(おく)は漢字文化圏における単位の一つ。現在の日本中国朝鮮ではいずれも 108 を表す。

億の定義

編集

当初は、10倍ごとに位取りの名称を定める「下数」が行われていたので、・億で「億」は 105 となる。しかし代にはすでに 108 を億とすることが一般に行われており、『漢書』律暦志には「一億三千四百八萬二千二百九十七」のような数が見える。

億は「上数」でも「中数」の万万進・万進でも同様に 108 となる。

ベトナム語の億(ức)は下数によって 105 を意味する。108 は「một trăm triệu」(文字通りには一百兆、兆は百万にあたる)という。

億の位および前後の位の命数は以下のようになる。

下数 万進(現在) 万万進・上数
104 104 一万 104 一万
105 - -
106 107 千万 107 千万
- 108 一億 108 一億
109 十億 109 十億
1010 百億 1010 百億
1011 千億 1011 千億
1012 一兆 1012 一万億
- 1013 十万億
1014 百万億
1015 千万億
1016 一兆

漢字

編集

漢字の「億」は音符の「意」と意符の「人」を合わせた形声文字である。「億」は漢の時代に作られた文字で、それ以前は「意」または「𠶷」が使われていた。[1]

漢訳仏典の億

編集

漢訳仏典では「億」はいくつかの異なった値として使用される。十万(105洛叉)を億とする下数の用法があり[2]、また千万(107、サンスクリットのコーティ(koṭi, 倶胝くてい))の訳語として使われる場合もある[3]。後者の意味で億が使われた例として、『華厳経』光明覚品で三千大千世界に百億の閻浮提ほかがあるというのは、今でいう十億(109)を意味する[4]

脚注

編集
  1. ^ 張世超、孫凌安、金国泰、馬如森 『金文形義通解』 中文出版社、1996年、481頁。
    季旭昇撰 『説文新証』 芸文印書館、2014年、160-161頁。
  2. ^ 翻訳名義集』 巻三・數量篇第三十六https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&mode2=1&num1=2131&num2=&vol=54&page=1106。「『倶舍論』五十二數。皆從一増至十也。謂一。十。百。千。萬。洛叉(億也)度洛叉(兆也)倶胝(京也)」 大正蔵2131、1106頁)
  3. ^ 大智度論』 巻四・初品中菩薩釋論第八https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&mode2=1&num1=1509&num2=&vol=25&page=87。「十十名百。十百名千。十千名萬。千萬名億。」 大正蔵1509、87頁)
  4. ^ 『梵文和訳 華厳経入法界品』 中、岩波文庫、2021年、408頁。ISBN 9784003334522 

関連項目

編集