40-40クラブ
40-40クラブ(40-40 club)は、MLBにおいて1シーズンに40本塁打以上と40盗塁以上を同時に達成した選手たちのことを指す。
概要
編集40-40クラブのメンバーになることは、現代のアメリカ野球ではなかなか達成できない偉業である。1つのシーズン中に40本のホームランを打つパワーと40個の盗塁をこなすスピードの両方を兼ね備えた選手はほとんどいないためである。一般的に、40本のホームランを打てるパワーのある選手は40個の盗塁に必要なスピードを持っておらず、その逆もまた同様である。これは、MLBの統計的傾向が変化しても同じで、1980年代の盗塁数は異常に多かったものの、40本のホームランに到達した選手はほとんどいなかった。1990年代後半にはホームラン数は非常に多くなったものの、盗塁という戦術があまり使われなくなったため、盗塁数はより稀になった。しかし、2023年シーズンから導入されたベースサイズ拡大や牽制球制限の新ルールによってMLB全体の盗塁数が急増し[1]、2023年から2年連続で達成者が現れた。
MLB史上で40-40達成者は6人であり、複数回達成した選手はいない。ホセ・カンセコが1988年に初めて達成[2][3]。達成者にはラテン系や黒人選手が名を連ね、白人選手の達成者はいない。アジア人選手としては2024年に日本人選手の大谷翔平が初めて達成した[4]。
達成した6人のうち、4人は右打者、2人は左打者だった。バリー・ボンズとアレックス・ロドリゲスは通算600本塁打達成者であり[5]、カンセコとロナルド・アクーニャ・ジュニアは達成した年にMVPに選出され(ボンズは5位、ソリアーノは6位、ロドリゲスは9位)、またカンセコはワールドシリーズに進出した唯一の選手である[6]。なお40-40を上回る記録としては、アクーニャ・ジュニアはMLB史上初となる40-70(41本塁打・73盗塁)、大谷はMLB史上初となる50-50(54本塁打・59盗塁)を達成している。
ソリアーノは40-40の他に41二塁打を記録している[7][8]。ロドリゲス(遊撃手)と大谷(指名打者)以外の達成者はいずれも外野手である[注 1]。現役でない達成者はすべて通算400本塁打かつ通算200盗塁を達成している。カンセコ、ボンズ、ソリアーノは40本塁打のあとに40盗塁を達成し、ロドリゲスとアクーニャ・ジュニアは40盗塁のあとに40本塁打を達成した。大谷は同じ試合中に両方を達成した唯一の選手であり、4回に40個目の盗塁、9回裏にサヨナラ満塁本塁打となる40本目の本塁打を放ち達成した[10]。
これまで、複数回達成者はいないが、アクーニャ・ジュニア(2019年 41-37)、ソリアーノ(2002年 39-41) 、ボンズ(97年 40-37)が複数回達成に近い記録を残し、カンセコが40-40に近づいたのは1998年(46-29)だった。ロドリゲスは他に40本塁打を7回記録したが、いずれの年も24盗塁を超えたことはなかった。
ボビー・ボンズ (1973年 39-43) 、前述のソリアーノ、ブラディミール・ゲレーロ (2002年 39-40) 、マット・ケンプ (2011年 39-40) 、ホセ・ラミレス (2024年 39-41) はいずれも39本塁打に終わり、あと1本塁打で達成だった。なお盗塁があと1つで40-40達成となる例はこれまでない。
40-40達成の最速は2024年大谷による126試合目である[10]。
達成者
編集殿堂入りした選手 | |
現役選手 |
年 | 選手 | 所属球団 | ホームラン | 盗塁 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
1988 | ホセ・カンセコ | オークランド・アスレチックス | 42 | 40 | [11] |
1996 | バリー・ボンズ | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 42 | 40 | [12] |
1998 | アレックス・ロドリゲス | シアトル・マリナーズ | 42 | 46 | [13] |
2006 | アルフォンソ・ソリアーノ | ワシントン・ナショナルズ | 46 | 41 | [8] |
2023 | ロナルド・アクーニャ・ジュニア | アトランタ・ブレーブス | 41 | 73 | [14] |
2024 | 大谷翔平 | ロサンゼルス・ドジャース | 54 | 59 | [15] |
MLB以外
編集- NPB(日本プロ野球)において40-40を達成した選手はいない。近い記録としては秋山幸二が1987年に43本塁打38盗塁、1990年に35本塁打51盗塁を記録した。異なるシーズンで40本塁打と40盗塁を記録した選手も、秋山と別当薫しかいない[16]。
- KBO(韓国プロ野球)においては、エリック・テームズが唯一の40-40達成者である。NCダイノスに在籍した2015年に47本塁打40盗塁を記録した[17]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- 全般
- “40–40 Club”. Baseball-Almanac.com. Baseball Almanac. 2024年9月23日閲覧。
- Ed Eagle (2024年9月19日). “40-40 club: 40 steals, 40 homers in a season”. MLB.com. 2024年9月23日閲覧。
- 個別
- ^ “ピッチクロックがもたらす盗塁増加 影響は日本でも?”. 日本経済新聞 (2023年9月10日). 2024年9月22日閲覧。
- ^ Eskenazi, Gerald (October 5, 1988). “Canseco Facing High Expectations”. The New York Times June 17, 2012閲覧。
- ^ THOMAS BOSWELL (August 19, 1988). “Jose Canseco's 40-40 Vision Starting to Come Into Focus”. Los Angeles Times. March 26, 2013閲覧。
- ^ 福島良一「大谷翔平、前人未到の「50-50」に迫れるか 偉業達成のカギはホームラン - 福島良一の大リーグ It's showtime!」『日刊スポーツ』2024年8月26日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Career Leaders & Records for Home Runs”. Baseball-Reference.com. May 8, 2012閲覧。
- ^ “Most Valuable Player MVP Awards & Cy Young Awards Winners”. Baseball-Reference.com. May 24, 2012閲覧。
- ^ “Soriano first ever to reach 40–40–40 mark”. Associated Press. (May 24, 2012). オリジナルのNovember 2, 2007時点におけるアーカイブ。 July 31, 2007閲覧。
- ^ a b “Alfonso Soriano Statistics and History”. Baseball-Reference.com. May 10, 2012閲覧。
- ^ “Soriano's first game in left field goes smoothly”. ESPN (Associated Press) (April 3, 2006). June 25, 2012閲覧。
- ^ a b 「【詳報:一問一答】ドジャース・大谷翔平、史上最速で「40本塁打&40盗塁」達成 試合後も大興奮「50&50? 数字が上がれば勝つ確率が高くなるということ」」『サンスポ』2024年8月24日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Jose Canseco Statistics and History”. Baseball-Reference.com. May 10, 2012閲覧。
- ^ “Barry Bonds Statistics and History”. Baseball-Reference.com. May 10, 2012閲覧。
- ^ “Alex Rodriguez Statistics and History”. Baseball-Reference.com. May 10, 2012閲覧。
- ^ “Ronald Acuña Jr. Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 「大谷翔平、「54-59」でトリプルスリー 三冠王は逃す」『日本経済新聞』2024年9月30日。2024年9月30日閲覧。
- ^ 福島良一「日本のプロ野球では前人未到の40―40 最も惜しかったのは43本塁打38盗塁」『スポーツ報知』2024年8月25日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Eric Thames becomes first with 40–40 in S. Korean baseball; Park Byung-ho sets RBI mark”. Yonhap. (October 2, 2015) 2 October 2015閲覧。