illumos
illumosは一部が自由かつオープンソースなUnixオペレーティングシステムである[3]。illumosはOpenSolarisをベースとしており、オラクル (企業)がOpenSolaris開発を終了した後の2010年から開発されている。illumosはカーネル、デバイスドライバ、システムライブラリ、そしてシステム管理用ユーティリティソフトウェアから構成され、Linuxカーネルが様々なLinuxディストリビューションで使われるように[4]、illumosの中核部は様々なオープンソースillumosディストリビューションのベースとなっている[5]。
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開発者 | illumos Foundation |
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プログラミング言語 | C |
OSの系統 | Unix (SVR4)[1] |
開発状況 | 開発中 |
ソースモデル | バイナリ・ブロブを含むオープンソース |
初版 | 2010年 |
リポジトリ | |
使用できる言語 | 英語 |
プラットフォーム | IA-32、x86-64、SPARC、ARM(開発中)[2]、DEC Alpha |
カーネル種別 | モノリシック |
ライセンス | CDDL, BSD, MIT |
先行品 | OpenSolaris |
ウェブサイト |
illumos |
名前
編集illumosのメンテナーはillumosと冒頭を大文字にせず全て小文字で表記している[6]が、これはコンピュータフォントの中には小文字のLと大文字のiを明確に区別できないものが存在するからである(ホモグリフを参照)[7]。illumosという名前は、ラテン語で光を表す単語のilluminareと、Operating SystemのOSを合わせたものである[8]。
歴史と開発
編集illumosは2010年8月3日のウェビナー[9]上で、Solarisの中核的な技術者集団によりOpenSolarisのクローズドソースの部分をオープンな実装に置き換えることで真にオープンソースなSolarisを開発しようというコミュニティ活動として発表された[10][11][12]。OpenSolaris自体はSystem V Release 4 (SVR4)とBerkeley Software Distribution (BSD) をベースとしている。
当初の計画では、illumosはディストリビューションやフォークにはならないと明言されていた。だがオラクルがOpenSolarisの打ち切りを発表した後、Solaris ONカーネル[注釈 1]の最終バージョンをillumos独自のカーネルとして発展させるためフォークすることが計画された[13]。クローズドでプロプライエタリなコードを含まずにSolarisライクなOSを作成するため、2010年時点においてはlibc、NFSロックマネージャ、暗号化モジュール、そして多数のデバイスドライバに労力が割かれた。2012年時点においては旧来のコンパイラであるStudioからGCCへの移行するなどに力が注がれた[14]。現在、illumosの「ユーザーランド」ソフトウェアはGNU makeでビルドされ[15]、それらのソフトウェアにはGNU tarなどのGNUユーティリティが多く含まれている。ある時点[要説明]において、illumosは創設者であるGarrett D'Amoreと、Bryan CantrillやAdam Leventhalといった他のコミュニティメンバーや開発者からなる開発者評議会 (Developers' Council) によって緩やかに率いられていた[16]。
2019年時点において、第一の開発プロジェクトであるillumos-gateは、Solarisのカーネル、ドライバ、中核的なライブラリ、および基本的なユーティリティを含むOS/Net(ONとして知られている)の派生であり[17]、これらはBSDの "src" ツリーで提供されているものと同様である。元々はOpenSolarisのOS/Netに依存していたが、オラクルがSolarisの開発を黙ってクローズし、OpenSolarisプロジェクトを非公式に終了させたのちにフォークされた[18][19][20]。
特徴
編集- ZFS:非常に大容量なストレージのための高いデータ完全性を提供する、統合論理ボリュームマネージャを兼ね備えたファイルシステム。
- Solaris Containers(またはZones):x86およびSPARCシステムのための低オーバーヘッドなOSレベル仮想化技術[要説明]。
- DTrace:カーネルやアプリケーションの問題を運用中のシステムにおいてリアルタイムで解決するための包括的な動的トレースフレームワーク。
- Kernel-based Virtual Machine (KVM):仮想化基盤。ハードウェア仮想化支援技術を有するプロセッサにおいてネイティブ仮想化が可能。
- OpenSolaris Network Virtualization and Resource Control(またはCrossbow):内部ネットワーク仮想化とQoSを提供する機能のセット。仮想NIC (VNIC) 疑似ネットワークインタフェース技術、排他的IPゾーン、帯域マネージメント、インタフェース単位またはVNIC単位のフロー制御が含まれる。
ディストリビューション
編集illumos.orgに列挙されたディストリビューションを以下に示す[21]:
- DilOS:Debianパッケージマネージャ(dpkg + apt)と仮想化をサポートする。x86-64およびSPARCで利用可能[22]。
- NexentaStor:仮想化、ストレージエリアネットワーク (SAN)、ネットワークアタッチトストレージ (NAS)、およびZFSファイルシステムを用いるiSCSIやファイバーチャネルアプリケーションに最適化されたディストリビューション。
- OmniOS Community Edition:サーバークラスのシステムのための最小限パッケージのディストリビューション[23]。
- OpenIndiana:OpenSolarisオペレーティングシステムのフォークであり後継であるとされているディストリビューション。
- SmartOS:KVMによる統合を用いたクラウドコンピューティングのためのディストリビューション。
- Tribblix:現代のコンポーネントを搭載したレトロスタイルディストリビューション。x86-64とSPARCで利用可能[24]。
- v9os:サーバ限定で、IPSベースの最小SPARCディストリビューション[25]。
- XStreamOS:インフラ、クラウド、およびウェブ開発のためのディストリビューション[26]。
開発終了したディストリビューションを以下に示す:
- Dyson:libcとService Management Facility (SMF) initシステムを利用するDebian派生。
- OpenSXCE:IA-32/x86-64 x86プラットフォームとSPARC用の開発者とシステム管理者向けディストリビューション[27]。
Illumos Foundation
編集illumos Foundationは2012年にカリフォルニア州で501(c)(6)業界団体として法人組織化され、Jason Hoffman(元Joyent)、Evan Powell(ネクセンタ・システムズ)、Garrett D'Amoreが理事を務めた。2024年現在、illumos Foundationはカリフォルニア州において「解散」状態となっている[28]。
脚注
編集- ^ Solarisカーネルの中心とされた「OS/Network」統合(プロジェクト)
出典
編集- ^ “Open Brand”. www.opengroup.org. 2025年2月20日閲覧。
- ^ Clulow, Joshua (25 October 2012). “Raspberry Pi Bring-Up”. illumos Foundation. 13 July 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2013閲覧。
- ^ “Building illumos”. illumos.org. 2023年8月31日閲覧。
- ^ Blankenhorn, Dana. “What Illumos is and is not”. ZDNet. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “Distributions”. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “FAQ”. illumos. 2 May 2020閲覧。
- ^ Mustacchi, Robert (2015年9月5日). “Linux to SmartOS cheatsheet, after smartos-discuss vetting, sans deritus [sic]. by cwvhogue - Pull Request #217”. GitHub. 2021年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月20日閲覧。
- ^ “Announcement”. illumos.org (2018年6月15日). 2025年2月20日閲覧。
- ^ D'Amore, Garrett (3 August 2010). “illumos - Hope and Light Springs Anew - Presented by Garrett D'Amore”. illumos.org. 3 August 2010閲覧。
- ^ “Whither OpenSolaris? illumos Takes Up the Mantle” (20 November 2012). 26 September 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月20日閲覧。
- ^ Ghostarchiveおよび Wayback Machineにおける以下のページのアーカイブ:“OpenIndiana, Illumos, and the OpenSolaris Community (Part 1)” (5 May 2011). 2025年2月20日閲覧。
- ^ D'Amore, Garrett (27 October 2010). “New illumos logo”. 14 November 2013閲覧。
- ^ D'Amore, Garrett (13 August 2010). “The Hand May Be Forced”. 14 November 2013閲覧。
- ^ https://www.openindiana.org/documentation/faq/#how-does-openindiana-differ-from-opensolaris Archived 13 May 2021 at the Wayback Machine. "Oracle’s Sun Studio has been replaced with the open source GNU GCC compiler."
- ^ “OpenIndiana/oi-userland”. GitHub (28 October 2021). 2025年2月20日閲覧。
- ^ Straughan, Deirdré (16 May 2012). “illumos Developers' Council Meeting”. illumos.org. 10 July 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。13 August 2012閲覧。
- ^ “os-net-skeleton”. bitbucket.org. 29 July 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月29日閲覧。
- ^ “Oracle staff report big layoffs across Solaris, SPARC teams” 2019年7月29日閲覧。
- ^ “OpenSolaris axed by Ellison” 2019年7月29日閲覧。
- ^ “illumos sporks OpenSolaris” 2019年7月29日閲覧。
- ^ “Distributions - illumos”. illumos.org. 2025年2月20日閲覧。
- ^ “DilOS”. www.dilos.org. 21 February 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月26日閲覧。
- ^ “OmniOS CE”. omniosce.org. 2017年9月10日閲覧。
- ^ “Tribblix”. www.tribblix.org. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “v9os”. milax.fi. 2017年12月13日閲覧。
- ^ “XStreamOS”. Sonicle. 2021年3月4日閲覧。
- ^ “OpenSXCE”. www.opensxce.org. 26 February 2016閲覧。
- ^ State of California Department of Justice, Office of the Attorney General. Registry of Charities and Fundraisers. Accessed December 17, 2024.