SIGNALIS
『SIGNALIS』(シグナリース)は、rose-engineが開発し、Humble Gamesより発売されたホラーゲーム[1]。日本語版の発売およびローカライズはPLAYISMが担当した[2]。
概要
編集プレイヤーはレプリカ(量産型のアンドロイド)のエルスターとなって、未知の感染症によって荒廃した施設シェルピンスキーを探索し、捜し人であるゲシュタルト(人間)のアリーナ・ソウの行方を追う。シェルピンスキーでは感染症によって死から蘇ったレプリカが徘徊しており、パズルや鍵付き扉といった仕掛けで行く道が塞がれている。プレイヤーは銃器、治療キットといったアイテムを駆使しながらこれらの障害を排除あるいは回避し、ゲームを進めていく。
ゲームは上空手前で固定された見下ろし視点で進行し、時おり演出として一人称視点に切り替わる。グラフィックは640×360ピクセルの解像度で描かれ、プレイヤーの環境に合わせてアップスケールして表示される。探索の過程でゲームの進行とは直接関係のない文書、画像等を入手でき、そこからゲームの世界観や登場人物についての情報が得られる。
開発期間は8年で、rose-engineの2名のクリエイターが中心となって進められた[3]。ホラーゲームとしては急に大きな音が出る、不意に何かが画面に映るといった演出は少なく、継続して静かな恐怖を与え続けるスタイルになっている[4]。
ストーリーは前後のシーンが繋がっていない、時系列について明記されない等、一見して理解しづらい仕組みになっている。ゲーム終盤まで集めた文書、画像をそれまでの物語で描写された情報と統合することで、ストーリーの全体像がおおむね見えてくる。
システム
編集ステージとなるシェルピンスキーは障害物、鍵付き扉、パズル等の仕掛けで自由に行き来できない。各部屋または通路には、そうした仕掛けを突破あるいは解除するための鍵や、ヒントとなる文書、画像が隠されている。プレイヤーはそれらを集めて仕掛けを解除し、ステージを攻略していく。メインメニューからマップが確認でき、一度行った地点はその都度追加される。開く扉は青、開かない扉は赤、仕掛けのある扉は黄で表示される。仕掛けがある地点はマーキングされ、マップ上のその地点に仕掛けの種類を示す名前が表示される。未解除の仕掛けのマークは赤、解除済みは黒で表示される。
ステージ攻略の障害として、各所に敵のレプリカが配置されている。プレイヤーが使える武器としてハンドガン、ショットガン等の銃器、敵を気絶させるスタンロッドがあり、プレイヤーはそれらを駆使して敵を排除または回避していく。銃器の場合、構え動作を取ると向きを示すレーザーサイトのラインと狙いを定めるカーソルが表示される。ラインを敵に合わせるとカーソルが時間経過で徐々に小さくなっていき、それに応じて威力が上昇する。敵はダメージを受けるとその場に倒れ、一定時間行動不能になる。この時、近づいて決定ボタンを押すと「踏み付け」が発動し、敵にトドメを刺すことができる。敵の攻撃に被弾するとダメージを受ける。これは自動では回復せず、限界までダメージを受けるとゲームオーバーとなる。ダメージは回復アイテムの治療キットや修復スプレーで回復できる。これらの武器、アイテムは探索中に入手できる。
しかし同時に持ち運びできるのは武器、アイテム合わせて六つという制限がある。全て埋まると新しい武器、アイテムを拾うことができなくなるため、それを考慮して一度に持ち運ぶ数を考える必要がある。敵は一度倒しても時間経過で復活するが、ステージ上で入手できる弾薬には限りがある。長時間戦い続けるといずれ弾薬が尽きる設計となっており、計画的な運用が求められる。
武器
編集- ピストル
- マガジン式で10mm弾を10発まで装填できる。銃器の中では威力が最も低い。
- ショットガン
- ポンプアクション式でショットガン実包を5発まで装填できる。散弾により複数の敵を同時に攻撃できる。ピストルよりやや威力が高い。
- リボルバー
- 文字通りのリボルバー式で12mm弾を6発まで装填できる。ショットガンより威力が高く、一部除き命中時に確定で敵を怯ませることができる。
- フレアガン
- 改造可能な信号拳銃で、信号フレア弾またはグレネード弾を1発まで装填できる。信号フレア弾は命中時に敵を炎上させ、継続ダメージを与える。継続ダメージで倒し切った場合はそのまま死体を燃焼させる。燃焼した死体は復活しなくなる。復活を阻止する用途で死体に打ち込むこともできる。グレネード弾は爆発により広範囲を攻撃できるが、距離が近いとエルスターも爆発に巻き込まれてダメージを受ける。
- ライフル
- 中折れ式で16mmニトロエクスプレス徹甲弾を2発まで装填できる。反動は大きいがゲーム中最強の威力を持ち、銃弾を弾く盾や装甲を無視してダメージを与えられる。
- サブマシンガン
- 3点バースト式で8mmコンパクト弾を30発まで装填できる。
アイテム
編集- 治療キット
- エルスターの体力を時間をかけて小回復させる。修復スプレーと組み合わせることで修復スプレー+となる。
- 修復スプレー
- エルスターの体力を時間をかけて大回復させる。治療キットと組み合わせることで修復スプレー+となる。
- 修復スプレー+
- エルスターの体力をすぐに中回復させる。組み合わせによっても入手できるが、その場合は総回復量が下がってしまう。即効性と総回復量どちらを取るかの駆け引きとなっている。
- オートインジェクター
- エルスターの体力をすぐに大回復させる。装備することができる。装備中は致命傷を受けると自動的に使用され、ゲームオーバーを回避する。
- スタンロッド
- 敵に電撃を流し強制的にダウンさせる。装備しないと使用できず、消耗品で射程距離も短い。ダウンした敵は踏み付けで即死させることができる。ただし一部電撃に耐性を持つ敵もいる。
- テルミットフレア
- 死体を燃焼させる。燃焼した死体は復活しなくなる。ゲーム全体を通して入手数が限られており、いつどこで使うかが一種の駆け引きとなっている。射程距離は短いが敵に貼り付けることもでき、その場合は貼り付けた敵に炎上による継続ダメージを与える。
敵
編集作中では感染症により機能停止したレプリカが、生体細胞の癌性増殖によって再起動したものという設定。病の影響で壊死した皮膚や頭髪が剥がれ落ち内部の生体コンポーネントが剥き出しになっており、人間で言うところのゾンビのような状態となっている。銃器やスタンロッドで一時的に倒すことはできるが、死体を焼却しなければ(一部除き)時間経過で復活する。
- オイレー(EULR)
- 清掃、調理、補助的医療、事務など日常業務を担当するユニット。肩書きはフクロウ。身長175cm。包丁やメス等の刃物で武装している。
- シュタール(STAR)
- 近接戦闘、暴動鎮圧など保安警備を担当するユニット。肩書きはムクドリ。身長220cm。大型警棒で武装しており、ゲームが進むと小型警棒と防弾盾を装備した指揮官個体も出現する。防弾盾はピストルやショットガンによる銃撃を無力化する。
- アーラ(ARAR)
- 建設、修理作業を担当するユニット。肩書きはコンゴウインコ。身長185cm。作業用のパーツを装備しており両手が分厚いように見える。普段は床の下に隠れており、エルスターが近づくと姿を現す。
- シュトルヒ(STCR)
- 保守部隊の指揮を担う隊長格のユニット。脚部伸長によって他のユニットよりも体格が大きい。両腕が破損し、また頭部に脚部伸長用のパーツが融合しているため、翼の無いオオハシを思わせる特異な外観となっている。
- コリブリ(KRBR)
- ファルケユニットの補佐を担当するユニット。肩書きはハチドリ。身長152cm。ファルケによる生体共鳴シグナルを増幅する能力を持ち、テレパシーのように他者の精神に影響を与えたり、言語を介さずに情報を読み取ることができる。
- 感染症の影響か頭部が不自然に肥大化している。生体共鳴シグナルによる幻覚によって、4体以上に分裂して見えたり、画面にエラーメッセージや奇妙な文字列が映ったりする。コリブリに近づくと幻覚がより不気味さを増していき、限界まで近付くと急速に体力を削られゲームオーバーとなる。
- ミューナ(MNHR)
- 危険環境での採掘作業を担当するユニット。肩書きはキュウカンチョウ。身長260cm。放射能や危険物から身を守るパワーアーマーと、掘削用のレーザーで武装している。パワーアーマーはライフル以外の攻撃を無力化する。体力、攻撃力共に高い。
- 弱点の少ない強敵だが、感染症の影響か一定時間が経過するとその場に膝をついてしばらく行動不能になる。このときフェイスシールドが開き、正面からダメージを与えられるようになる。しかし同時に毒性のある液体を巻き散らすため、近付きすぎるとダメージを受ける。
- 鵺
- 複数体のレプリカが感染症によって融合したもの。肉塊のような胴体から無数の手足が生えた異形な外観をしている。非常に体力が高い。
- ファルケ(FKLR)
- プロテクター部隊の司令官を務めるユニット。肩書きはファルコン。身長250cm。強力な生体共鳴モジュールのプロトタイプが実装されており、弱い精神を操る、テレパシーで他者の願望や感情を読み取る、念力で物を動かすといった能力を持つ。
- 6本のスピアで武装しており、念力で投擲してくる。ほか金属板を持ち上げ盾として用いる。時間経過でダウンし、この時に特定の手順を踏むことでダメージを与えられる。銃器ではこのダウンまでの時間を早めることしかできない。
ストーリー
編集- 宇宙船ペンローズ
- ペンローズ機内でエルスターは目覚める。ペンローズは氷の惑星レンに不時着していた。エルスターはペンローズを脱出し、大吹雪の中を歩く。目の前には奇妙な門がある。門を潜りぬけると、地上に大穴が開いている。大穴の底には横穴があり、潜ると誰かの私室に繋がっている。私室には扉があるが開かない。私室のテーブルにはコンピュータ、ラジオ、『黄衣の王』の小説が置いてある。小説を調べるとコンピュータが起動し、謎の暗号文を発信する。画面に奇妙な画像や文字列が流れ、エルスターの顔が徐々に変貌していく。
- シェルピンスキーB1F
- 場面が惑星レンの採掘施設シェルピンスキーに切り替わる。B1Fのトイレでエルスターが鏡を見ている。エルスターはアリーナ・ソウを捜すという目的を再確認し、B1Fの探索を始める。感染症で死亡したレプリカの死体があちこちに転がっている。ある部屋で負傷したレプリカと出会う。エルスターはそのレプリカにアリーナのことを訪ねる。レプリカはアリーナのことは知らないが、施設のゲシュタルトは全員、地下坑道に送られたと話す。その地下坑道にはエレベータで行けるが、身分証が必要とも話す。エルスターは探索を続ける。ある部屋でイザというゲシュタルトの女性と出会う。イザはエルスターと同じく人捜しをしているというが、協力は不要として去っていく。B1Fの感染レプリカの死体が起き上がってエルスターを襲うようになる。エルスターは感染レプリカを撃退しながらB2Fに降りる。
- シェルピンスキーB2F
- B2Fのあちこちに感染レプリカが徘徊している。エルスターは感染レプリカを撃退しながらB2Fを探索する。身分証を入手し、エレベータを起動する。エルスターはB1Fに上る。イザが休んでおり、話しかけると自分の捜し人は姉妹のエリカであると話す。エルスターはエレベータに戻り、最下層まで降りようとする。しかしB3Fでエレベータが故障して動かなくなる。やむを得ずエルスターはB3Fに出る。
- シェルピンスキーB3-4F
- エルスターはB4Fのエレベータを目指し、施設を探索する。B4Fで感染したミレーナユニットに襲われるが、撃破する。B4Fのエレベータ前で施設の管理者であるアドラーユニットと出会う。エルスターはアリーナについてアドラーに尋ねる。アドラーはアリーナはこの施設の作業員であると答える。しかしアドラーは突然、エルスターに組みかかり、彼女をエレベーターの穴に押し出して落下させる。
- 回想(イザ)
- 場面がイザの回想に切り替わる。学校の教室で居眠りから目覚めたイザは、図書室で本を借りる予定を思い出し、図書室に向かう。イザはそこで、白髪の女生徒が他の生徒から暴行を受ける場面を目撃する。
- シェルピンスキーB5-6F
- 場面がエルスターの視点に切り替わる。エルスターはB5Fのエレベータ前で意識を取り戻す。エルスターはB5FからB6Fを探索し、床に空いた穴からB7Fに降りる。
- イザ視点
- 場面がイザの視点に切り替わる。B8F司令官室の扉を調べているイザにアドラーが近づく。イザはアドラーに気付いてナイフを向けるが、アドラーは自分は協力したいだけだとイザをたしなめる。
- シェルピンスキーB7F-8F
- 場面がエルスターの視点に切り替わる。エルスターはB7Fから探索を再開する。『死の島』と思わしき絵画があちこちに飾られている。B8Fの地下坑道に続くエレベータは閉ざされており、管理者のカードキーが必要だと分かる。B8Fの司令官室に入るとファルケユニットが眠っているが、目覚める気配はない。部屋にはファルケの日記があり、彼女が「赤目」と呼ばれる何かと接触し、記憶が曖昧になっていく様子が記されている。B8Fの管理室で管理者のカードキーを入手する。部屋にはアドラーの日記があり、同じ日付の日記が内容を変えて繰り返し付けられている。エルスターはカードキーでエレベータを起動し、地下坑道に降りる。
- イザ視点(2回目)
- 場面がイザの視点に切り替わる。地下坑道で、イザはライフルを持ったアドラーに追われている。地面に大穴が空いた区間で、イザは物陰に隠れている。アドラーはイザに気付かず、イザのいない方向を向く。イザは背後からアドラーに近づき、ナイフを突き立てる。イザは体勢を崩したアドラーを大穴に突き落とす。
- 地下坑道
- 場面がエルスターの視点に切り替わる。エルスターは地下坑道を進む。最奥には先の大穴が空いた区間があり、エルスターはそこから飛び降りる。
- 死の島
- 絵画『死の島』の世界と思わしき場所に場面が切り替わる。一人称視点になり、プレイヤーは島を彷徨う。地上には紙のページが散乱しており、コズミックホラーを彷彿とさせる詩的な文章が記されている。島の橋まで移動すると演出が入り、非在の場へ移る。
- 非在の場
- 大穴の底は、蠢く肉塊と錆びた金属で構成された奇妙な施設に繋がっていた。エルスターは施設を探索する。ある部屋にはアリーナの手記があり、彼女が感染症にかかって白髪になったことが記されている。探索を続けると肉塊で覆われた穴を見つける。エルスターは肉塊の穴から飛び降りる。穴の底ではイザが感染レプリカに襲われている。感染レプリカは檻と一体化しており、人の形をしておらず、肉塊のような胴体から無数の手足が生えている。エルスターは感染レプリカと戦う。途中でイザが目覚め、ライフルでエルスターに加勢する。ライフルの弾丸で感染レプリカは倒れるが、イザは反動の衝撃で気絶する。エルスターはイザを抱えて安全な場所まで移動する。エルスターはイザを置いて探索を続け、ある部屋で気付け薬を拾う。エルスターは薬でイザを起こす。エルスターは意識を取り戻したイザと会話し、ライフルを譲ってもらう。エルスターは探索を続け、施設の最奥で地上に続く階段を見つける。
- 虚無の世界
- 地上に出ると、辺り一面が真っ赤に染まった虚無の世界が広がっている。進むと物語冒頭の惑星レンにもあった奇妙な門があり、負傷したアドラーが座り込んでいる。アドラーは司令官のファルケは門の先で、未知の何かによって病の感染源にされたと話す。また門から戻ることはできず、エルスターの行為は無意味だと指摘する。エルスターはアドラーを無視して門を潜り、虚無の世界を進む。道端には多数のエルスターユニットの死体が転がっている。さらに進むと墜落したペンローズがある。エルスターはペンローズ上部に這い上がり、ハッチを開けようとする。しかしハッチが開く前にエルスターの腕が千切れる。エルスターはペンローズから転げ落ち、落ちた時の衝撃で胸部が破損する。エルスターは倒れて動けなくなり、瞳からゆっくりと光が消える。スタッフロールが流れ、エンディングであることが示唆され、ゲームのタイトル画面に戻される。
- 宇宙船ペンローズ(2回目)
- タイトル画面からゲームを再開すると、物語の続きが始まる。宇宙を航空中のペンローズ機内でエルスターは目覚める。エルスターはペンローズのメンテナンスを行う。機内には上官アリアーネ・ヤンの手記や絵画が置かれており、アリアーネが芸術を嗜んでいること、アリアーネが故郷で孤独を感じていたことが分かる。エルスターはメンテナンスを終え、アリアーネへ報告に向かう。アリアーネはエルスターを温かく迎え入れ、ハグをする。アリアーネは音楽を流し、二人でダンスをする。エルスターとアリアーネはベットの上でお互い寄り添い、眠りにつく。
- 宇宙船ペンローズ(3回目)
- 場面が虚無の世界に切り替わる。倒れたエルスターの前に、アリアーネと思わしき女性が現れ「約束を思い出して」と言う。それに応えるようにエルスターが目覚める。エルスターが目覚めた場所は虚無の世界ではなく、物語冒頭でペンローズが不時着した惑星レンだった。目の前には墜落したペンローズがある。エルスターは片腕の状態でハッチを開け、ペンローズの中に入る。エルスターはペンローズ機内を探索する。冷凍睡眠室には蠢く肉塊があり、そばで主人公と同型のエルスターユニットが倒れている。エルスターは同型から腕をもぎ取り、自身の千切れた腕と換装する。さらに同型が身に着けていたプロテクターを剥ぎ取り、胸部の破損を補う。エルスターは機内の探索を続ける。機内に散乱する手記には、誰かが病の痛みや苦しみによって絶望していく様子が記されている。機内の一角では床が崩れ、肉塊に覆われた穴が空いている。エルスターは穴から飛び降りる。
- シェルピンスキーB1F(2回目)
- 場面がシェルピンスキーに切り替わる。B1Fのトイレでエルスターが鏡を見ている。B1Fはそこらじゅう肉塊で覆われており、ゲーム前半とは様変わりしている。エルスターはB1Fを探索する。通路の床下が崩れ、肉塊に覆われた穴が空いている。エルスターは穴から飛び降りる。
- 死の島(2回目)
- 絵画『死の島』の世界と思わしき場所に場面が切り替わる。一人称視点になり、プレイヤーは島を彷徨う。浜にはボートがあり、近づくとプレイヤーがボートに乗ってどこかへと向かう演出が入る。
- アドラー&イザ視点
- 場面がアドラーの視点に切り替わる。B8Fの司令官室で、眠るファルケをアドラーが見下ろしている。アドラーはファルケの額に口づけをする。アドラーは病に感染し、皮膚が剥がれ、骸骨のような姿に変貌する。場面がイザの視点に切り替わる。傷だらけのイザが、鏡に映った自分を見て震えている。
- ロートフロント
- 場面が惑星ロートフロントのアパートに切り替わる。エルスターはアパートを探索する。アパートにはアリアーネについての手記や居住者の個人データがあり、アリアーネがアパートの一室にあるイトウ書店の従業員だったこと、宇宙探索任務のペンローズ・プロジェクトに志願していたこと、志願が却下された場合はシェルピンスキーに送られることになっていたことが分かる。ほかアリアーネは母子家庭で育ったこと、山奥の通信施設の出身であること、全体主義社会において異端とされる芸術にのめり込み周囲から孤立していたことが分かる。イトウ書店の店内に入るとイザがいる。イザは捜し人を見つけられなかったと言い、その場に崩れ落ち、消滅する。店内には遺影と思わしき写真が飾られている。写真にはイザによく似たイゾルデ・イトウと、その姉妹エリカの顔が写っている。エルスターはアパートの探索を続ける。アパートの壁にある奇妙な仕掛けを解除すると、壁に穴が開く。穴は誰かの部屋らしき場所に繋がっている。エルスターは穴を潜る。
- 終焉
- 穴の先は、アリアーネの私室に繋がっていた。物語冒頭、惑星レンでエルスターが訪れた誰かの私室と構造が一致している。私室にはアリアーネが好きな禁書指定の書物や絵画が置かれている。テーブルの上には小説『黄衣の王』が置かれている。小説に触れると扉の封印が解除される。扉はアリアーネの自宅に繋がっている。部屋にはアリアーネの母が彼女に宛てた手紙が落ちており、手紙からアリアーネが通学のために実家を出て、叔母のいるアパートに引っ越したことが分かる。エルスターは部屋の扉から外に出る。外は長い通路になっている。通路の床にはアドラーの手記があり、感染症によるシェルピンスキーの崩壊を止められなかったこと、崩壊したのは現実そのもので病や毒、放射能によるものではなかったことが記されている。またエルスターに宛てた警告文があり、エルスターは何度も戻ったがいずれも成功しなかったことが記されている。ほかの手記にはファルケと思われる人物が何かと接触し、別の人物の記憶を流し込まれ、自分と他者の分別が付かなくなったことが記されている。通路の最奥にはシェルピンスキーB8Fの司令官室に繋がる扉がある。エルスターは扉を開け、中に入る。
- 司令官室
- 司令官室に入ると眠っていたはずのファルケが目覚める。ファルケはエルスターが戻ってきたことを非難し、彼女は我々を求めていない、我々と踊ることはもうないとエルスターを否定する。そして自分たちは不完全で一つになるべきだとして、感染者の姿となりエルスターに襲い掛かる。エルスターはファルケと戦い、撃破する。ファルケの記憶と思わしき映像が流れる。致命傷を負ったファルケは「今や一つ」と言葉を残して倒れる。場面が虚無の世界に切り替わる。奇妙な門の前に感染者となったアドラーが立っている。アドラーはエルスターの行動を許容できないとして、ナイフでエルスターを攻撃する。エルスターもハンドガンで対抗する。両者は相打ちとなり、アドラーは倒れるがエルスターは堪える。アドラーはなおもエルスターを止めようと手を伸ばす。エルスターはアドラーを無視して門を潜り、虚無の世界を進む。エルスターは墜落したペンローズに辿り着き、ハッチを開けて中に入る。
- 宇宙船ペンローズ(4回目)
- エルスターはペンローズ機内を探索する。機内には主人公と同型のエルスターユニットの遺体があり、それを見たエルスターは自分は約束を守れなかったことを悟る。機内にはアリアーネの手記が落ちており、彼女が老化と病によって衰弱していく様子が記されている。エルスターは機内の冷凍睡眠室に入る。
- エンディング
- エンディングはプレイヤーの行動に応じて4つに分かれる。
- 離別エンド
- 場面が惑星レンではない未知の荒野に切り替わる。地平線から光が射している。空は青く、夜明けなのかまだ星が輝いている。地上にはペンローズが墜落している。ペンローズのハッチを開けてエルスターが出てくる。「あなたを残して行くしかなかった」とメッセージが表示される。エルスターはしばらく歩いた後、その場に膝をつき、赤子のように丸くなって目を閉じる。画面がブラックアウトし、物語の終わりが示唆される。
- 記憶エンド
- 冷凍睡眠室ではアリアーネが仰向けの姿勢で寝ている。エルスターは近づいてアリアーネの名前を呼び、自分がエルスターであることを伝える。しかしアリアーネはエルスターが誰か覚えていないと言う。エルスターはいいんだ、と言いアリアーネに寄り添うように倒れる。エルスターがこのまま居させて欲しい、と言ったところ画面がブラックアウトし、物語の終わりが示唆される。
- 約束エンド
- 冷凍睡眠室ではアリアーネが仰向けの姿勢で寝ている。エルスターの存在に気付いたアリアーネが、エルスターの名前を呼ぶ。エルスターは自分にはできないと言う。しかしアリアーネはそれがエルスターの責務だとして介錯を促す。エルスターはアリアーネの首を絞める。アリアーネの瞳から光が消える。エルスターは崩れるようにその場に倒れる。エルスターの瞳からゆっくりと光が消える。画面がブラックアウトし、物語の終わりが示唆される。
- 遺物エンド
- アリアーネの私室にある金庫の鍵を開けると隠しエンドになる。金庫の中には白百合の花が入っている。エルスターが花を手に取ると、場面がどこか別の世界に切り替わる。棺を中心に、囲むように六つの墓標が立っている。エルスターはうち一つの墓標に花を捧げる。エルスターは墓標に手を付き、そのまま倒れる。棺の中央には正体不明のアーティファクトが置かれており、光り輝いている。場面が虚無の世界に切り替わり、墜落したペンローズの上空へ視点が向く。巨大な「赤目」が地上を見下ろしている。場面がペンローズ機内に切り替わり、アリアーネとエルスターが踊っている。画面がブラックアウトし、物語の終わりが示唆される。
登場人物
編集- エルスター(LSTR-512)
- 主人公。レプリカの女性。黒髪で髪型はショートカット。ボディは赤と黒を基調としたカラーで塗装されている。エルスターはレプリカの種類を指す言葉であり、型番のLSTR-512が事実上の名前である。ヴィネタのゲシュタルト兵士をモデルに製造された。レプリカの特性として、一匹狼気質で孤独に強く、単独調査の任務に向いているとされる。一方で戦争の話題を嫌い、音楽等の芸術に触れるとモデルとなったゲシュタルト兵士の記憶が蘇るとされる。
- アリーナ・ソウを捜すため、惑星レンの採掘施設シェルピンスキーを訪れる。しかし探索の途中で捜索対象がアリアーネ・ヤンに切り替わり、終盤では目的がアリアーネとの約束を果たすことに変わっていた。複数のエルスターがいることが物語上で示唆されており、どれが物語上における本物のエルスターなのか、あるいは全て本物なのか、全て違うのかはゲームでは明かされず、謎を残したまま物語が終わる。
- アリーナ・ソウ
- 物語前半におけるエルスターの捜し人。ゲシュタルトの女性。茶髪で髪型はポニーテール。軍服を着ている。シェルピンスキーで作業員として働いているとされる。施設の意向により地下坑道へと送られる。地下坑道の下、非在の場ではアリーナの手記を見つけられる。手記によれば感染症の影響で白髪になったという。惑星ロートフロントのアパートにはアリーナの写真があり、彼女がヴィネタ出身の兵士であることが記されている。同じくアパートの手記ではアリーナとアリアーネは顔がよく似ているとされる。物語上では直接の登場はないが、一部シーンにおける演出で、アリーナと思わしき人物の3Dモデルが登場する。
- アリアーネ・ヤン
- 物語後半からエルスターの捜索対象となる人物。ゲシュタルトの女性。回想シーンでは、白髪で髪型はショートカット。軍服を着ている。宇宙探索任務のペンローズ・プロジェクトにおいてエルスターの上官を務めていた。同じく回想シーンでは芸術として絵画を嗜んでいたことが示唆され、またエルスターとは音楽を聴きながらダンスをする等、親交を育んでいた。
- 出身は惑星ロートフロントの山奥にある通信施設で、母子家庭で育ち、後に通学のため叔母のいるアパートへ引っ越した。アパートでは同施設内にあるイトウ書店で従業員として働いていた。全体主義社会では異端とされる芸術にのめり込み、中でも音楽、絵画、文学を嗜んでいた。しかしそれ故に周囲から孤立し、学校や職場では孤独を感じていた。ペンローズ・プロジェクトに志願するが、却下された場合はシェルピンスキーに送られると通知されていた。アパートの手記によれば、写真からヴィネタ兵士であるアリーナのことを知り、自分と同じ顔で別の人生を歩んでいる彼女に憧れに近い感情を抱いていたとされる。同じく手記では、生体共鳴者という特異な存在であることが示唆されている。
- 物語後半では髪型がロングヘア、服装が白いドレスに変化する。ペンローズの手記によれば、任務を何千サイクルと重ねていく中で、老化と病によってひどく衰弱していったとされる。また時期は不明だがエルスターと何らかの約束を交わしており、それがエルスターの物語後半の行動原理となる。
- イザ
- シェルピンスキーB1Fでエルスターが出会ったゲシュタルトの女性。茶髪で髪を後ろで束ねている。学校の制服と思わしき服を着ている。姉妹のエリカを捜すため、シェルピンスキーを訪れた。武器としてナイフを装備している。
- ロートフロントのアパートにある個人データによれば、イゾルデ・イトウ、エリカ・イトウという姉妹がアパートに住んでいたとされる。またイトウ書店の店内には二人の遺影と思わしき写真が飾られている。アリアーネの手記からイザとアリアーネは面識があったことが示唆されている。
- アドラー
- シェルピンスキーの施設管理者であるレプリカの男性。黒髪で短髪。管理者として、施設を破壊していく感染症に立ち向かっていくも、一向に解決の糸口が見えない現状に頭を悩ませている。司令官のファルケに心酔している。
- ファルケ
- シェルピンスキーの司令官であるレプリカの女性。黒髪で髪型はロングヘア。司令官室のベッドで眠っている。虚無の世界において「赤目」と呼ばれる何かに接触し、何らかの病に感染する。彼女が感染源となり、それがコリブリユニットによって拡散されたことでシェルピンスキーで病が流行する。シェルピンスキーの手記によれば、前述の何かと接触したことで別の人物の記憶が流入し、自分と他者の分別が付かなくなり、ついには昏睡状態になったとされる。
評価
編集Metacriticスコアは81点となっている[5]。
GAMERS ZONEの小野憲史は本作のゲームシステムを、初期の『バイオハザードシリーズ』や、『サイレントヒル』『メタルギアソリッド』の融合版と表現している。また本作のグラフィックについて、ローファイ3Dと呼ばれる初代PlayStationの3DCG表現に該当すると述べ、この「意図された粗さ」がサバイバルホラーという題材と相まって、プレイヤーの想像力を喚起させることに成功していると語っている。ほかストーリーの特徴を、あえて意図された「混乱したストーリー」と評し、本作は「環境ストーリーテリング」という手法を用いており『新世紀エヴァンゲリオン』と同じくあえて解釈の余地が残されたとしている[6]。
ファミ通のタウラは本作のホラー演出について、ストーリーの状況が掴めず、プレイヤーキャラクターの性格も読み取れず、心細さや疎外感から恐怖心が増していくとしている[7]。
受賞歴
編集脚注
編集- ^ “SIGNALIS”. Humble Games. 2023年3月1日閲覧。
- ^ “SIGNALIS”. PLAYISM. 2023年3月1日閲覧。
- ^ 小野憲史 (2022年12月28日). “『SIGNALIS』2Dからローファイ3Dへ~サバイバルホラーのリスペクトと再生【インディーゲームレビュー 第128回】”. GAMERS ZONE. 2023年3月1日閲覧。
- ^ タワラ (2022年10月27日). “『SIGNALIS』プレイレビュー。気の休まる時間は一切ナシ。静かに迫りくる狂気と直面するおぞましい世界が展開される極上のコズミックホラー”. ファミ通.com. KADOKAWA. 2023年3月1日閲覧。
- ^ “SIGNALIS PC”. METACRITIC, A FANDOM COMPANY.. 2023年3月1日閲覧。
- ^ 小野憲史 (2022年12月28日). “『SIGNALIS』2Dからローファイ3Dへ~サバイバルホラーのリスペクトと再生【インディーゲームレビュー 第128回】”. GAMERS ZONE. GAMERS ZONE. 2023年3月1日閲覧。
- ^ タワラ (2022年10月27日). “『SIGNALIS』プレイレビュー。気の休まる時間は一切ナシ。静かに迫りくる狂気と直面するおぞましい世界が展開される極上のコズミックホラー”. ファミ通.com. KADOKAWA. 2023年3月1日閲覧。
- ^ “SIGNALIS”. Tribeca Enterprises LLC Terms & Conditions. 2023年3月1日閲覧。
- ^ “SIGNALIS”. Les Films du Spectre. 2023年3月1日閲覧。
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