VIKING (同人誌)
日本の雑誌
『VIKING』は、1947年(昭和22年)10月神戸で発刊された文芸同人誌。 創刊同人は富士正晴・井口浩・伊東幹治・島尾敏雄・林富士馬ら。
特定の主義・方針をかかげず、無思想・無任務をつらぬき、唯一存続することのみを目的とする。 島尾敏雄・庄野潤三・久坂葉子・高橋和巳・福田紀一・山田稔・杉本秀太郎・津本陽・宇江敏勝・久坂部羊らを輩出し、2021年10月(850号)現在も継続発行されている。
掲載された主な作品
編集- 島尾敏雄「単独旅行者」〈創刊号(1947年10月)〉(『出発は遂に訪れず』新潮社、1964年(昭和39年)所収、のち『出発は遂に訪れず』新潮文庫、1973年(昭和48年)、2007年改版 ISBN 978-41-0116401-4 所収)
- 久坂葉子「落ちてゆく世界」(未定稿)〈17号(1950年5月)〉のち改作「ドミノのお告げ」(第23回芥川賞候補)(『幾度目かの最期』講談社文芸文庫、2005年(平成17年) ISBN 4-06-198425-X 所収)
- 久坂葉子「灰色の記憶」〈26号,27号(1951年2月,3月)〉(『幾度目かの最期』講談社文芸文庫、2005年(平成17年)所収)
- 富士正晴「童貞」〈37号(1952年1月)〉(『帝国軍隊に於ける学習・序』未来社、1964年(昭和39年)所収)(第52回直木賞候補)
- 福田紀一「失われた都」〈45号,46号(1952年11月,12月)〉(『失われた都』河出書房新社、1973年(昭和48年))
- 久坂葉子「幾度目かの最期」〈VIKING47号、VILLON4号共同(1953年3月)〉(『幾度目かの最期』講談社文芸文庫、2005年(平成17年)所収)
- 鶴見俊輔「集団」〈76号(1956年11月)〉
- 宇江敏勝「炭焼きの子」〈94号(1958年5月)〉
- 高橋和巳「憂鬱なる党派[グルーム・パーティ]」全11回〈108号 - 112号,114号 - 116号,118号 - 119号,122号(1959年8月 - 12月,1960年2月 - 4月,6月 - 7月,10月)〉(『憂鬱なる党派』河出書房新社、1965年(昭和40年)、のち『憂鬱なる党派』(上・下)河出文庫、2016年(平成28年) ISBN 978-4-309-41466-9 ISBN 978-4-309-41467-6)
- 北川荘平「企業の伝説」〈115号(1960年3月)〉(第43回直木賞候補)(『企業の伝説』大和出版、1961年(昭和36年)所収)
- 清水幸義「瀬戸内海」〈134号(1961年11月)〉(同人雑誌優秀作)
- 川野彰子「色模様」〈136号(1962年1月)〉(第47回直木賞候補)(『廓育ち』文藝春秋新社、1964年(昭和39年))
- 山田稔「グロテスクの世界―スカトロジア(1)」〈146号(1962年12月)〉(『スカトロジア―糞尿譚』講談社文庫、1977年(昭和52年)所収、のち『スカトロジア―糞尿譚』編集工房ノア、2004年(平成16年))
- 島京子「渇不飲盗泉水」〈162号(1964年5月)〉(第54回芥川賞候補)
- 清水幸義「十津川」〈173号(1965年4月)〉(第53回芥川賞候補)
- 北川荘平「企業の過去帳」〈176号(1965年7月)〉(第54回直木賞候補)
- 北川荘平「白い塔」〈182号(1966年1月)〉(第55回直木賞候補)(『青い墓標』構想社、1981年(昭和56年)所収)
- 津本陽「丘の家」〈188号(1966年7月)〉(第56回直木賞候補)(『恋の涯』中央公論社、1979年(昭和54年)所収)
- 竹内和夫「孵化」〈191号(1966年10月)〉(第56回芥川賞候補)(『静かな学校』近代文芸社、1982年(昭和57年)所収)
- 山田稔「幸福へのパスポート―フランスメモ(最終回)」〈204号(1967年12月)〉(第59回芥川賞候補)(『幸福へのパスポート』河出書房新社、1969年(昭和44年)所収)
- 島京子「逃げた」〈213号(1968年9月)〉(三洋新人文化賞受賞)
- 富士正晴「竹内勝太郎の形成」13 - 24〈229号 - 240号(1970年1月 - 12月)〉(『竹内勝太郎の形成』未来社、1977年(昭和52年) ISBN 9784624600280)
- 蔵本次郎「亀」〈253号(1972年1月)〉(同人雑誌推薦作)
- 喜多唯志「押入れの哥川」〈287号(1974年11月)〉
- 津本陽「深重の海」全12回〈292号,294号 - 296号,304号 - 306号,308号,311号,320号,323号,328号(1975年4月,6月 - 8月,1976年4月 - 6月,8月,11月,1977年8月,11月,1978年4月)〉(第79回直木賞受賞)(『深重の海』新潮社、1978年(昭和53年)、のち『深重の海』集英社文庫、2012年(平成24年) ISBN 978-4-08745006-4)
- 藤井弥生「純粋病異聞」〈304号(1976年4月)〉(同人雑誌推薦作)
- 竹内和夫「鳥たちの生態」〈318号(1977年6月)〉(同人雑誌推薦作)
- 服部洋介「真夜中の紙飛行機」〈440号(1987年8月)〉(小説現代新人賞候補(1986年度・下))
- 久家義之「ラバンの死」〈504号(1992年12月)〉(同人雑誌上半期奨励作)
- 有光利平「海の底」〈529号(1995年1月)〉(同人雑誌上半期奨励作)
- 遠藤純子「冗談」〈556号(1997年4月)〉(同人雑誌下半期優秀作)
- 佐伯敏光「活断層」前篇,後編〈557号 - 558号(1997年5月 - 6月)〉(第21回井植文化賞受賞)
- 永井美智子「幼友達」〈610号(2001年10月)〉(同人雑誌上半期奨励作)
- 舟生芳美「くぐってもいいですか?」上,上・続下〈620号,632号(2002年8月,2003年8月)〉(神戸ナビール文学賞受賞)
- 朝比奈敦「国境(はて)」〈680号(2007年8月)〉(同人雑誌下半期優秀作)(『国境(はて)』鳥影社、2009年(平成21年)所収 ISBN 978-4-86265-191-4)
- 永井芙佐子「金の鈴」上・下〈799号 - 800号(2017年7月 - 8月)〉(神戸エルマール文学賞受賞)
『文學界』同人雑誌評にとりあげられた作品一覧
編集メディアによる紹介
編集- 同人誌「VIKING」荒波に負けず(2009年5月7日、読売新聞)
- あの山崎豊子さんも、津本陽さんも! 関西の老舗文芸同人誌「VIKING」創刊70年で800号(2017年8月30日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(1) 桂春団治、豪姫…同人誌『VIKING』800号、多くの作家を育てた(2018年6月4日、産経新聞)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(2) 大荒れに荒れ、解散論も(2018年6月14日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(3) 同人誌は「思想」 司馬遼太郎、寺内大吉、久坂葉子、山崎豊子…(2018年6月27日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(4) 開高健と新妻・牧羊子なごやか同人誌 久坂葉子追悼・合併で紛糾(2018年7月10日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(5) 華麗なる一族「幾度目かの最期」の衝撃 そこで「贋・久坂葉子伝」(2018年7月23日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(6) 贋・久坂葉子伝 哀れ日本のヴァージニア・ウルフ…形に残した(2018年8月4日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(7) 引きこもる一兵卒 童貞、ビンタ、中国人ニヒリズム…戦後「ベンチャラ人種」「サーヴィス精神」に疲れた(2018年8月17日、産経WEST)
- 【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(8) 茨木市の竹やぶ“不透明”執筆でも達観 ジャーナリズム視点「桂春団治」(2018年8月30日、産経WEST)
復刻
編集三人社が『初期「VIKING」』として、第1号(1947年10月)から第47号(1953年3月)までを復刻している。第1回配本は2015年(平成27年)11月刊、第1巻 - 第3巻(第1号 - 第21号、1947年10月 - 1950年9月) ISBN 978-4-908976-00-1、第2回配本は2017年(平成29年)5月刊、第4巻 - 第7巻(第22号 - 第47号、1950年10月 - 1953年3月) ISBN 978-4-908976-04-9。別冊(解題・総目次・索引)つき[1]。
脚注
編集- ^ “初期「VIKING」”. 三人社. 2022年11月6日閲覧。
外部リンク
編集- 同人誌「VIKING」公式ホームページ
- 富士正晴記念館(茨木市立図書館)
- 「富士正晴」氏 人物像(三好市教育委員会)