Datapoint 2200
Datapoint 2200 は1970年6月、CTC(Computer Terminal Corporation、後の Datapoint)が発表したプログラム可能な端末である(実際の出荷は1971年)。当時の多くの端末は単機能だったが、Datapoint 2200 は各種端末エミュレータを磁気(カセット)テープでロードすることで様々なメインフレームに接続できる安価な端末として設計された。しかしユーザーは、このプログラム可能端末が単純なコンピュータのタスクを自前で実行できることを発見し、実際にスタンドアロンのコンピュータとして利用するようになった。すなわち、CTC は現代的な意味でのパーソナルコンピュータに非常によく似た機器を生み出したのである。また同時に、そのCPU(プロセッサ)は、後に IBM PC や互換機で使われるようになる x86 命令セットアーキテクチャの元になったという事実も重要である。
仕様
編集- 本体
- 大きさ: おおよそ 60cm(幅)×60cm(奥行き)×30cm(高さ)、IBMの Selectric タイプライターと同程度
- CPU: 8ビット。標準ロジックIC(TTL)で構成されている。Intel 8008 とほぼ100%互換である。
- RAM: 初期バージョンは標準2KB(最大8KB)。後期バージョンは標準4KB(最大16KB)
- 初期はシフトレジスター後にMOSメモリーが使われた。
- 内蔵入出力
- 周辺機器
- モデム
- ハードディスクドライブ(初期は2.5MBで、後にもっと大容量のものも製品化されている)
- プリンター
- パンチカードリーダー
- 磁気テープ装置(1975年)
x86アーキテクチャの萌芽
編集最初のパーソナルコンピュータの1つとなっただけではなく、Datapoint 2200 はコンピュータ史と別のつながりも持っている。当初の設計では、TTL回路モジュールではなくシングルチップの8ビットマイクロプロセッサをCPUとして使う予定だった。1969年、CTCはインテルとテキサス・インスツルメンツ (TI) にチップ開発を依頼した。TIは安定動作するチップを製造できず、途中で降りたが、インテルは一応完成させた。しかし、その性能はCTCの要求を満たさなかったため、CTCはやむなくTTL回路で製造することに決定した[1]。
CTCがリリースした Datapoint 2200 はマイクロプロセッサの代わりに約100個のTTL-ICを使っていた。一方、インテルはこのシングルチップ設計を Intel 8008 として1972年4月にリリース。8008 はインテルの最初の8ビットCPUであり、後に大きく発展することになる16ビットのx86ファミリの命令セットの原型にもなった。8008の命令セットはCTCの技術者が設計したものであり、そういう意味では彼らが1980年代中盤から今日まで最も広く使われている命令セットアーキテクチャの生みの親と言う事ができる。
設計者
編集命令セットの設計は Victor Poor と Harry Pyle による。TTL回路設計は Gary Asbell、外観のインダストリアルデザインは Jack Frassanito による。
脚注
編集- ^ Thompson Kaye, Glynnis (1984年). A Revolution in Progress - A History to Date of Intel. Intel Corporation. pp. pg 13. Order number:231295
外部リンク
編集- Information about the Datapoint 2200 at OLD-COMPUTERS.COM – 写真あり。
- Datapoint documentation on bitsavers.org
- Gordon Peterson's Home Page マイクロプロセッサの初期の歴史に関する論文と Datapoint 2200 のマニュアルへのリンクあり(どちらもPDF)。
- The man who invented the PC AmericanHeritage.com、Invention & Technology Magazine(1994年秋)。CTC技術者についての記事。