Inkscape
Inkscape(インクスケープ)はオープンソースで開発されているベクター画像編集ソフトウェア(ドローソフト)。
Inkscape 1.3 | |
開発元 | The Inkscape Team |
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最新版 | 1.4[1] - 2024年10月13日 |
リポジトリ | |
プログラミング 言語 | C++(gtkmmを使用) |
対応OS | クロスプラットフォーム |
種別 | ベクター画像編集ソフトウェア |
ライセンス | GNU GPL |
公式サイト |
inkscape |
概要
編集InkscapeはXML、SVG、CSS などの標準に完全に準拠したグラフィックツールとなることを目標としている。クロスプラットフォームなソフトウェアであり、Linux、Unix系オペレーティングシステム (OS)、macOS、Windows などで動作する。
開発の主体はLinuxで行われている。今後 SVG、CSSの標準への準拠をさらに完全にしていくことが可能で、それにはSVGアニメーションの対応も含まれる。現在も活発に開発中であり、新しい機能が定期的に加えられている。
歴史
編集Inkscapeは、2003年にベクター画像編集ソフトSodipodiのフォークとしてスタートした。元となったSodipodiは2004年2月のバージョン 0.34 より事実上開発が停止している[2][3]。さらにそのSodipodiはGill (Gnome Illustration app[4])という、ラファエル・レヴィーン(Raph Levien)が書き1999年にスタートしたドローソフトのフォークである。
Sodipodiの開発者であったTed Gould、Bryce Harrington、MenTaLguYが、プロジェクトの目的の差異、外部からのコントリビューションに積極的でないこと、技術的な意見の差異などから、2003年にSodipodiから分かれてInkscapeプロジェクトを立ち上げた。彼らはSVGの完全準拠を目的にすることにした。
開発はトップダウン方式ではなく、多くの開発者が平等かつ活発に参加する方式を取っている。このような方式であるために多くの新規開発者が加わった。SodipodiはGIMPに似たControlled Single Document Interface (CSDI) を採用していたが、開発者の一人のBulia Byakは、現在のInkscapeのユーザインタフェースのアーキテクチャを作成した。
Inkscapeは元のSodipodiのコードに対して数多くの変更が加えられている。例えば、開発言語をCからC++に変えたこと、GTKベースからそのC++バインディングであるgtkmmベースに変えたこと、ユーザインタフェースをデザインしなおして改善したこと、そのほか数多くの新機能を追加したことなどである。
リリース履歴
編集Sodipodiのリリースについては示さず、フォーク後のInkscapeのみ以下に示す。
バージョン | リリース日 | 備考 |
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0.35 | 2003年10月14日 | Inkscapeの最初のリリース。この時点ではSodipodiからのフォーク直後であり、非常に類似したソフトであった。 |
0.36 | 2003年12月11日 | メニューバーやツールバーをドキュメントウィンドウごとにあるユーザインタフェースに変更した。 |
0.37 | 2004年2月10日 | パスのインセットやアウトセット、論理演算 (boolean operator) を追加した。 |
0.38.1 | 2004年4月8日 | バグフィックスの他、テキストのカーニングやトラッキングや多段グラデーションのサポートの他、使い勝手を向上させた。 |
0.39 | 2004年7月15日 | Pango を使った最初のリリースで他言語の取り扱いがよくなった。また、マーカーやクローンやパターンをサポートした。 |
0.40 | 2004年11月28日 | レイヤーやビットマップ画像のトレース機能やテキストをパスに乗せる機能を追加。 |
0.41 | 2005年2月10日 | グリッド配置やカラートレースを追加。 |
0.42 | 2005年7月24日 | テキストのフロー配置(テキストをフレームに挿入)を追加。テキストスパンのサポート。グラデーションツールを新しくした。 |
0.43 | 2005年11月19日 | コネクターツール、ホワイトボード機能の追加。タブレットのサポート、ノードツールの使い勝手を向上した。 |
0.44 | 2006年6月22日 | レイヤダイアログ、クリッピング、マスキングのサポート、透過 PDF 出力の改善。OpenDocumentフォーマットのエクスポートに対応。 |
0.45 | 2007年2月5日 | ガウスぼかしのサポート。 |
0.45.1 | 2007年3月23日 | バグフィックスとユーザインタフェースの翻訳の改善。 |
0.46 | 2008年3月24日 | |
0.47 | 2009年11月24日 | 自動保存、スペルチェッカー機能の追加。フィルタの追加。PS、EPS出力の改善。 |
0.48 | 2010年8月23日 | スプレーツール、マルチパス編集、上付き・下付きなどのテキスト関連の強化。 |
0.91 | 2015年1月30日 | レンダリングエンジンcairoの採用、OpenMPによるマルチスレッド処理への対応、テキストツールの改良、ものさしツール、タイプデザイン機能、シンボルライブラリとVisioステンシルのサポート、WMF/EMFのインポートおよびエクスポート、実世界での単位(ミリメートルなど)のサポート、メモリ消費量の大幅な減少、反応性の向上、他[5] |
0.92 | 2017年1月4日 | SVG2、CSS3への対応の改善[6]。 Inkscapeのデフォルト解像度を90dpiから96dpiに変更[6]。 |
0.92.3 | 2018年3月22日 | 双方向テキストに対応[7]。 windowsユーザーに対する起動パフォーマンスの改善[7]。 |
0.92.4 | 2019年1月17日 | 安定性の向上、バグ修正[8][9] |
0.92.5 | 2020年4月9日 | 安定性の向上、バグ修正、エクステンションを Python 2 と 3 で互換[10][11] |
1.0 | 2020年5月4日 | 安定版リリース[12] |
1.1 | 2021年5月24日 | 新しい起動時ウィンドウ、コマンドパレット、ノードツール時でのパスのコピー及びペースト、ダイアログの新しいドッキングシステム、画像のエクスポート(PNG/JPEG/TIFF/WebP)、機能拡張マネージャー(ベータ版)など[13]。 |
1.1 | 2021年5月24日 | コアとGUIに目立つ改訂、サポートはPython 3拡張機能に限定、ライブパスエフェクト改善 (LPE)[14][15][16]。 |
1.1.1 | 2021年9月27日 |
バグ修正及び GUI の改善[17]。 |
1.1.2 | 2022年2月5日 | |
1.2 | 2022年5月16日 | 複数ページ対象のページツール、編集可能なマーカとダーシのパターン、レイヤとオブジェクトのダイアログを統合、オブジェクトの位置合わせと移動に複数の改善、gradient 編集のオプション追加、エクスポートのオプション追加により対象に複数のファイル形式を指定可能、SVG フォントエディタの改善、タイリングに新しいライブパス効果、パフォーマンス改善、バグ修正、GUI の改善[20][21]。 |
1.2.1 | 2022年7月14日 | バグ修正その他改善[22]。 |
1.2.2 | 2022年12月5日 | バグ修正その他改善[23]。 |
1.3 | 2023年7月23日 | シェイプ ビルダー キャンバス上にシェイプを構築するためのツール (ブール ツール)、フォントコレクション、パターンエディター、「ドキュメントリソース」ダイアログ、完全非同期のマルチスレッドレンダリングによるパフォーマンスの向上、LPE ダイアログの再設計、キャンバス上のパターン編集の改善、PDFインポートの改善、ページの余白と裁ち落とし、[レイヤーとオブジェクト]ダイアログの検索、不透明度、ブレンド モードと、オプションの永続スナップ バーが復活、XML エディターでの構文の強調表示、バグ修正[24]。 |
凡例 サポート終了 サポート中 現行バージョン 最新プレビュー版 将来のリリース |
USBメモリなどの上で動作可能なポータブルアプリケーションとしてInkscape Portableも開発されている。
Adobe Illustrator の代替ソフトとして
編集Adobe Illustrator の代替ソフトとして紹介されることも多い。入門書は多く、ウェブデザインなどの用途に限定すれば代替になりうる。
一方で、印刷物の作成を目的として作られたソフトではないため、商業印刷では完全な代替にはならない。ほかに次のような違いがある。
関連書籍
編集- 水上淳嗣『Inkscapeパーフェクトガイド』晋遊舎〈100%ムックシリーズ〉、2007年。NCID BA83241788
- Inkscapeマスターテクニック : 無料グラフィックソフトを極める!! 晋遊舎〈100%ムックシリーズ〉、2011年。NCID BB06499724
- Kome;DO NOT EAT・第二I/O編集部『「GIMP」「Inkscape」ではじめるグラフィック&フォトレタッチ : フリーソフトで本格的な「素材制作」&「写真加工」!』工学社〈I/O books〉、2011年。NCID BB07141103
- 羽石相 『無料で使えるベクターグラフィック Inkscapeスタートブック』 秀和システム、2012年3月20日、NCID BB09366975
- 大西すみこ・小笠原種高・羽石相 『できるクリエイター Inkscape独習ナビ Windows&Mac対応 できるクリエイターシリーズ』 インプレス〈できるクリエイターシリーズ〉、2016年9月26日。NCID BB22388564
- 羽石相『無料で使えるイラストソフトInkscapeスタートブック』秀和システム、2017年。NCID BB23266096
- 飯塚将弘 『すぐに作れる ずっと使える Inkscapeのすべてが身に付く本』 技術評論社、2019年6月17日
脚注
編集- ^ "Inkscape launches version 1.4, with powerful new accessible and customizable features"; 閲覧日: 2024年10月13日.
- ^ Sodipodiのメーリングリストの過去ログ[リンク切れ]
- ^ “Message Not Found [メッセージが見つかりません]”. web.archive.org. SourceForge.net (2005年1月20日). 2022年4月4日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “SVG in Gnome”. www.levien.com. 2009年2月2日閲覧。
- ^ Release notes/0.91/ja、2015年2月2日版
- ^ a b 公式サイト - Inkscape Version 0.92 is Released!
- ^ a b 公式サイト - Announcing the 0.92.3 Release of Inkscape
- ^ “Inkscape launches versions 0.92.4 and 1.0 alpha!”. The Inkscape Project (2019年1月17日). 2019年1月18日閲覧。
- ^ “Download Inkscape 0.92.4 | Inkscape”. 2019年1月18日閲覧。
- ^ “リリースノート”. web.archive.org (2021年6月20日). 2021年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月23日閲覧。 “The release notes draft for Inkscape 0.92.5 is available on the Inkscape Wiki.”
- ^ “Release notes/0.92.5 - Inkscape Wiki”. wiki.inkscape.org. 2020年5月4日閲覧。
- ^ “Introducing Inkscape 1.0”. inkscape.org. 2020年5月4日閲覧。
- ^ “Release Notes: Inkscape 1.1”. Inkscape. 2021年7月17日閲覧。
- ^ “Release notes/1.1 - Inkscape Wiki”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Download Inkscape 1.1”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Welcome to Inkscape 1.1!”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Release notes/1.1.1 - Inkscape Wiki”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Release notes/1.1.2 - Inkscape Wiki”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Inkscape 1.1.2, 1.2 alpha released, About Screen Contest and Other Exciting News!”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Release notes/1.2 - Inkscape Wiki”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Download and Test Inkscape 1.2 Beta”. 2022年6月23日閲覧。
- ^ “Release notes/1.2.1 - Inkscape Wiki”. 2023年8月24日閲覧。
- ^ “Release notes/1.2.2 -Inkscape Wiki”. 2023年8月24日閲覧。
- ^ “Release notes/1.3 -Inkscape Wiki”. 2023年8月24日閲覧。
関連項目
編集- Adobe Illustrator
- CorelDRAW
- OpenDocumentをサポートするアプリケーションの一覧
- Scalable Vector Graphics (SVG)
- Open Clip Art Library - Sodipodiは世界の国旗などのSVGクリップアートコレクションを開始した。その作業がOpen Clip Art Libraryの発祥の一因となった。
- GIMP - オープンソースで開発されているペイントソフト
- LibreOffice - オープンソースで開発されているオフィスソフト
- ペイントソフト