Chainer
Chainer(チェイナー)は、ニューラルネットワークの計算および学習を行うためのオープンソースのソフトウェアライブラリである。バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)に必要なデータ構造をプログラムの実行時に動的に生成する特徴があり[4]、複雑なニューラルネットワークの構築を必要とするディープラーニング(深層学習)で用いられる[3][1]。Python 2.x系および3.x系から利用でき[要出典]、GPUによる演算をサポートしている[3][5]。株式会社Preferred Networks(PFN)からリリースされている[5][1]。2019年12月5日、開発元のPFNはフレームワーク開発を終了してChainerはメンテナンスフェーズへ移行すること、自社はChainerからFacebookが主導するPyTorchに順次移行することを発表した[1]。
開発元 | Preferred Networks[1] |
---|---|
初版 | 2015年6月9日 |
最新版 |
v7.7.0[2]
/ 2020年6月30日 |
リポジトリ | |
プログラミング 言語 | Python[3] |
プラットフォーム | Linux |
種別 | 機械学習ライブラリ |
ライセンス | MIT Licence |
公式サイト |
chainer |
Chainerは"define-by-run"というモデル設計手法を取り入れた深層学習のフレームワークの先駆けで、後発のPyTorchなどにも大きな影響を与えた[1]。Preferred Networks(PFN)が日本の機械学習系のベンチャー企業であることから、日本語の関連資料が多いという特徴があった[5]。
PaintsChainer
編集PaintsChainer(ペインツ・チェイナー[6])はChainerを用いてPFN社の米辻泰山[注釈 1]が作成した線画自動着色ソフト[13][14]。ユーザーは「たんぽぽ」「さつき」「かんな」の3種類のAIを選択できる[12][7]。数日で100万件のアクセスを記録し[7]、2018年には文化庁の第21回メディア芸術祭エンターテイメント部門で優秀賞を受賞した[7]。中国語版のサイトもある[13]。米辻はインターネット上で60万枚のカラー画像データを収集し、線画に変換[14]。この線画とカラー画像をデータとして深層学習でモデルを作成し、2017年1月27日に公開した[14]。
モデル(擬人化AI)
編集- たんぽぽ
- 初期モデル[12]。似た色でぼかす傾向があり[12]、淡く柔らかい諧調が特徴[7]。
- さつき
- 2017年5月に投入された[12]。グラデーションが特徴[7]。たんぽぽと同じモデルで、パラメータが異なる[12]。
- かんな
- 2017年10月に投入された[12]。陰影が特徴で[7]、線のない箇所にハイライトを入れることができ、瞳の着色も可能[12]。他の2つとは異なるモデルを用いており、計算量も大きい[12]。
運営体制
編集- Preferred Networks
- 2019年11月までの運営会社で[15]、使用された深層学習フレームワーク「Chainer」は同社による[13]。「PaintsChainer」の登録商標はPFNが所有[6]。
- さくらインターネット
- PaintChainerはウェブ上で使用するため、同社の「高火力コンピューティング」環境に支えられている[12][16]
- Pixiv
- 「さつき」はPixivと共同でリリースされ[12]、同社の「pixiv Sketch」にPaintsChainerがAPIとして組み込まれている[16]。2019年11月15日から、ピクシブ株式会社がPaintsChinerの運営を引き継いだ[15]。
用途
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e 森山和道 (2019年12月5日).“PFN、深層学習フレームワークを自社開発の「Chainer」から「PyTorch」に切り替え”. PC Watch. 2019年12月6日閲覧。
- ^ “Chainer Release” (英語) 2021年1月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g 山下隆義「ディープラーニングツールを使いこなそう(2)」『映像情報メディア学会誌』第70巻第9号、2016年、792-796頁。
- ^ “Deep Learning のフレームワーク Chainer を公開しました - Preferred Research” (2015年). 2017年7月26日閲覧。
- ^ a b c d 落合翼、松廣達也、松田繁樹、片桐滋「音声言語処理における深層学習ツールキット解説」『日本音響学会誌』第73巻第1号、2017年、63-72頁。
- ^ a b ピクシブ株式会社 (2019年11月15日).“ピクシブとPreferred Networksがイラスト自動着色分野で協業開始”. PR TIMES. 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g “優秀賞 - PaintsChainer | 第21回 2018年 | エンターテイメント部門”. 文化庁メディア芸術祭歴代受賞作品. 文化庁. 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b “米辻 泰山”. 未踏名鑑. 未踏. 2019年12月7日閲覧。
- ^ 中村充浩「看護技術修得システムの開発と「正しい」看護技術の探求」『システム/制御/情報』第58巻第4号、2014年、158-163頁。
- ^ 太田順「身体負荷を伴う看護技術自習支援システムの開発」『システム/制御/情報』第58巻第4号、2014年、152-157頁。
- ^ 岩橋利英、射谷和徳、藤原圭祐、米辻泰山、東隆、葭仲潔、佐々木明、高木周、松本洋一郎、佐久間一郎、湯下和雄、大野良二「HIFU治療に向けたロボットの精度向上技術(OS7-2:次世代超音波診断・治療技術(2))」『バイオエンジニアリング講演会講演論文集』2014年、2B32。
- ^ a b c d e f g h i j k l 大谷イビサ (2017年12月6日).“PFN、ピクシブ、さくらが語るサービス運営の舞台裏 機械学習で線画を自動着色する「PaintsChainer」の楽しすぎる未来”(1/2). ASCII.jp. 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b c “1クリックで、プロ並みの着色ができる!? 線画自動着色サービス「PaintsChainer」の開発者に会ってきた”. パーソナルテクノロジースタッフ (2017年4月27日) 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b c Saki Mizoroki (2017年2月5日).“#PaintsChainer イラストに着色する人工知能がすごい 作ったのは29歳のこんな人”. BuzzFeed. 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b “PaintsChainer”. Pixiv. 2019年12月7日閲覧。
- ^ a b c 大谷イビサ (2017年12月6日).“PFN、ピクシブ、さくらが語るサービス運営の舞台裏 機械学習で線画を自動着色する「PaintsChainer」の楽しすぎる未来”(2/2). ASCII.jp. 2019年12月7日閲覧。
関連文献
編集- 鈴木亮太「機械学習と開発環境:深層学習フレームワークの動向」『計測と制御』第58巻第5号、2019年、387-391頁。
- 竹永智美「Chainerによるディープラーニング」『Medical Imaging Technology』第36巻第2号、2018年、58-62頁。
- 松野俊文、薗部達哉、高橋亮輔、東山和寿、星和祐「国産ディープ・ラーニングフレームワークChainerに迫る」『電気学会誌』第138巻第5号、2018年、294-297頁。
関連項目
編集- ニューラルネットワーク、機械学習、ディープラーニング(深層学習)
- Ponanza
外部リンク
編集- Chainer - 公式サイト
- Seiya Tokui (2019年12月5日).“Chainer を振り返って”. beam2d memo - 開発者のブログ
(PaintsChainer)
- PaintsChainer - 公式サイト
- taizan (2018年1月11日).“線画着色webサービスPaintsChainerを公開した”. @taizan. Qiita - 開発者のブログ