RL-10
RL-10はアメリカ合衆国で初の液体水素燃料のエンジンである。サターンI 型ロケットの2段目であるS-IVに6基が使用された。1または2基のRL-10がアトラスやタイタンの上段のセントールに使用されている。
U.S. Space & Rocket Centerで展示されるRL10 | |
原開発国 | アメリカ合衆国 |
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初飛行 | 1962 (RL10A-1) |
設計者 | プラット・アンド・ホイットニー/MSFC |
開発企業 | プラット&ホイットニー Space Propulsion プラット&ホイットニー ロケットダイン エアロジェット ロケットダイン |
目的 | 上段エンジン |
搭載 | アトラス タイタン デルタIV サターンI |
現況 | 生産中 |
液体燃料エンジン | |
推進薬 | 液体酸素 / 液体水素 |
混合比 | 5.5或いは 5.85:1 |
サイクル | エキスパンダーサイクル |
構成 | |
ノズル比 | 84:1 或いは 280:1 |
性能 | |
推力 (vac.) | 110 kN (25,000 lbf) |
Isp (vac.) | 450 から 465.5秒 (4.413 から 4.565 km/s) |
燃焼時間 | 700 秒間 |
寸法 | |
全長 | 4.14 m (13.6 ft) (ノズル進展時) |
直径 | 2.13 m (7 ft 0 in) |
乾燥重量 | 277 kg (611 lb) |
使用 | |
セントール S-IV DCSS | |
リファレンス | |
出典 | [1] |
補足 | 性能と大きさはRL-10B-2の値 |
歴史
編集RL10は1959年に最初の地上試験が行われ、1963年に初めて打ち上げられた[2]。
RL10原型の仕様
編集推力 : 15,000 ポンド (66.7 kN)
燃焼時間: 470秒
形式: エキスパンダーサイクル
比推力: 433秒 (4.25 kN·s/kg)
重量 - 乾燥重量: 298 lb (135 kg)
全高: 68 in (1.73 m)
直径: 39 in (0.99 m)
ノズル膨張比: 40 to 1
推進剤: LOX & LH2
推進剤流量: 35 lb/s (16 kg/s)
生産メーカー: プラット・アンド・ホイットニー
採用例: サターンI第2段 - 6基
採用例: セントール 1基ないしは2基
現行機
編集RL-10は改良が繰り返されてきた。現行機の一つであるRL-10B-2はデルタIII同様、デルタIVの2段目に使用されている。元のRL-10よりも大幅に性能が向上している。拡張された機能として伸展ノズルの採用が含まれ、軽量化と信頼性を高める為に電気駆動式のジンバルが使用されている。現在、比推力は462秒(噴出速度は4.55km/sに相当)まで高められている。
- RL10B-2[3]
- 推力 (高高度): 24,750 lbf (110.1 kN)
- 形式: エキスパンダーサイクル
- 燃焼時間: 1,152 秒
- 比推力: 462秒 (4.53 kN·s/kg)
- エンジン乾燥重量: 664 lb (301 kg)
- 高さ: 163 インチ (4.14 m)
- 直径: 87 インチ (2.21 m)
- ノズル開口率: 250:1
- 推進剤混合率: 5.88:1
- 推進剤: 液体酸素 - 液体水素
- 推進剤流量: 酸化剤 41.42 lb/s (20.6 kg/s), 燃料 7.72 lb/s (3.5 kg/s)
- 生産メーカー: プラット・アンド・ホイットニー
- 採用例: デルタ III, デルタ IV 第2段 (1基)
RL10B-2燃焼室のろう付けの欠陥がオリオン-3通信衛星を運ぶデルタIIIの打ち上げ失敗の原因として断定された。
- RL10A-4-2
派生型
編集型式 | 現状 | 最初の打ち上げ | 乾燥重量 | 推力 | Isp (vac) | 全長 | 直径 | T:W | O:F | 膨張比 | 燃焼室圧力 | 燃焼時間 | 搭載段 | 備考 |
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RL10A-1 | 引退済 | 1962 | 131 kg (289 lb) | 66.7 kN (15,000 lbf) | 425 s (4.17 km/s) | 1.73 m (5 ft 8 in) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 52:1 | 40:1 | 430 s | セントール A | 試作 [4][5][6] | ||
RL10A-3 | 引退済 | 1963 | 131 kg (289 lb) | 65.6 kN (14,700 lbf) | 444 s (4.35 km/s) | 2.49 m (8 ft 2 in) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 51:1 | 5:1 | 57:1 | 32.75 bar (3,275 kPa) | 470 s | セントール B/C/D/E S-IV |
[7] |
RL10A-4 | 引退済 | 1992 | 168 kg (370 lb) | 92.5 kN (20,800 lbf) | 449 s (4.40 km/s) | 2.29 m (7 ft 6 in) | 1.17 m (3 ft 10 in) | 56:1 | 5.5:1 | 84:1 | 392 s | セントール IIA | [8] | |
RL10A-4-1 | 引退済 | 2000 | 167 kg (368 lb) | 99.1 kN (22,300 lbf) | 451 s (4.42 km/s) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 61:1 | 84:1 | 740 s | セントール IIIA | [9] | |||
RL10A-4-2 | 生産中 | 2002 | 167 kg (368 lb) | 99.1 kN (22,300 lbf) | 451 s (4.42 km/s) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 61:1 | 84:1 | 740 s | セントール IIIB セントール V1 セントール V2 |
[10] | |||
RL10A-5 | 引退済 | 1993 | 143 kg (315 lb) | 64.7 kN (14,500 lbf) | 373 s (3.66 km/s) | 1.07 m (3 ft 6 in) | 1.02 m (3 ft 4 in) | 46:1 | 6:1 | 4:1 | 127 s | DC-X | [11] | |
RL10B-2 | 生産中 | 1998 | 277 kg (611 lb) | 110 kN (25,000 lbf) | 462 s (4.53 km/s) | 4.14 m (13.6 ft) | 2.13 m (7 ft 0 in) | 40:1 | 5.85:1 | 280:1 | 44.12 bar (4,412 kPa) | 700 s | デルタ極低温上段 | [1] |
RL10B-X | 中止 | 317 kg (699 lb) | 93.4 kN (21,000 lbf) | 470 s (4.6 km/s) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 30:1 | 250:1 | 408 s | セントール B-X | [12] | ||||
CECE | 開発中 | 160 kg (350 lb) | 66.7 kN (15,000 lbf) | >445 s (4.36 km/s) | 1.53 m (5 ft 0 in) | 原型実証機 [13][14] | ||||||||
RL10C-1 | 生産中 | 12/2014 | 188 kg (414 lb) | 106.31 kN (23,900 lbf) | 453.8 s (4.398 km/s) | 2.46 m (8 ft 1 in) | 1.57 m (5.2 ft) | 57:1 | 5.88:1 | 130:1 | 2000 | セントールV | [15][16] |
他のRL10を搭載するロケット
編集出力を可変出来るように改良されたRL-10A-5がDC-X、ブルーオリジン・ニューシェパードにも搭載される。
DIRECT version 3.0がアレスIとアレスVシリーズのコモン・コア・ステージの換装として提案され、RL-10を提案されたJ-246とJ-247ロケットの第2段へ採用するように勧められた[17] 。アレスVアース・デパーチャー・ステージと同等の役割を提供する為に提案されているジュピター上段ロケットに最大7基のRL10エンジンが採用される予定である。
RL10の将来の使用
編集2005年、NASAはオリオン宇宙船にアポロのような宇宙船の仕様の提案を採用する事を決めたと発表した。当時、NASAは降下部分として新しい月面連絡モジュール(LSAM)に液体水素と液体酸素を動力として使用する予定だった。当初の計画では上昇段には液化メタンと液体酸素の使用が求められたが、上昇段には現在と同様の液体水素/液体酸素の使用に変更された。液化メタンの使用が検討された背景には将来の火星探査において火星の大気から製造したメタンを使用する為の事前演習の意図があった。
推進剤の選定の条件として赤道軌道から月の極域に宇宙船を着陸する必要があり、NASAはRL10を下降段の主要な動力として使用することを決めた。
現在の仕様では4基のRL10が下降段への使用と1基のRL10が上昇段に使用する事が求められる。現在、デルタIIIとデルタIVで使用されるRL10B-2エンジンは最大出力の20%まで出力を調整できる。月面からLSAMが浮上、円滑に軟着陸する為には新しいRL10は出力を10%まで調整できる必要がある。RL10を使用する事でNASAは既存の機器を使用する事により、有人飛行の為の性能向上の改良にも拘らず経費を低く抑える事を目論む。
共通拡張可能型極低温エンジン
編集共通拡張可能型極低温エンジンCommon Extensible Cryogenic Engine(CECE)はRL10エンジンの出力制御を向上させ、ディープスロットルを実現する為に開発された試験機である。NASAはプラット&ホイットニーとCECE実証エンジンの開発に契約した[18]。2007年、(出力が変動するが)1/11まで出力を調整できる操作性が実演された[19]。2009年、NASAはこの種のエンジンでは記録となる104%から8%までの調整に成功したと報告した。出力の変動は噴射器と推進剤の温度、流量、圧力の制御による推進剤供給システムの改良により解消された[20]。
RD-0146
編集RD-0146はロシアとプラット&ホイットニーとの協力による低温液体燃料ロケットエンジンである。RL-10のロシア版である[21]。RD-0146エンジンはロシアのヴォロネジのキマフトマティキ設計局(KBKhA)がアメリカのプラント&ホイットニー・ロケットダインと協力してできた。2009年にロシア連邦宇宙局は開発中の次世代のPPTS有人宇宙船のRus-Mロケットの2段目にこのエンジンを採用した[22]。
開発
編集1997年、プロトンロケットを生産するクルニチェフ国家研究生産宇宙センターは推力100 kNで高高度で性能を発揮できるノズル伸展式の新しい低温液体燃料ロケットエンジンの開発をキマフトマティキに打診した。ロケットは更新されたプロトンロケットと次世代のアンガラロケットの上段として予定されていた。 1999年、クルニチェフはキマフトマティキにプロトンとアンガラのエンジンとしてRD-0146Uの開発を注文した。開発は部分的にプラット&ホイットニーから資金を調達した。2000年4月7日にプラット&ホイットニーとキマフトマティキはプラット&ホイットニーがRD-0146の国際的に排他的な販売権を取得する事で合意した[22]。
詳細
編集RD-0146は特徴としてロシア初のガス発生器を備えないエンジン(エキスパンダーサイクル)であると同時に非冷却式伸展式ノズルを備えたエンジンでもある。複数回の着火と2軸の推力制御が可能である。開発者によると幸運な事にガス発生器を備えない事により複数回の点火に高い信頼性を確保できるという[23][24][25]。
脚注
編集- ^ a b Mark Wade (17 November 2011). “RL-10B-2”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Sutton, George (2005). History of liquid propellant rocket engines. American Institute of Aeronautics and Astronautics. ISBN 1563476495
- ^ “Delta 269 (Delta III) Investigation Report”. ボーイング. 2008年12月7日閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-1”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Bilstein, Roger E. (1996), “Unconventional Cryogenics: RL-10 and J-2”, Stages to Saturn; A Technological History of the Apollo/Saturn Launch Vehicles, Washington, D.C.: National Aeronautics and Space Administration, NASA History Office 2011年12月2日閲覧。
- ^ “Atlas Centaur”. Gunter's Space Page. 29 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-3”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-4”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-4-1”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-4-2”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10A-5”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ Mark Wade (17 November 2011). “RL-10B-X”. Encyclopedia Astronautica. 27 February 2012閲覧。
- ^ “Commons Extensible Cryogenic Engine”. Pratt & Whitney Rocketdyne. 28 February 2012閲覧。
- ^ “Common Extensible Cryogenic Engine”. 2014年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “Cryogenic Propulsion Stage”. NASA. 11 October 2014閲覧。
- ^ “Atlas-V with RL10C powered Centaur”. 2018年3月27日閲覧。
- ^ “Jupiter Launch Vehicle – Technical Performance Summaries” (html). 2009年6月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月18日閲覧。
- ^ “CECE”. United Technologies Corporation. 2009年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “Throttling Back to the Moon”. NASA (2007年7月16日). 2015年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “NASA Tests Engine Technology for Landing Astronauts on the Moon”. NASA (Jan. 14, 2009). 2018年3月27日閲覧。
- ^ http://www.astronautix.com/engines/rd0146.htm
- ^ a b http://www.russianspaceweb.com/rd0146.html
- ^ KBKhA RD-0146
- ^ RD-0146 Specifications
- ^ [1][リンク切れ]
関連項目
編集外部リンク
編集- “RL-10A-4 fact sheet” (PDF). Pratt & Whitney Rocketdyne. 2012年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月25日閲覧。
- RL10B-2 at Astronautix
- New engine valves installed on Atlas and Delta rockets: Spaceflight Now August 16, 2007
- Landmark launch in rocketry Centaur set for Flight 200: Spaceflight Now February 9, 2012