EOS R400S (RWS)
R400Sは、オーストラリアの防衛・宇宙関連企業であるElectro Optic Systems(EOS)社[1]によって販売されているRWS(Remote Weapon Station, 遠隔操作式銃塔)である[2]。
概要
編集R400SはElectro Optic Systems(EOS)社と Recon Optical(RO)社(後にEOS社に吸収合併)によって共同開発されたRAVEN R-400を下敷きとするEOS RシリーズRWSファミリーの製品の一つであり、M240やM134ミニガンといった7.62mm機関銃からMk19 40㎜グレネードランチャー、最大でM230 30mmチェーンガンを選択搭載可能なRWSである[3]。
競合他社で開発された従来の30㎜級RWSの多くが兵装搭載状態で400㎏を超える中、M230搭載で355㎏、M230/M240連装で408㎏と大幅に軽量化されている事を特徴とする[2][注 1]。軽量であるため成人男性4人で手搬送が可能であり、足場さえあれば設置から射撃までおおむね5分で実施可能である[5]
R400SはEO/IRセンサーと連動した4軸安定化機構を備えたFCSによるロックオン機能を有し精密な射撃が可能であり、また火器換装は1時間で実施可能であるためSTANAG 4569レベル3級の装甲車両から中小型UAVまでの幅広いターゲットを撃破可能となる[6]。また、オプションでジャベリン対戦車ミサイルを連装する事も可能である[2][7]。2020年には通常仕様のR400Sにより、M230チェーンガンを用いて500mの距離で小型ドローンを撃墜できる事が確認されている[8]。
また、EOS社はR400Sの派生型としてとしてカウンタードローンシステムである「Titanis Counter Drone Defense System(TCDDS)[9][10]」を開発しており、レーダーやEO/IRセンサーにより探知したドローンに対する高周波(RF)によるソフトキルに加え、M230 30mmチェーンガンから発射される近接信管式エアバースト弾[11]や、M240 7.62mm機関銃による精密射撃により800m先の小型の商用ドローンを射撃し破壊するハードキルが可能となっている[12][13][注 2]
オーストラリア陸軍をはじめとする6カ国で採用されている。
来歴
編集1999年、Electro Optic Systems(EOS)社と Recon Optical(RO)社は、米軍向けRWSであるCROWSの共同開発を開始、EOS社がセンサー、電子機器、オペレーター・インターフェース、ソフトウェア、火器制御および照準システムを提供、RO社は安定化装置(ジンバル)を開発[17]、RO社製「RAVEN R-400」として商品化し、2004年にアメリカ軍向けRWSM101 CROWSとして採用された[18][19]
2009年、RO社はEOS社に買収され、以後R400及びその発展型はEOS社製品として展開しており[17]、EOSによる買収後は「RAVEN R-400」は「R400S-MK1」と改称されている[20][21][22]
バリエーション
編集- R400S-MK1(RAVEN R-400)
EOS社とRecon Optical(RO)社によって共同開発され、RO社製RWSとして販売されたモデルであり、後のR400シリーズの原型となった。
- R400S-Mk2 , R400S-MK2-D
12.7mm重機関銃、Mk19 40㎜グレネードランチャー以下の兵装を単装できるモデル、重量はそれぞれ武装非搭載状態で167㎏、179㎏、府仰角は-10~+60°
- R400S-MK2-D-HD
M230 30mmチェーンガンを含めた全兵装を単装又は連装で装備できるモデルで、武装非搭載状態で231㎏、府仰角は-10~+45°
R400Sをベースとした対ドローンシステムであり、センサー系にレーダーを追加し、それに対応したFCSを搭載している。
- R400-M
R400S-MK2を海洋環境に適合したモデルであり、Mは「Marine」を意味する[25]。
採用国
編集- アメリカ合衆国
- RAVEN R-400(R400S-MK1)をM101 CROWSとして560基以上調達[18]
- オーストラリア
- 2006年、ブッシュマスターMRAP用に44基のRAVEN R-400(R400S-MK1)を調達[18]、その後2018年までにブッシュマスター用に合計235基が納入された[20]。
- 2019年12月23日、Land 400 Phase 2にて採用されたボクサー装輪装甲車の偵察戦闘車両バージョン用のRWSにR400S-Mk2-D-HDが選定され、82基が4,500万豪ドルで契約された[26][27]。
- また、海軍の沿岸機動艦艇 (LMV-M) 向けにR400-Mが選定されている[25]。
- オランダ陸軍のブッシュマスターMRAPにR400S-MK1を搭載している[28]。
- 2021年3月にはオランダ陸軍第13軽旅団にてボクサー装輪装甲車に搭載しての試験が行われている[29]
- ウクライナ
- 2022年ロシアのウクライナ侵攻に伴いオーストラリアからウクライナ軍に提供されたブッシュマスターMRAPにR400S-MK1が搭載されている[30]
その他匿名のNATO加盟国に採用されている[31]
脚注
編集注釈
編集- ^ 同様にM230 30mmチェーンガンを積載可能なコングスベルグ製のProtector RS6は、武器・弾薬無しの状態で342㎏の重量となる[4]
- ^ カナダ国防省が主催する対ドローン兵器コンテスト「Counter Uncrewed Aerial Systems Sandbox(CUAS)[14]」において、時速200km以下で移動するマイクロUAS(重量2kg未満、対地高度最大200フィート、ミッション半径5㎞未満)又はミニUAS(重量2~15kg、対地高度最大3000フィート、ミッション半径25km未満)による脅威を、基地警備、車列警護、下車歩兵保護、市街地防衛、停泊船舶保護の5つのシナリオにおいて防護するシナリオを実施し、そこにおいて800m離れた商用ドローンを7.62㎜機関銃で迎撃する事に成功している[14][15][16]
出典
編集- ^ Electro Optic Systems(Electro Optic Systemsホームページ)
- ^ a b c R400S Datasheet(EOS社R400Sデータシート)
- ^ R400S(EOS-USA R400S)
- ^ Protector RS6 Datasheet(コングスベルグ社Protector RS6 データシート)
- ^ R400S 乗せ換え(EOS公式アカウント)
- ^ R400S M230LF 30mmチェーンガン対地射撃(EOS公式アカウント)
- ^ R400S Javelin(EOS公式アカウント)
- ^ R400S M230LF 30mmチェーンガン(EOS公式アカウント)
- ^ a b EOS DEFENSE SYSTEMS(EOS DEFENSE SYSTEMS商品カタログ)
- ^ a b EOS TDCCS(EOS TDCCSデータシート)
- ^ EOS Counter UAS Defense(EOS Counter UAS Defense)
- ^ EOS Shoots Down Drones at C-UAS Sandbox 2022(EOS Shoots Down Drones at C-UAS Sandbox 2022)
- ^ R400S M240B機関銃(EOS公式アカウント)
- ^ a b Counter Uncrewed Aerial Systems Sandbox 2022(カナダ国防省Counter Uncrewed Aerial Systems Sandbox 2022要綱)
- ^ Australian defence tech thrives in Canadian counter UAV contest(Defense Connect 2023年2月3日)
- ^ In the Media: EOS’ Canadian CUAS Contest Success(EOSプレスリリース2023年2月3日)
- ^ a b EOS Acquires Recon Optical, Inc.(Army Technology2009年12月2日)
- ^ a b c R-400 CROWS – Remotely Controlled Stabilized Weapon Station(Defense-Update2004年5月5日)
- ^ Recon Optical Awarded Contract For Stabilized Remotely Operated Weapon Systems(SPACE WAR 2007年1月5日)
- ^ a b New EOS facility supports export success(オーストラリア国防省プレスリリース2018年1月30日)
- ^ EOS secures European Remote Weapon System contract(Defence Connect2020年9月16日)
- ^ EOS booklet(EOS ッブックレット)
- ^ EOS R400S-Mk2(EOS R400S-Mk2 カタログ)
- ^ R400S-Mk2-D-HD(EOS R400S-Mk2-D-HD カタログ)
- ^ a b Indo Pacific 2022: EOS launches marine version of R400S Mk 2 remote weapon station(JANES2022年5月12日)
- ^ Commonwealth signs LAND 400 Phase 2 RWS Contract(EOSプレスリリース)
- ^ Australian company (EOS) awarded multi-million dollar contract for Army's Boxer vehicles(オーストラリア国防省プレスリリース2019年12月23日)
- ^ Australia to acquire 251 RWSs for Bushmaster and Hawkei vehicles(JANES2020年7月3日)
- ^ Boxer 30mm&40mm(オランダ陸軍第13旅団公式アカウント 2021年3月12日)
- ^ EOS Remote Weapon Systems Deploy to Ukraine(EOSプレスリリース)
- ^ Electro Optic System (ASX:EOS) wins $4.25M in contracts for remote combat vehicles(The Market Herald 2020年9月15日)
関連項目
編集- RWS
- M101 CROWS…EOSに買収されたRecon Optical社と共同開発したRWS