューズメント)
- 任天堂
-
- VS.システム(ファミリーコンピュータ互換)
- PlayChoice 10 (北米市場向け)/ Nintendo Super System(北米市場向け)
- ビデオシステム
- ブレッツァソフト
-
- クリスタルシステム
- ミッドウェイ
-
- Astrocade / MCR / MCR II / MCR III / MCR-68 / Y-Unit(1991 - 1992)
- T-Unit(1993) / X-Unit(1994 レボリューションXでのみ使用)
- Wolf Unit(1994 - 1996)/ V-Unit(1995 - 1996)
- Zeus / Zeus II / Seattle / Vegas
- 共同開発基板
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 「ROM交換によるTVゲーム新ソフト交換方式 業務用システム基盤の経緯とメーカーの対応」『ゲームマシン』第475号1994年8月1日、15面。2023年4月15日閲覧。
- ^ 「ROM交換によるTVゲーム新ソフト交換方式 業務用システム基盤の経緯とメーカーの対応」『ゲームマシン』第475号1994年8月1日、13面。2023年4月15日閲覧。
- ^ アーケードビデオゲームの希望の光?新システム基板開発者「exA-Arcadia」独占インタビューIGN JAPAN 2018年2月8日
- ^ a b 2001年に倒産した旧社。現存の同名企業(旧社名:SNKプレイモア)とは異なる。
- ^ クルージンUSAはV Unit基板(TMS320C31ベース)[1]、キラーインスティンクトはR4600ベースの専用基板[2]を使用。
- ^ “前作でやれなかったことを! 『タツノコ VS. CAPCOM UAS』開発者インタビュー”. 電撃オンライン. (2010年2月10日) 2010年2月10日閲覧。
- ^ 栗本 浩大 (2015年4月10日). “AC『ディシディアFF』開発はTeam NINJAで、コアシステムはPS4に…システム、ロケテ情報も”. インサイド. 株式会社イード. 2023年7月14日閲覧。
- ^ am-net公式アカウント [@amnet_official] (2020年10月8日). "2020年10月8日 午後6:39(JST)のツイート". X(旧Twitter)より2023年7月14日閲覧。
- ^ 「ROM交換によるTVゲーム新ソフト交換方式 業務用システム基盤の経緯とメーカーの対応」『ゲームマシン』第475号1994年8月1日、14面。2023年4月15日閲覧。
外部リンク
編集ウィキメディア・コモンズには、アーケードゲーム基板に関するカテゴリがあります。