HD 80606とHD 80607

おおぐま座の連星系
HD 80606から転送)

HD 80606とHD 80607は、おおぐま座の方向に約190光年の位置にある2つのG型主系列星から成る連星系である。2つの恒星は約1,200天文単位離れて、お互いの周りを回っている[1]。主星が HD 80607、伴星が HD 80606 と呼ばれる。HD 80606 の周囲を太陽系外惑星が公転しているのが発見されている。

HD 80606 / HD 80607
GALEXによるHD 80606とHD 80607の画像
GALEXによるHD 80606とHD 80607の画像
星座 おおぐま座
見かけの等級 (mv) 9.07 / 8.93
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  09h 22m 39.7266/37.5679s
赤緯 (Dec, δ) +50° 36′ 13.927/13.397″
視線速度 (Rv) 3.6 / 3.3 km/s
固有運動 (μ) 赤経:42.80 / 46.98 ミリ秒/年
赤緯:8.26 / 6.92 ミリ秒/年
年周視差 (π) 9.51 / 17.13 ミリ秒
距離 190.41 光年
(58.38 パーセク
物理的性質
質量 0.9 M
スペクトル分類 G5V / G5V
表面温度 5,370 K
金属量[Fe/H] 0.43
年齢 7.63 ×109
他のカタログでの名称
Struve 1341, HIP 45983/45982,
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惑星系

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HD 80606 b の軌道

Naefらは2001年に太陽系外惑星 HD 80606 b を発見した[2]軌道離心率は0.9336と非常に大きく、2007年6月時点では最も軌道離心率の大きな惑星だった[3]。これは太陽系ではハレー彗星に匹敵する。この軌道離心率は古在メカニズムの結果であると考えられている[4]

軌道離心率が大きいため、惑星から主星までの距離は0.03天文単位から0.88天文単位まで変動する。遠点では日射量は地球と同程度であるが、近点では地球の800倍と水星よりもはるかに大きくなる。その結果、気温の年較差も非常に大きくなり、食の観測から近点付近の6時間には800Kから1,500Kにもなることが明らかとなった[5]

1000万年単位のシミュレーションでは、HD 80606 は周囲1.75天文単位の範囲内にある粒子を一掃し、1.9天文単位の位置には、8:1共鳴のカークウッドの空隙も形成された。この系には生物が生存可能な惑星は存在しえないし、観測によっても軌道周期1年以下の0.7木星質量以上の惑星は観測されなかった[6]

HD 80606の惑星
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 4.0 ± 0.3[4] MJ 0.453 ± 0.015[4] 111.436 ± 0.003[4] 0.9336 ± 0.0002[3]

関連項目

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出典

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  1. ^ 太陽系外縁天体の一つ、セドナの遠日点距離が約1000天文単位とされるため、この二つの恒星は、最遠日点時の太陽〜セドナ間ほど距離が離れていることになる。
  2. ^ Naef et al.; Latham, D. W.; Mayor, M.; Mazeh, T.; Beuzit, J. L.; Drukier, G. A.; Perrier-Bellet, C.; Queloz, D. et al. (2001). “HD 80606 b, a planet on an extremely elongated orbit”. Astronomy and Astrophysics 375: L27-L30. doi:10.1051/0004-6361:20010853. http://www.edpsciences.org/papers/aa/full/2001/32/aade293/aade293.html. 
  3. ^ a b Fossey, S. J., Waldman, I. P., and Kipping, D. M. (2009). "Detection of a transit by the planetary companion of HD 80606". arXiv:0902.4616 [astro-ph]。
  4. ^ a b c d Moutou, C.; et al. (2009). "Photometric and spectroscopic detection of the primary transit of the 111-day-period planet HD 80606 b". arXiv:0902.4457 [astro-ph]。
  5. ^ Laughlin, G. et al. (2009). “Rapid heating of the atmosphere of an extrasolar planet”. Nature 457 (7229): 562-564. doi:10.1038/nature07649. PMID 19177124. 
  6. ^ Wittenmyer et al.; Endl, Michael; Cochran, William D.; Levison, Harold F. (2007). “Dynamical and Observational Constraints on Additional Planets in Highly Eccentric Planetary Systems”. The Astronomical Journal 134 (3): 1276-1284. doi:10.1086/520880. http://www.iop.org/EJ/article/1538-3881/134/3/1276/205882.html. 

外部リンク

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座標:   09h 22m 37.5679s, +50° 36′ 13.397″