TAMA300

国立天文台三鷹キャンパスにある重力波検出器

TAMA300(たまさんびゃく)[1]は、国立天文台の重力波プロジェクト推進室が運用している重力波検出器、およびまたその開発・運用プロジェクトの名称。重力波の検出に使われる装置は、基線長300メートルのファブリー・ペロー型マイケルソン干渉計である。名称の「TAMA」は装置が設置された国立天文台三鷹キャンパスがある多摩地域に、「300」は装置の基線の長さにちなんで名付けられた[1]

TAMA300。基線長300mの干渉計型重力波検出装置国立天文台三鷹キャンパスの地下にある。
真空ポンプとの接続部。ダクト内部は10-6 Paオーダー真空に保たれている。

概要

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将来のキロメートル級の干渉計に必要な技術を開発すること、および天の川銀河を含む局所銀河群で起こるイベントからの重力波を検出することを目的としている[2]。天の川銀河で起こる連星中性子星からの重力波を検出できる感度を持つが、このイベントが起こる確率は数十万年に1度程度と考えられている[2]。装置は1995年から三鷹キャンパス内に建設が始まり、1999年7月から観測運転が開始された[3]

レーザー光のエネルギーを増幅するために「リサイクリング」と呼ばれる技術を用いており[2]、安定かつ単一波長のレーザー光を用いた 極めて精度の高いファブリペロー型マイケルソン干渉計 (FPMI) である。ファブリペーロー型マイケルソン干渉計は、90度(垂直)に交差する光路と、光路内に取り付けられた反射鏡からなる装置である。レーザー光源から発せられたレーザー光は、リサイクリング装置で増幅される(光源出力0.5Wから20Wまで)。このレーザー光を、光路内で往復させることで、干渉縞を得る。もしも、途中に重力波などが通過した場合には、等価原理によって重力波による《空間の歪み》が生じる。この《空間の歪み》によって、生じる光路差によって、光波にはうねりが生じる。このうねりによって、干渉縞が生じる仕組みである。光路内部は、干渉縞を得るために高度真空状態とし、さらに、センサー熱雑音の影響を避けるために低温で運用を行う必要がある。また、干渉計の基線長の長いものほど、長い波長の干渉縞を得やすい。

低温技術

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装置全体の熱雑音を抑えると同時に精度の高い干渉縞を得るため、低温技術[注 1]を用いた設計がなされている。これは新規に設置された観測装置において用いられている技術で、高精度受信素子、冷却CCD赤外線観測装置、X線ガンマ線領域でも行われている。熱雑音による精度の低下はその装置自体が持つ温度をピークとした輻射が存在するために生じるが、この影響を限りなく少なくするための技術である。

研究成果

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2020年4月28日、KAGRAの開発で培われた防振制御などの最新技術を応用して、大型重力波望遠鏡で必要とされる100ヘルツ以下という低周波におけるゆらぎの制御の実現に成功したと発表した[4][5]。この技術を、KAGRAを始めとした大型重力波望遠鏡に適用することで、従来より感度で約2倍、観測可能な重力波イベントの数は約8倍となる見込みで、各重力波望遠鏡のアップグレード時に採用される予定としている[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ 英語では「low-temperature technology」。それを扱う低温工学という学問領域もある。冷凍技術の年表も参照。

出典

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  1. ^ a b TAMA300”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年6月8日). 2020年2月28日閲覧。
  2. ^ a b c TAMA300 干渉計”. 重力波プロジェクト推進室. 国立天文台. 2020年2月28日閲覧。
  3. ^ 干渉計型重力波アンテナ TAMA300”. 国立天文台. 2020年2月28日閲覧。
  4. ^ a b TAMA300で実証した量子雑音を抑える新技術』(プレスリリース)国立天文台、2020年4月28日https://www.nao.ac.jp/news/science/2020/20200428-gwsp.html2020年4月30日閲覧 
  5. ^ Zhao, Yuhang et al. (2020). “Frequency-Dependent Squeezed Vacuum Source for Broadband Quantum Noise Reduction in Advanced Gravitational-Wave Detectors”. Physical Review Letters 124 (17). arXiv:2003.10672. doi:10.1103/PhysRevLett.124.171101. ISSN 0031-9007. 

参考文献

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関連項目

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  • CLIO - KAGRAのプロトタイプとして岐阜神岡鉱山跡地に建設された低温レーザー干渉計重力波観測装置。
  • KAGRA - 2020年2月に運用が開始された日本の大型重力波検出器。
  • LIGOカリフォルニア工科大学マサチューセッツ工科大学) - アメリカ国内の2か所に設置された基線長4キロメートルのレーザー干渉計による重力波検出器。
  • Virgo(フランス・イタリア) - 基線長3キロメートルのレーザー干渉計による重力波検出器。
  • LISA (NASAESA) - LISAは "Laser Inferometer Space Antena" の略称であり、宇宙重力波望遠鏡(アンテナ)である。基線長は500万キロメートルを計画中。現在、国際協力によって開発が進められている。2034年に宇宙へ打ち上げられ、人工惑星軌道へ投入され観測を開始する予定。
  • DECIGO (日本) - 0.1Hzから10Hz程度の重力波を観測できる宇宙重力波望遠鏡で、日本におけるKAGRAの次の将来計画として検討されている。"Deci-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory" の略称。
  • 天文学 - 高エネルギー天文学 - 重力波天文学
  • 一般相対性理論 - 重力波

外部リンク

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座標: 北緯35度40分35.8秒 東経139度32分10.2秒 / 北緯35.676611度 東経139.536167度 / 35.676611; 139.536167