Quora
Quora(クオーラ)は、ユーザーコミュニティで作成、編集、運営を行うナレッジコミュニティ・Q&Aサイトである。2009年6月に会社を設立し、2010年6月21日にウェブサイトを立ち上げた[3]。
企業形態 | プライベート |
---|---|
本社 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州マウンテンビュー |
事業地域 | 世界 |
創業者 |
アダム・ディアンジェロ チャーリー・シーヴァー |
主要人物 | アダム・ディアンジェロ (CEO) |
従業員数 | 50人[1][2] |
ウェブサイト | quora.com |
種類 | ナレッジマーケット |
登録 | 必要 |
対応言語 |
英語(2010年) スペイン語(2016年) フランス語・イタリア語・ドイツ語・日本語(2017年) |
開設 | 2009年6月 |
現況 | 現行 |
質問と回答の収集を行なっており、ユーザーは質問の編集を提案することで協働作業が可能になっている[4]。主な競争相手はredditのようなソーシャルブックマークサイト、ChaChaのようなソーシャル・ネットワーキング・サービス、そして数多くのQ&Aサイトである。
2017年9月26日、日本語版のβ版が公開[5]。同年11月14日、正式にスタートした[6][7]。欧米圏以外に向けたサービス提供はこれが初の事例である。
理念
編集Quoraでは投稿された質問は質問者個人のものではなくコミュニティの共有物とみなしている。したがって、Yahoo!知恵袋やOKWAVEなどといった他のQ&Aサイトとは異なり、第三者が質問を編集することができる[8]。
「BNBR:Be Nice, Be Respectful(いつも思いやりと敬意を示すこと)」はQuoraの基本方針を端的に表した標語である[9]。
以前は利用には実名登録が必要だったが、この規定は2021年3月28日に緩和され、実名以外のハンドル名の使用が許可されるようになった[10][11]。
歴史
編集かつてFacebookに勤務していたアダム・ディアンジェロとチャーリー・シーヴァーとの共同で設立された。ディアンジェロは、2010年1月にQuoraを立ち上げるためにFacebookを退職している[12]。ディアンジェロは、自身とシーヴァーがQuoraを立ち上げた理由は「インターネット上ではどの分野だろうと疑問や答えが大量のサイトにあると考えたけど、未だに誰かが主導して本当に良かったものを構築する人が居なかったから」と述べている[13]。2010年12月においてQuoraのユーザー数が急増を見せた[14]。
2011年1月時点で、Quoraの登録ユーザー数は、推定50万人であった[15]。2011年6月、Quoraはサイトをリニューアルし、インフォメーションディスカバリーを作成し、ナビゲーションを容易にしたが、ウィキペディアに酷似している点があると指摘された[16]。2011年9月29日にiPhone対応の[17]、2012年9月5日にAndroid対応の公式アプリケーションを公開した[18]。
2012年9月、共同設立者のチャーリー・シーヴァーは、企業顧問としての肩書きを保持するものの、日常的な業務からは退くことを発表した[19][20]。
2013年1月、Quoraは、ブログプラットフォームを立ち上げた[21][22]。
2023年2月4日、対話型人工知能のユーザーインターフェイスの Poe を一般公開した[23]。様々なチャットAIのエンジンに対応している。2023年3月15日、有料サービスを開始し、OpenAIのGPT-4とAnthropicのClaude+にも対応した[24]。
運営
編集Quoraを使用するには、ハンドルネームではなく実名での登録が必要である。また、自身のTwitterやFacebookアカウントをQuoraのアカウントとしてリンク/ログインすることができる。Quoraのコミュニティには、スティーブ・ケース、マーク・アンドリーセン、ダスティン・モスコビッツ、ジミー・ウェールズ、ジャスティン・トルドー、アシュトン・カッチャーといった著名人も参加している[15][25][26][27]。Quoraユーザーの最大グループは、ニューヨークに続いてシリコンバレーに位置している[12]。
Quoraは、解答のランク付けに使用する独自のアルゴリズムを開発しているが、PageRankと同じような動作をする[28]。ウェブサイトを動かすサーバーの管理には、Amazon Elastic Compute Cloudの技術が使用されている[29][30]。2011年8月、改善のために、インフラに使用しているPython実装をCPythonからPyPyに切り替えた[31]。
プライバシー問題
編集2012年8月、ブロガーのイヴァン・キリギンは、知人がどんな質問を見ていたかで、知人の行動を監視することが可能であったと指摘した[32]。
投資
編集2010年3月、ベンチマーク・キャピタルがスタートアップとしての価値を8600万ドルと見積もった上で、Quoraに1100万ドルを投資した[33]。2011年2月、ビジネスインサイダーによれば、Quoraの企業価値は、1億ドルを超えているのではないかと噂され[34]、公開会社でない株式会社として3億ドルの買収提案を断ったとされる[35]。
2012年5月、Quoraは、企業価値が4億ドル以上と見積もったシリーズB投資で、5000万ドル増資した[36][37][38]。そのことで、投資額の総額は、6100万ドルになった。共同設立者のディアンジェロは、Facebook株の0.8%を所有しているが、B投資で私財から2000万ドル投資したとしている。
評価
編集Quoraは、ニューヨーク・タイムズ、USAトゥデイ、TIME、デイリー・テレグラフに賞賛記事が掲載された[39][40][41][42]。
ロバート・スコブルによれば、Quoraは、Twitter、Facebook、Google Waveやユーザーがコンテンツに投票するシステムをベースにしている同様のウェブサイトの性質を組み合わせることに成功しているという[43]。しかし、スコブルは、後に「ブログとして恐ろしいサービス」と批判するものの、 競争相手より実質的ではないが良いまともなQ&Aサイトであると評している[44]。デイリー・テレグラフは、Quoraが規模でTwitterを抜くであろうと予測した[42]。また、ニューヨーク・タイムズも、QuoraをAirbnb、Dropboxと共に次世代のマルチビリオンダラースタートアップと評した[45]。
2010年、ディアンジェロとシーヴァーは、CNNMoneyの「smartest people in the tech(→テクノロジーにおける最もスマートな人達)」という記事で「Smartest Engineer runner-up(→最もスマートな技術者の次点)」と称された5人のうちの2人として[46]、Inc.による「'Top 30 Under-30」の2011年起業家リストにそれぞれ入った[47][48]。
Quoraは、携帯機器でモバイルアプリケーションを使ってブラウズすることに力を入れている[49]。
中国共産党によるプロパガンダツールとして
編集2018年、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」は、対外宣伝工作活動でQuoraを利用することの重要性を主張する記事を掲載した。この記事では、従来の中国の公的な情報発信は逆効果になることも多かったが、Quoraは個人ユーザー主体の情報発信であり、米国に次いで中国関連の質問が多く、ログインする必要がない上に他プラットフォームにリンクされやすくて注目度が高く、中国人留学生、華僑、元中国駐在員が、より現地の市井の人の視点と感覚に合わせて情報を発信できるため、欧米の強固な言論を突破して「本当の中国」を発信にするのに最適であるとしている。また外国人がQuoraに参加し中国の主張を広めることを奨励するべきとも主張している。チベット、新疆、台湾、香港、南シナ海問題、中国の人権、中国の環境と健康と家族計画問題、知的財産権の侵害、中国人観光客のマナー問題などを市民的な言説により和らげることが急務であると主張している。この際、Quoraの利用者層は若年層が多いので若者の表現方法に気を配るべきとしている。また中国側の回答の閲覧数を増やすために、Quoraが回答を推薦する際のアルゴリズムが判断材料にしている「関連性がある、わかりやすい、論理的、事実が正しい、参照性が高い」といった文章的な特徴を持つ回答を書く重要性を説き、その一例として「なぜ中国人はいまだに南京大虐殺にこだわるのか?」という質問に「南京大虐殺を否定することはできない」と答えて情報発信につなげた事例があげられている[50][51][52]。
脚注
編集- ^ quora.com
- ^ “How many people work at Quora? Who are they?” (Feb 5, 2012). Feb 5, 2012閲覧。
- ^ Quora’s Highly Praised Q&A Service Launches To The Public (And The Real Test Begins)
- ^ Wortham, Jenna (March 12, 2010). “Facebook Helps Social Start-Ups Gain Users”. New York Times March 29, 2010閲覧。
- ^ “実名制Q&Aサイト「Quora」日本語版β公開”. ITmedia NEWS. (2017年9月17日) 2022年8月13日閲覧。
- ^ “実名制Q&Aサイト「Quora」日本語版スタート”. ITmedia NEWS. (2017年11月14日) 2022年8月13日閲覧。
- ^ “知識共有プラットフォーム「Quora(クォーラ)」、日本語でのサービスを開始”. PRTIMES. (2017年11月14日) 2022年8月13日閲覧。
- ^ Quoraに質問を投稿する際の主なポリシーとガイドラインは何ですか?
- ^ Quoraの「BNBR:いつも思いやりと敬意を示すこと」という基本方針とはどんな規定ですか?。ユーザーはこの規定に沿った行動を期待される
- ^ より多くの方がQuoraに参加できるようにモデレーション方針が変更されます
- ^ Quoraのプロフィール名の規定について教えてください。
- ^ a b Why I Quit My CTO Job At Facebook And Started Quora, Business Insider March 29, 2010閲覧。
- ^ The Mystery Behind Quora, Boston Innovation March 29, 2010閲覧。
- ^ “Quora Signups Explode” (November 28, 2010). January 24, 2011閲覧。
- ^ a b Arthur, Charles; Jemima Kiss (5 January 2011). “Quora: the hottest question-and-answer website you've probably never heard of”. The Guardian 31 May 2012閲覧。
- ^ techcrunch.com
- ^ “Announcing Quora for iPhone and iPod touch - Gallimaufry”. Quora. 2012年2月12日閲覧。
- ^ “Introducing Quora for Android”. Quora. 2012年10月5日閲覧。
- ^ Cutler, Kim-Mai (2012-09-11), Quora Co-Founder Charlie Cheever Steps Back From Day-To-Day Role At The Company
- ^ What is Charlie Cheever's status at Quora as of September 11th, 2012?, Quora
- ^ Tay, Kah Keng (2013年1月23日). “Introducing Blogs on Quora”. Quora. 2013年2月1日閲覧。
- ^ Constine, Josh (2013年1月23日). “Quora Launches Blogging Platform With Mobile Text Editor To Give Every Author A Built-In Audience”. TechCrunch. 2013年2月1日閲覧。
- ^ Poe - The Quora Blog - Quora
- ^ Poe subscriptions: access GPT-4 and Claude+ - The Quora Blog - Quora
- ^ linkedmediagroup.com
- ^ fastcompany.com
- ^ Taber, Jane (October 19, 2011). “Quora offers clues as to why Justin Trudeau won't yet seek Liberal helm - The Globe and Mail”. The Globe and Mail (Toronto)
- ^ Quora's New Algorithm for Ranking Answers, ReadWriteWeb March 29, 2010閲覧。
- ^ “Quora Signups”. ReadWriteWeb. March 29, 2010閲覧。
- ^ Lohr, Steve (April 22, 2011). “Amazon Malfunction Raises Doubts About Cloud Computing”. The New York Times
- ^ Gaynor, Alex (August 12, 2011), Quora is now running on PyPy, Quora
- ^ This is a bit fucked, Quora.
- ^ “Benchmark Invests at $86 Million Valuation”. TechCrunch. March 29, 2010閲覧。
- ^ “Quora Investor Scoffs At $1 Billion Offer Price”. July 17, 2012閲覧。
- ^ “Get Ready For A Huge Quora Round”. July 17, 2012閲覧。
- ^ “Former Facebook Hands Capitalize on Buzz”. Wall Street Journal. July 17, 2012閲覧。 “Quora raised $50 million in a new financing that values it at $400 million, up from a valuation of around $86 million two years ago, said people familiar with the matter. The new financing round is led by Facebook board member Peter Thiel, who invested with his own personal funds”, May 15, 2012
- ^ Facebook Alums Push Q&A Site Quora. Wall Street Journal. 15 May 2012.
- ^ Quora (company): What will Quora do with the $50 million in funding it just received?
- ^ “V.C.’s Answer Yes to Quora”. Nytimes.com. (March 30, 2010) March 29, 2010閲覧。
- ^ Baig, Edward C.. “Social-networking site Quora has answers to your questions”. USA Today March 29, 2010閲覧。
- ^ “Is Quora the Next Red-Hot Web Start-Up”. Time.com March 29, 2010閲覧。
- ^ a b Yiannopoulos, Milo. “Quora will be bigger than Twitter”. London: Telegraph March 29, 2010閲覧。
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- ^ “Why I was wrong about Quora as a blogging service...”. Scobleizer (January 30, 2011). August 9, 2011閲覧。
- ^ The New Start-Ups at Sun Valley
- ^ CNN 2010 Smartest People in Tech
- ^ Top 30 Under 30, 2011, inc.com
- ^ Honoree Profiles for C.Cheever, A.D'Angelo, Top 30 Under 30, 2011, inc.com
- ^ I'd like to use the web my way, thank you very much Quora. - Scott Hanselman
- ^ 利用海外问答平台Quora改善国际传播效果 1 人民日報 2018年12月18日
- ^ 利用海外问答平台Quora改善国际传播效果 2 人民日報 2018年12月18日
- ^ 利用海外问答平台Quora改善国际传播效果 3 人民日報 2018年12月18日
外部リンク
編集- 公式ウェブサイト
- Quora 日本語版 (@QuoraJP) - X(旧Twitter)
- Kenn Ejima (@kenn) - X(旧Twitter)(江島健太郎・日本版最高技術責任者)