Escキーとは、コンピュータ用のキーボードにあるキーの1つである。一般に「エスケープキー」(英語: escape key)と呼ばれており(ISO/IEC 9995英語版における名称でもある)、キーに「Esc」または「Escape」と刻印されている。

コンピュータのキーボード。Escキーが英数キーエリアから独立してキーボードの左上隅にある。
IBMの83鍵キーボード(1981年)。Escキーが英数キーエリアの左上隅("1"の左)にある。

Escキーを押下するとエスケープ文字ASCIIで27、UnicodeでU+001B)が発生する。エスケープ文字がキーボードからコンピュータに送られると、ソフトウェアによって「停止」と解釈される。実際には、多くのアプリケーションプログラムで「キャンセル」の意味で使用されている。また、外部デバイス(1980年代以降のプリンタ、端末Linuxコンソール英語版など)に送られると、特別な機能を実行するためのエスケープシーケンスの開始と解釈される。

Escキーはキーボードの左上隅に配置されるのが一般的になっているが、これはIBM PCキーボード英語版からであり、それ以前には違う位置にEscキーがあるものもあった。Escキー自体はテレタイプ端末から存在した。

歴史

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エスケープキーは、IBMに勤務していたプログラマー、ボブ・バーマーによって1960年に作られた。彼は、文字コードの異なる多様なコンピュータ間で通信をする際に、文字コードを切り替えるためにエスケープキーを作った[1][2]。初期のASR-33のキーボードの同様の機能のキーには"Alt Mode"と刻印されており、それはテレタイプ端末の文字送り装置(escapement)に、次の1文字を特別な意味で取扱うよう指示する代替モード(alternative mode)を意味していた。後のプリンタや端末では、エスケープ文字の後に複数のバイトが続くエスケープシーケンスを使用するようになった。

エスケープという名称から、Escキーは、多くのアプリケーションプログラムで「現在の操作を抜ける(脱出する)」用途に流用された。初期のアプリケーションプログラムでは、この際に「変更を保存して終了する」場合(つまり完了)と、「保存せず終了する」場合(つまりキャンセル)があり、ユーザーの混乱にもなった(CUAも参照)。

伝統的な多くのテキストエディタワープロソフトでは、Escキーは「モード変更」(現在の編集モードを抜けてコマンドモードに移動する)用のキーとして多用された。viではEscキーによりコマンドモードに移動できる。一太郎ではEscキーにより「Escメニュー」が表示される。MS-DOS版のMicrosoft WordではEscキーによりメニューが表示される。またVZ Editorの常駐モードでは、EscキーによりMS-DOSよりVZ Editorを起動できる。このため101キーボード以降でEscキー(およびコントロールキー)の位置がホームポジションから離れた事は議論となった(コントロールキー#キーの位置も参照)。

なおメインフレームの伝統的な環境では「システムのコマンドモードに移動する」という用途には、専用のSysRqキーが使用される(TSO使用中のVTAMコマンド入力など)。

用途

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現在のWindowsでは、Escキーはダイアログボックスの「いいえ」「終了」「キャンセル」「中断」などのショートカットキーとして使用されている。またWindowsの稼働するマシンでキーボードにWindowsキーが無い場合では、コントロールキーを押しながらEscキーを押すことで、Windowsの「スタート」ボタンのショートカットとなる。WindowsにはEscキーの使用を含めた多数のショートカットがあり [3]、その多くはWindows 3.0で生まれ、XP, Vistaを経由してWindows 7にも引き継がれている。

macOSでは、ダイアログボックスのキャンセルのショートカットキーとしての用途の他、コマンドキー + オプションキーを押しながらEscキーを押すことで、アプリケーションの強制終了ウィンドウが表示される [4]

多くのウェブブラウザでは、Escキーは「中止」ボタンのショートカットキーとされている [5][6][7]

多くのコンピュータゲームでは、Escキーをポーズボタンやゲーム内のメニューの表示(その中にはゲームの終了が含まれる)のために使用している。

 
viが開発されたADM-3Aのキー配列。Escキーが今日のタブキーの位置にある。

viでは、モード変更のためにEscキーを使用する。これは、viの開発に用いられたADM-3AではEscキーが現在一般的なキーボード(PC/AT互換機など)のタブキーの位置(Qの左)とホームポジションから近い場所にあり、押しやすかったためである。現在一般的なキーボードでは、Escキーはキーボードの左上端にあり、押すためにはホームポジションから手を離す必要が生じた。

記号

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ISOにおける"Escape"のキーボード記号

Escキーには通常ラテン文字で"Esc"と刻印されているが、Escキーに刻印する記号がISO/IEC 9995-7英語版(symbol 29)やISO 7000(symbol ISO-7000-2029)で右記の図のように定められている。この記号はUnicodeにU+238B broken circle with northwest arrow (⎋)としてコード化されている。

備考

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言葉遊びとして、「Esc」の由来は「Escape」ではなく「extra services control」とも言われる[8]

参照

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  1. ^ Kennedy, Pagan, "Who Made That?", New York Times Magazine, October 7, 2012, p.20
  2. ^ IDG: Han uppfann Escape-tangenten
  3. ^ Windows のキーボード ショートカット
  4. ^ Mac のキーボードショートカット
  5. ^ Unix keybindings for Netscape
  6. ^ IE7 Quick Reference Sheet
  7. ^ Cheat Sheet for Mozilla FireFox (Key Board Short Cuts)
  8. ^ Richard C. Detmer, Essentials of 80x86 Assembly Language, pg.14

関連項目

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