WD 1856+534とは、りゅう座の方向に存在する白色矮星である。地球から約 80.7光年 (24.7 pc) 離れた位置にあるこの白色矮星は、2つの赤色矮星のペアとの三重星系の一部をなしている。有効温度は 4,700 K (4,430 °C; 8,000 °F) で、年齢は約58億年とされる[2]。WD 1856+534の質量太陽の約半分であるが、半径ははるかに小さく、地球の約40%大きいサイズとされる[3]

WD 1856+534
WD 1856+534とその惑星の想像図
WD 1856+534とその惑星の想像図
星座 りゅう座
分類 白色矮星
軌道要素と性質
惑星の数 1
位置
元期:J2000
赤経 (RA, α)  18h 57m 39.3436703328s[1]
赤緯 (Dec, δ) +53° 30′ 33.301040904″[1]
固有運動 (μ) 赤経: −240.749±0.072 ミリ秒/[1]
赤緯: −52.470±0.063 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 40.3931 ± 0.0506ミリ秒[1]
(誤差0.1%)
距離 80.7 ± 0.1 光年[注 1]
(24.76 ± 0.03 パーセク[注 1]
物理的性質
半径 0.01310±0.00054 R[2]
質量 0.518±0.055 M[2]
表面重力 7.915±0.030 cgs[2]
有効温度 (Teff) 4710±60 K[2]
金属量[Fe/H] <−8.8[2]
年齢 58.5±5 億年[2]
他のカタログでの名称
LP 141-14, LSPM J1857+5330, 2MASS J18573936+5330332, NLTT 47263, TIC 267574918, TOI-1690, WDS J18576+5331C, WISE J185739.62+533032.9
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惑星系

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WD 1856+534には、その周囲に1つの太陽系外惑星であるWD 1856+534 bを持つことが知られている。この惑星は、2019年7月から8月にかけて、TESSによるトランジット法を用いた観測で最初に惑星候補として検出された。2020年にトランジットデータを解析したところ、地球の10倍以上の半径を持つ木星に似た巨大惑星であることが判明した。この惑星は、主星から約0.02天文単位離れた位置を公転しており、公転周期は水星の公転周期の60分の1である。惑星と白色矮星の距離が予想外に近いことは、主星が赤色巨星から白色矮星に進化した後、惑星の軌道が内側に移動したことが確実であることを意味している[2]。この移動は、WD 1856+534が階層的な三重星系に属しているという事実に関連している可能性がある。白色矮星とその惑星は、遠く離れた2つの赤色矮星の連星系である、G 229-20に重力で結合されている[2]。G 229-20との重力相互作用は、いくつかのホット・ジュピターと同様の方法で、古在メカニズム (: Kozai mechanism, Lidov–Kozai mechanism)[4][5][6]によって惑星の移動を引き起こした可能性があるというのが1つの仮説である。

WD 1856+534の惑星[2]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 9.1±4.7[7] MJ 0.0204±0.0012 1.4079405±0.0000011 ~0 88.778±0.059° 10.4±1.0 R

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

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  1. ^ a b c d e LP 141-14 -- White Dwarf”. SIMBAD. Université de Strasbourg. 2022年8月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j Vanderburg, Andrew; Rappaport, Saul A.; Xu, Siyi; Crossfield, Ian J. M.; Becker, Juliette C.; Gary, Bruce (September 2020). “A giant planet candidate transiting a white dwarf”. Nature 585 (7825): 363–367. arXiv:2009.07282. Bibcode2020arXiv200907282V. doi:10.1038/s41586-020-2713-y. PMID 32939071. 
  3. ^ Potter, Steve (16 September 2020). “NASA Missions Spy First Possible 'Survivor' Planet Hugging White Dwarf Star”. NASA. 20-086. https://www.nasa.gov/press-release/nasa-missions-spy-first-possible-survivor-planet-hugging-white-dwarf-star 20 September 2020閲覧。 
  4. ^ Muñoz, Diego J.; Petrovich, Cristobal (2020-11-19). “Kozai Migration Naturally Explains the White Dwarf Planet WD1856b”. The Astrophysical Journal 904 (1): L3. arXiv:2010.04724. Bibcode2020ApJ...904L...3M. doi:10.3847/2041-8213/abc564. ISSN 2041-8213. 
  5. ^ O'Connor, Christopher E.; Liu, Bin; Lai, Dong (2020-11-30). “Enhanced Lidov-Kozai migration and the formation of the transiting giant planet WD1856+534b”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: staa3723. arXiv:2010.04163. doi:10.1093/mnras/staa3723. ISSN 0035-8711. 
  6. ^ Stephan, Alexander P.; Naoz, Smadar; Gaudi, B. Scott (2021). “Giant Planets, Tiny Stars: Producing Short-period Planets around White Dwarfs with the Eccentric Kozai–Lidov Mechanism”. The Astrophysical Journal 922: 4. arXiv:2010.10534. doi:10.3847/1538-4357/ac22a9. 
  7. ^ Alonso, R.; Rodríguez-Gil, P.; Izquierdo, P.; Deeg, H. J.; Lodieu, N.; Cabrera-Lavers, A.; Hollands, M. A.; Pérez-Toledo, F. M. et al. (2021), “A transmission spectrum of the planet candidate WD 1856+534 b and a lower limit to its mass”, Astronomy & Astrophysics 649: A131, arXiv:2103.15720, doi:10.1051/0004-6361/202140359 

関連項目

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  • WD 1145+017 - トランジットを起こす崩壊しつつある惑星質量天体を持つ白色矮星。
  • WD J0914+1914 - 巨大惑星に起因する可能性がある破片の円盤を持つ白色矮星。
  • ZTF J0139+5245 - 破壊された惑星質量天体からの破片による円盤を持つ白色矮星。

外部リンク

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