2-0は危険なスコア
2-0は危険なスコア(英語: 2-0 lead is the worst lead)は、スポーツ競技で使用されるクリシェで[1][2][3]、あるチームが2-0のスコアでリードしているときに、チームがそのリードで自己満足に陥りかねない状況を指している[4]。特にサッカーの試合で使われる言葉だが、ハーフタイムの時点でこの点差になっているときだけ言われがちである。またアイスホッケーのように、2点のリードがそれなりに大きいスポーツでも警句として使われる場合がある。
このクリシェはチェコのサッカー指導者ヨセフ・チャプラールによって提唱されたため、チェコではチャプラールの罠(チェコ語: Csaplárova past)と呼ばれている[5][6]。セルビアのサッカー指導者ミラン・ジヴァディノヴィッチも2-0は最も危険な結果(セルビア語: 2:0 је најопаснији резултат)という表現を多用した[7]。元オーストラリア代表のサッカー解説者ジョニー・ウォーレンもこのクリシェを使うことで知られている[8]。
概要
編集このクリシェが何を言いたいかといえば、2-0でリードしているチームは自己満足してしまい[9]、その得点差について「間違った安心感」を持ってしまうということにある[10]。もし相手に点を返されてスコアが2-1になろうものなら、チームはパニックに陥ってさらなる失点を喫し、引き分けになってしまうどころかいずれ逆転される可能性さえある。それとは対照的に、1-0でリードしているチームは、集中力をもってプレーを続け、僅差を守りつつリードを広げようとする傾向にあるし、3点以上の差をつけてしまえば逆転される可能性ははるかに薄くなる、という考え方が「2-0は危険なスコア」の根拠になっている。
このクリシェは2-0のスコアになった後も選手たちのひたむきさを維持しようと激励するコーチ陣の言葉にみられる[11]。またスポーツ実況において、解説者やスタジオにいる専門家が、試合結果はまだわからないとアピールして視聴者が試合から興味を失くさないために言う場合もある。
データをひもとくと、2-0が本当に危険なスコアだとはいいがたい。サッカーに関していうと、ハーフタイムの時点で2-0の点差をつけているチームが逆転敗けを喫するのは、全体の2パーセントである[12]。逆に言うとクリシェがあてはまる場合もある。元イングランド代表のサッカー解説者ゲーリー・リネカーは、2016年にリヴァプールFCがAFCボーンマス相手に2-0でリードしてハーフタイムを迎えた際にTwitterでこのクリシェに疑問を呈した[13]が、試合はリヴァプールが3-4で敗れた[14]。
アイスホッケーでも、2点差をつけてリードしているチームがたいていはそのまま勝利しており、1点差の場合のほうが逆転の可能性は高いという統計データがある[15]。実際にはこのクリシェを口にする人間も、2-0が考えうるかぎりで最も危険なスコアではないことは重々承知の上でそう語っているということでもある[16][17]。
一方でサッカーを中心に様々なスポーツのデータを取得・解析する日本企業データスタジアムは、2-0というスコアそのものは圧倒的な優位であることは前提としつつも「『2-0は(2-1にされると、1-0より)危険なスコア』」[18]とはいえるのではないかと分析している。
脚注
編集- ^ “Proof 2-0 is a most dangerous lead”. ABC News (22 May 2014). 9 December 2016閲覧。
- ^ Popik, Barry. “The worst lead in hockey is a two-goal lead”. www.barrypopik.com. 9 December 2016閲覧。
- ^ “4 Reasons Why a 2-0 Lead is Ice Hockey's Worst Lead”. LinkedIn (9 December 2016). 18 July 2022閲覧。
- ^ “2:0 - TheNH most dangerous score in the game”. Goalden (10 June 2010). 9 December 2016閲覧。
- ^ o2sport.cz (7 September 2015). “Csaplár efekt se nepotvrdil, Francie volá národní tým!” (チェコ語). O2 Sport 9 December 2016閲覧。
- ^ “Bednář a Lafata si překáželi. Plzeň skřípla Csaplárova past”. Aktuálně.cz - Víte co se právě děje. 9 December 2016閲覧。
- ^ Mozzart Sport (4 March 2016). “Kako ono reče Živa – 2:0 je najopasniji rezultat” (セルビア語). 15 July 2018閲覧。
- ^ Mangan, Patrick (2010). Offsider - a Memoir: How a Scrawny Pommy Kid Learned to Love the Socceroos. Australia: Melbourne University Publishing. pp. 207. ISBN 978-0522857214 . "At some stage in the previous twenty minutes, in the TV gantry not far of us, Johnny Warren no doubt uttered one of his favourite truisms: that a 2-0 is a dangerous lead. It breeds complacency, he liked to say. The Socceroos didn't needed reminding - now."
- ^ M, Alex (22 June 2007). “Kicker Conspiracy: The most dangerous lead”. Kicker Conspiracy. 9 December 2016閲覧。
- ^ “2–0, the cliché goes, is the most dangerous scoreline”. Montreal Impact (2016年12月9日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。[リンク切れ]
- ^ “The Most Dangerous Lead in Soccer: 2–0” (英語). Soccer Classroom. (27 June 2011) 9 December 2016閲覧。
- ^ “OptaJoe on Twitter”. Twitter 9 December 2016閲覧。
- ^ @GaryLineker (2016年12月4日). "When did 2-0 up become a dangerous score? Hear it so often now. Would like to know percentage of games lost from there? Suspect not high". X(旧Twitter)より2022年7月18日閲覧。
- ^ “Bournemouth 4-3 Liverpool” (英語). BBC Sport. (4 December 2016) 9 December 2016閲覧。
- ^ “"The Most Dangerous Lead in Hockey" – Fact or Myth?” (英語). PuckScene.com. (19 August 2011) 9 December 2016閲覧。
- ^ Taylor, Mark (6 March 2016). “The Power of Goals.: "Martinez Blows Most Dangerous of Leads"!”. The Power of Goals.. 9 December 2016閲覧。
- ^ “Debunking the myth of the 'dangerous two-nil lead'”. The World Game 9 December 2016閲覧。
- ^ “2-0は本当に『危険なスコア』か?”. 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ. 2022年7月19日閲覧。