おうし座HL星(おうしざHLせい、: HL Tauri, HL Tau)は、おうし座にある非常に若いおうし座T型星である[4]地球からおよそ450光年 (140 パーセク) の距離のおうし座分子雲英語版[5]の中に位置している[3][6][7]。おうし座HL星の光度有効温度から、年齢は10万歳よりも若いと推定されている[8]見かけの等級は 15.1 と暗く[1]、肉眼で見ることは不可能である。

おうし座HL星
HL Tauri
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) によるおうし座HL星の電波画像
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) によるおうし座HL星の電波画像
星座 おうし座
見かけの等級 (mv) 15.1[1]
変光星型 おうし座T型星
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  04h 31m 38.437s[1]
赤緯 (Dec, δ) +18° 13′ 57/65″[1]
固有運動 (μ) 赤経: 8.0 ミリ秒/年[1]
赤緯: -21.8 ミリ秒/年[1][2]
距離 450 光年
(140 pc)[3]
物理的性質
質量 0.55-1.2 M[3]
スペクトル分類 K5 ± 1[3]
光度 3.5-15 L[3]
色指数 (B-V) 0.92[1]
他のカタログでの名称
HL Tauri, HL Tau, HH 150, 2MASS J04313843+1813576
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サブミリ波での観測では暗い帯を持った原始惑星系円盤が星を取り囲んでいるのが明らかにされており、多数の惑星が形成されている最中であることを示唆している[9]。おうし座HL星にはハービッグ・ハロー天体 HH 150 が付随している[10]。これは円盤の回転軸に沿って噴出したガスのジェットが周囲の星間ガスや塵と衝突することによって形成されたものである[10]

原始惑星系円盤

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おうし座HL星が原始惑星系円盤を持つことは、1975年波長 2〜4 マイクロメートルの赤外線での分光観測から示唆されていた[4]。この観測はアンチモン化インジウムを使用した光起電性の検出器の開発によって可能となったものであった。この観測では29個の非常に若い恒星の観測が行われ、そのうちおうし座HL星のみが粒子の 3.07 µm での吸収が期待される位置に強い吸収の特徴を示した[11]。この吸収は、水分子中の酸素水素の結合の振動周波数に起因するものである[11]1982年のサーベイ観測では、おうし座HL星はおうし座DG星みずがめ座V536星と並んで、最も大きく偏光したおうし座T型星のひとつである事が明らかにされた[12]

おうし座HL星の周りのガス円盤は、1986年一酸化炭素 (CO) の干渉計を用いた観測によって発見された[13]1985年と1986年にオーエンスバレー電波天文台英語版[14]ミリ波干渉計を用いて行われた観測に基づき、星周円盤の質量の範囲は太陽質量の 0.01〜0.5 倍で、最も可能性が高い値は 0.1 太陽質量、また円盤の半径は 200 au と推定された。円盤内のガスとダストの温度はおそらくは数十 K 程度であると考えられる。このガスは、およそ1太陽質量の恒星に重力的に束縛されており、周囲をケプラー回転していることが発見された[15]。一酸化炭素と水素分子などの分子双極分子流英語版も観測された。さらに双極流の中には第一鉄 (Fe2+ あるいは Fe(II)) として知られる形態で存在しているのが発見された[16]

2014年には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) によるサブミリ波の波長での原始惑星系円盤の画像が公開され、円盤内に複数の溝で区切られた同心円状の明るい環が存在することが明らかになった[17]。この円盤はおうし座HL星の年齢から予想されるよりもずっと進化が進んでいるように思われ、惑星形成過程はこれまでに考えられていたよりも速く進行している可能性があることを示唆している[18]。ALMA の長基線試験観測キャンペーンのプログラムサイエンティストであるキャサリン・ヴラハキスは、「最初にこの画像を目にしたときには、私たちはそのあまりの高精細さに言葉を失うほど驚きました。おうし座HL星は100万歳に満たない若い星ですが、この画像を見るとこの星のまわりでは明らかに惑星ができているように見えます。このたった1枚の画像が、惑星形成の研究に革命をもたらすでしょう。」と述べている[17][18]

同年の研究では、原始惑星系円盤の複雑な磁場が大きな降着率を引き起こしている可能性があることが示唆されている[6]

画像

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出典

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  1. ^ a b c d e f g h HL Tauri”. SIMBAD. 2019年4月24日閲覧。
  2. ^ Kwon, Woojin; Looney, Leslie W.; Mundy, Lee G. (November 2011). “Resolving the Circumstellar Disk of HL Tauri at Millimeter Wavelengths”. The Astrophysical Journal 741 (1): 3. arXiv:1107.5275. Bibcode2011ApJ...741....3K. doi:10.1088/0004-637X/741/1/3. 
  3. ^ a b c d e Brogan, C. L.; Pérez, L. M.; Hunter, T. R.; Dent, W. R. F.; Hales, A. S.; Hills, R. E.; Corder, S.; Fomalont, E. B. et al. (2015). “THE 2014 ALMA LONG BASELINE CAMPAIGN: FIRST RESULTS FROM HIGH ANGULAR RESOLUTION OBSERVATIONS TOWARD THE HL TAU REGION”. The Astrophysical Journal 808 (1): L3. arXiv:1503.02649. Bibcode2015ApJ...808L...3A. doi:10.1088/2041-8205/808/1/L3. ISSN 2041-8213. 
  4. ^ a b Weintraub, David A.; Kastner, Joel H.; Whitney, Barbara A. (October 1995). “In Search of HL Tauri”. The Astrophysical Journal Letters 452: L141-L145. Bibcode1995ApJ...452L.141W. doi:10.1086/309720. 
  5. ^ 理科年表オフィシャルサイト/天文部:星間分子雲”. 理科年表オフィシャルサイト. 国立天文台. 2023年1月25日閲覧。
  6. ^ a b Stephens, Ian W.; Looney, Leslie W.; Kwon, Woojin; Fernández-López, Manuel; Hughes, A. Meredith et al. (October 2014). “Spatially resolved magnetic field structure in the disk of a T Tauri star”. Nature 514 (7524): 597–599. arXiv:1409.2878. Bibcode2014Natur.514..597S. doi:10.1038/nature13850. PMID 25337883. 
  7. ^ Webb, Johnathan (6 November 2014). “Planet formation captured in photo”. BBC News. https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-29932609 6 November 2014閲覧。 
  8. ^ Boss, A. P.; Morfill, G. E.; Tscharnuter, W. M. (1989). “Models of the Formation and Evolution of the Solar Nebula”. In Atreya, S. K.; Pollack, J. B.; Matthews, M. S.. Origin and Evolution of Planetary and Satellite Atmospheres. The University of Arizona Press. p. 45. Bibcode1989oeps.book.....A. ISBN 978-0-8165-1105-1. https://books.google.com/books?id=DN-v0fQSfPkC&lpg=PA45&pg=PA45 
  9. ^ Blue, Charles E. (6 November 2014). "Birth of Planets Revealed in Astonishing Detail in ALMA's 'Best Image Ever'" (Press release). アメリカ国立電波天文台. 2014年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月6日閲覧
  10. ^ a b Jets, bubbles, and bursts of light in Taurus”. European Space Agency (6 November 2014). 7 November 2014閲覧。
  11. ^ a b Cohen, Martin (November 1975). “Infrared Observations of Young Stars—VI: A 2- to 4-Micron Search for Molecular Features”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 173: 279–293. Bibcode1975MNRAS.173..279C. doi:10.1093/mnras/173.2.279. 
  12. ^ Bastien, Pierre (April 1982). “A linear polarization survey of T Tauri stars”. Astronomy and Astrophysics Supplement Series 48: 153–164. Bibcode1982A&AS...48..153B. 
  13. ^ Beckwith, S.; Sargent, A. I.; Scoville, N. Z.; Masson, C. R.; Zuckerman, B. et al. (October 1986). “Small-scale structure of the circumstellar gas of HL Tauri and R Monocerotis”. The Astrophysical Journal 309: 755–761. Bibcode1986ApJ...309..755B. doi:10.1086/164645. 
  14. ^ 天文学辞典 » オーエンスバレー電波天文台”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2019年4月24日閲覧。
  15. ^ Sargent, Anneila I.; Beckwith, Steven (December 1987). “Kinematics of the circumstellar gas of HL Tauri and R Monocerotis”. The Astrophysical Journal 323: 294–305. Bibcode1987ApJ...323..294S. doi:10.1086/165827. 
  16. ^ Takami, Michihiro; Beck, Tracy L.; Pyo, Tae-Soo; McGregor, Peter; Davis, Christopher (November 2011). “A Micro-Molecular Bipolar Outflow from HL Tauri”. The Astrophysical Journal 670 (1): L33-L36. arXiv:0710.1148. Bibcode2007ApJ...670L..33T. doi:10.1086/524138. 
  17. ^ a b プレスリリース - アルマ望遠鏡、「視力2000」を達成!— 史上最高解像度で惑星誕生の現場の撮影に成功 - アルマ望遠鏡”. アルマ望遠鏡. 国立天文台 (2014年11月6日). 2019年4月25日閲覧。
  18. ^ a b Vlahakis, Catherine; Rubens, Valeria Foncea; Hook, Richard (6 November 2014). “Revolutionary ALMA Image Reveals Planetary Genesis”. European Southern Observatory. https://www.eso.org/public/news/eso1436/ 7 November 2014閲覧。 
  19. ^ A glowing jet from a young star”. European Space Agency (2013年2月18日). 2019年4月25日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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