2013年韓国サイバー攻撃
2013年3月20日、韓国の放送局3組織、銀行3組織、併せて6つの組織のコンピュータシステムが、サイバー攻撃が疑われる事態の中で同時に使えなくなり、銀行ATMやモバイル決済が影響を受けた [1]。 韓国においては3·20電算大乱とも呼ばれる。
コンピュータシステムに被害が生じた組織は、韓国放送公社(KBS)、文化放送(MBC)、YTN、農協、新韓銀行、済州銀行であった。
大韓民国放送通信委員会(KCC)は、サイバー攻撃についての警報レベルを5段階あるうちのレベル4(関心)からレベル3(注意)に引き上げた。2009年にあった同様の事態については北朝鮮の関与が疑われたので、今回の攻撃についても疑われた。
当初、韓国の当局は、農協の事例について中華人民共和国のIPアドレスと結びつけたため、北朝鮮による攻撃の疑いが高まった。インテリジェンスの専門家の間では「北朝鮮は、そのサイバー攻撃を隠すため恒常的に中華人民共和国のIPアドレスを使っている」と信じられているからである[2]。しかし、その発信元IPアドレスは農協内のプライベートIPアドレスとして割り当てられていたものと判明した[3]。
原因分析
編集この攻撃に使われたワイパー型マルウェアは、「DarkSeoul」などと呼ばれており、2012年に識別されたものである。 (別名:Trojan.Jokra [6]、Mal/EncPk-ACE、Win-Trojan/Agent.24576.JPF [7] 等)
このマルウェアは、韓国製のウイルス対策ソフトウェア(ハウリとアンラボ)を無力化する機能を備えている。
また、このマルウェアは、2013年3月20日午後2時になると、システムを破壊するように設計されていた。 具体的に、Windows PCのハードディスクのMBR(Master Boot Record)などの領域を破壊して強制的に再起動させたので、OSが起動しない状態となった。
KISA(Korea Internet Security Agency)は、「パッチ管理システム(PMS)経由でマルウェアが配布された」と分析した [8]。
脚注
編集- ^ 浅川 直輝 (2013年4月4日). “韓国激震、サイバー攻撃が同時多発 パッチ管理システムを突かれる”. ITpro. 2015年7月14日閲覧。
- ^ “China IP address link to South Korea cyber-attack”. BBC News. (2013年3月21日) 2015年7月14日閲覧。
- ^ 高橋 睦美 (2013年3月22日). “韓国のサイバー攻撃、アクセス元は社内のプライベートIPアドレス”. @IT 2015年7月14日閲覧。
- ^ “大規模サイバー攻撃に北朝鮮関与、「証拠ある」韓国当局”. CNN. (2015年4月23日) 2015年7月14日閲覧。
- ^ “北朝鮮「サイバー部隊」の攻撃力 韓国専門家が分析”. 日本経済新聞. (2015年4月25日) 2015年7月16日閲覧。
- ^ “Trojan.Jokra”. Symantec (2013年3月30日). 2015年7月15日閲覧。
- ^ “ウイルスデータベース Win-Trojan/Agent.24576.JPF”. アンラボ (2013年3月20日). 2015年7月15日閲覧。
- ^ “「3万2000台が被害」 韓国サイバー攻撃の全貌”. 日本経済新聞 (2013年3月22日). 2015年7月24日閲覧。
参考文献
編集- 伊東 寛『サイバー・インテリジェンス』祥伝社、2015年、51頁。ISBN 4396114346。
- 山崎 文明『情報立国・日本の戦争』角川新書、2015年、46頁。ISBN 404102546X。