FH-88 155mm榴弾砲英語: Field Howitzer 88)は、シンガポールST エンジニアリング社が開発した155mm口径榴弾砲。また、FH-2000などの発展型も開発された。

FH-2000の砲尾および装填装置
牽引状態のFH-2000

FH-88は、シンガポールが初めて自国で開発した榴弾砲である。

シンガポール陸軍においては、1973年よりソルタムM68 155mm榴弾砲が、1982年よりその改良型であるソルタムM71 155mm榴弾砲が運用されてきた。しかし、これらの榴弾砲は、運用に多くの人員を必要としており、比較的小規模な同陸軍にとっては負担が大きいものだった。このことから陸軍は、より少人数で運用できる榴弾砲を必要としていた。当時、輸出市場にはこの要求を満たす砲が存在せず、また、シンガポール政府として独自の兵器開発力の獲得が望まれたことから、ST エンジニアリング社による開発が決定された。

開発は1983年より開始され、1987年より量産に入り、翌年より同国陸軍での運用が開始された。本砲は、口径砲身長はソルタムM71と同等で、6輪の砲架を備えるなど外形上も類似している。しかし、より優れた発射速度を備えるとともに運用人員も削減されており(ソルタムM71の12名に対して8名)、同国陸軍の要求を十分に満たすものであった。

諸元

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  • 口径:155mm/39口径長
  • 俯仰角:-3°/+70°
  • 旋回角:中心線から左右に20度

FH-2000

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FH-2000英語: Field Howitzer 2000)は、FH-88をもとに開発された発展・改良型として、1990年より開発された。改良点としては下記の点がある。

長砲身
39口径長から52口径長にすることで、射程を大幅に延伸した。ERFB BB弾使用時は40キロメートルの射程を発揮できる。
APUの搭載
FH70TRF1 155mm榴弾砲と同様の補助動力装置(APU)を搭載することで、短距離自走能力を獲得するとともに、自動化も進められた。本砲は75馬力空冷ターボチャージャーディーゼルエンジンを搭載し、短距離であれば10キロメートル毎時の速度で移動できるほか、半自動式装填補助装置を搭載している。

1997年3月9日腔発事故が発生した。事故は、ニュージーランド北島のワイオウル基地において、シンガポール陸軍砲兵隊第23大隊が実弾演習を行った際に発生し、2名が死亡、12名が負傷した。負傷者の中には、ニュージーランド軍から派遣されていた連絡下士官も含まれていた。事故は、砲弾信管の欠陥によるものと結論された。

諸元

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  • 口径:155mm/52口径長
  • 重量:13,200kg
  • 俯仰角:-3°/+70°
  • 旋回角:中心線から左右に20度
  • 射程:19,000メートル以上(標準榴弾)/40,000メートル(ERFB BB弾)
  • 発射速度:6発/分(急速射撃3分間)/2発/分(持続射撃30分間)

SLWH ペガサス

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SLWH ペガサス英語: Singapore Light Weight Howitzer Pegasus)は、FH-88およびFH-2000の技術をもとに開発された軽量榴弾砲である。FH-2000と同様にAPUを搭載しているが、28馬力と、より低馬力のものとなっている。砲身長はFH-88と同様の39口径長であるが、砲架はアメリカM102 105mm榴弾砲と同様の単脚式で、FH-88やFH-2000よりも軽量となっている。

諸元

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  • 射程:19,000メートル以上(標準榴弾)/30,000メートル(ERFB BB弾)
  • 発射速度:4発/分(急速射撃3分間)/2発/分(持続射撃30分間)

運用国

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現用

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脚注

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  1. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 287. ISBN 978-1-032-50895-5 

参考文献

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