AI法
この記事は特に記述がない限り、欧州連合の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
AI法（人工知能法 英：The Artificial Intelligence Act (AI Act)） は、欧州連合における人工知能 (AI) に関する規制法。 2021年4月21日に欧州委員会によって提案され[1]、2024年3月13日に可決された[2]。この法律は、AIに関する共通の規制および法的枠組みを確立することを目的とする[3]。 その範囲には、幅広い分野のあらゆる種類のAIが含まれる（軍事、国家安全保障、研究、および非専門的目的のみに使用されるAIは例外[4]）。製品規制の一環としてAIのプロバイダや、専門的な用途でAIを使用する団体を規制する[5]。
| 欧州連合規則 | |
| 立法審議文書 | |
|---|---|
| 欧州委員会提案 | 2021/206 |
AI法は、損害を引き起こすリスクに基づいてAIアプリケーションを分類し、規制することを目的とする。この分類には、リスクの4つのカテゴリ (「許容できない」、「高」、「限定的」、「最小限」) に加えて、汎用目的AI向けの1つの追加カテゴリが含まれる。許容できないリスクがあるとみなされるアプリケーションは禁止され、高リスクのものはセキュリティ、透明性、品質に関する義務を遵守し、適合性評価を受ける必要がある。限定的リスクのAIアプリケーションには透明性の義務のみがあり、最小限のリスクを表すものは規制されない。汎用目的のAIには透明性要件が課され、特に高いリスクを表す場合には追加の厳しい評価が行われる[6][7]。AI開発者は、Llama 3.1が欧州連合（EU）のAI法制化を避けるためにテキストのみを処理するようになった例として、Llama 3.1を挙げ、AI法制化がAIと各国の発展を妨げていると主張している[8]。
リスクカテゴリ
編集アプリケーションの種類に応じてさまざまなリスクカテゴリがあり、特に汎用目的の生成AIに特化したリスクカテゴリがある。
- 許容できないリスク（英：Unacceptable risk）：このカテゴリに該当するAIアプリケーションは禁止される。これには人間の行動を操作するAI、公共の場で顔認識を含むリアルタイムのリモート生体認証を使用するAI、および個人の特徴、社会経済的地位、または行動に基づいて人々をランク付けするソーシャルスコアリングに使用されるAIが含まれる[7] 。
- 高リスク（英：High-risk）: 健康、安全、または基本的人権に重大な脅威をもたらすAIアプリケーション。特に、医療、教育、人材採用、重要インフラ管理、行政、司法分野で使用されるAIが含まれる。品質、透明性、人間による監督、セキュリティの義務の対象となる。市場に投入される前だけでなく、投入後にも評価される必要がある[7]。また、高リスクアプリケーションのリストは、AI法自体を修正することなく拡張できる[5]。
- 汎用目的AI（英：General-purpose AI）（GPAI）: このカテゴリは2023年に追加され、特にChatGPTなどの基盤モデルが含まれる。これらは透明性要件の対象となる。システムリスクを引き起こす可能性がある影響の大きい汎用目的AIシステム (特に、 FLOPSを超える計算能力を使用してトレーニングされたもの[9][10]) は徹底的な評価プロセスを受ける必要がある[7]。
関連項目
編集参考文献
編集- ^ “EUR-Lex - 52021PC0206 - EN - EUR-Lex”. eur-lex.europa.eu. 23 August 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月7日閲覧。
- ^ “World’s first major act to regulate AI passed by European lawmakers”. CNBC (14 March 2024). 13 March 2024閲覧。
- ^ “Proposal for a Regulation laying down harmonised rules on artificial intelligence | Shaping Europe's digital future” (英語). digital-strategy.ec.europa.eu (21 April 2021). 4 January 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月9日閲覧。
- ^ “Artificial intelligence act: Council and Parliament strike a deal on the first rules for AI in the world”. Council of the EU. (9 December 2023). オリジナルの10 January 2024時点におけるアーカイブ。 January 6, 2024閲覧。
- ^ a b Mueller, Benjamin (2021年5月4日). “The Artificial Intelligence Act: A Quick Explainer” (英語). Center for Data Innovation. 14 October 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月6日閲覧。
- ^ Espinoza, Javier (December 9, 2023). “EU agrees landmark rules on artificial intelligence”. Financial Times. 29 December 2023時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月6日閲覧。
- ^ a b c d e “EU AI Act: first regulation on artificial intelligence” (英語). European Parliament News. オリジナルの10 January 2024時点におけるアーカイブ。 2024年1月6日閲覧。
- ^ “Meta Restricts Multimodal Models in The European Union Due to Privacy Concerns” (英語). Meta Restricts Multimodal Models in The European Union Due to Privacy Concerns (2024年7月24日). 2024年7月26日閲覧。
- ^ “Press corner”. European Commission - European Commission. 2024年8月10日閲覧。
- ^ a b Bertuzzi, Luca (2023年12月7日). “AI Act: EU policymakers nail down rules on AI models, butt heads on law enforcement” (英語). Euractiv. 8 January 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月6日閲覧。
- ^ “Regulating Chatbots and Deepfakes” (英語). mhc.ie. Mason Hayes & Curran. 9 January 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。11 January 2024閲覧。
- ^ https://artificialintelligenceact.eu/recital/60f/
- ^ Liboreiro, Jorge (2021年4月21日). “'Higher risk, stricter rules': EU's new artificial intelligence rules” (英語). Euronews. 6 January 2024時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月6日閲覧。
- ^ Veale, Michael (2021). “Demystifying the Draft EU Artificial Intelligence Act”. Computer Law Review International 22 (4). arXiv:2107.03721. doi:10.31235/osf.io/38p5f.