MTV (ボディアーマー)
MTV(Modular Tactical Vest、モジュラー・タクティカル・ベスト)は、アメリカ海兵隊で2006年から採用されているボディアーマーである[1]。
インターセプターボディアーマー(IBA)の後継として開発され、防御力の向上やクイックリリースシステム(後述)の採用などを特徴としている。
概要
編集アメリカ海兵隊では、アメリカ同時多発テロ事件以降のアフガニスタン戦争やイラク戦争のような対テロ戦争の戦訓から、IBAよりも防御力と機能性の高いボディアーマーの開発に着手した。結果、約20社の競合企業の中からデザインを担当するTAG社、製造を担当するPPI社の2社が選定され、2006年にMTVとして採用された[1]。
大きな期待を受けて採用されたMTVであったが、現場の兵士からの評判は極めて悪く、「重すぎて非実用的で機動性に欠ける」、「熱が篭り暑すぎる」、「プルオーバー型で着用時に顔や耳を傷つける」などの苦情が支給と同時に発生した[1]。それを受けた海兵隊は2008年にMTVの調達を中止する決定を下し、わずか2年でMTVの調達は中止されることとなった[1]。このような事態に対して海兵隊は、より軽量なSPCの配備を行うとともに機能性を改善した新型のMTVである「IMTV」の開発を決定し、これに対処している[1]。
性能・機能
編集- 防御力
- 全体に対拳銃弾・対砲弾片用のソフトアーマーが内蔵されているほか、前面と背面および脇腹に対小銃弾用のSAPIプレート(トラウマプレート)を挿入することが可能な設計になっている。
- IBAでは脇腹のプレート用ポケットはオプション装備であったが、MTVでは両側面のカマーバンド部分にポケットが標準装備されている。首を守るカラーアーマーや鼠蹊部を守るグローインアーマーも標準装備となっている。
- 重量
- 総重量は30ポンドに達しており、非常に重いため、より軽量なSPCと任務に応じて使い分ける方式が採用されている。
- クイックリリース機能
- クイックリリースとは、落水時や負傷時にプルタブを引くことによりボディアーマーの各パーツを連結しているワイヤーが引き抜かれることで瞬時にアーマーが分解される機能である。
- 1999年12月に発生したヘリコプター海上墜落事件で7名の兵士がボディアーマーを脱げずに溺死した教訓から開発されたシステムであり、2000年代初頭から特殊部隊向けのアーマーなどで採用されていたが、海兵隊の一般部隊向けに採用されたのはMTVが初であった。[2]