髄膜炎菌
髄膜炎菌(ずいまくえんきん、Neisseria meningitidis)とは、主に髄膜炎を生じる細菌。
髄膜炎菌 | |||||||||||||||||||||
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Neisseria meningitidis
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Neisseria meningitidis Albrecht & Ghon 1901 |
歴史
編集特徴
編集淋菌と同じナイセリア属のグラム陰性双球菌で、ヒトが保菌者であり鼻腔や上咽頭から分離される。飛沫感染により伝搬する。日本では戦中戦後に感染流行があったが、2014年では年平均30人以下になっている。5度以下の低温では不活化(死滅)してしまう。
血清型
編集- 血清型:serogroup
- 莢膜多糖体の種類で基本的に以下の13種類に類別される。臨床的に感染症状を生じるものは「A, B, C, Y, W-135」がほとんどである。
- A, B, C, D, X, Y, Z, E, W-135, H, I, K, L
- Multilocus sequence typing:MLST
予防
編集予防接種は、主に以下の2種類がある。2歳以上の小児に接種が推奨。血清B群の精製莢膜多糖体ワクチンは免疫惹起力が非常に弱いとされ、有効な予防ワクチンの開発は難渋されている。
- 多糖体ワクチン(Meningococcal polysaccharide vaccine:MPSV4)
- A、C、Y、W-135群の莢膜多糖体抗原製剤。
- 結合型ワクチン(Meningococcal conjugate vaccine:MCV4)
- A、C、Y、W-135群の莢膜多糖体抗原に、以下の蛋白を結合させた製剤。
- Meningococcal polysaccharide diphtheria toxoid conjugate vaccine(MCV4-DT):ジフテリアトキソイドに結合させたもの(メナクトラ:Menactra®)
- Meningococcal oligosaccharide diphtheria CRM197 conjugate vaccine(MCV4-CRM):無毒化の変異ジフテリアトキソイド(CRM197)に結合させたもの
- Meningococcal polysaccharide tetanus toxoid conjugate vaccine(MCV4-T):破傷風トキソイドに結合させたもの
2歳未満には原則として投与しないが、どうしても必要な理由がある場合には生後3ヶ月から2歳未満の接種をしても良い。小児期には基本的にMCV4が推奨されているが、近年、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎の報告例(因果関係未証明)があったため、MCV4をためらいMPSV4を選択する親や医療従事者もある。なお、思春期以降は従来通りMPSV4を投与するのがよいとされ、下述、流行地域への渡航の際は海外ではMPSV4が一般的であるが、日本ではMCV4-DTのみ認可されている。
髄膜炎菌はアフリカ・中東を中心に流行し、アフリカでは「髄膜炎ベルト」と呼ばれるように、サハラ以南を中心に流行地帯がある。特にサウジアラビアのメッカへの巡礼(ハッジ)において流行することが多いため、参加する場合はワクチン接種が、ハッジ(大巡礼)では査証取得に必須、ウムラ(小巡礼)では推奨されている。
それ以外の地域も散発的に発生するため、一般論としては、予防接種を終了してからの渡航が賢明であろう。また米国・英国の学校に入学(特に入寮)する際に接種証明が求められることが多い。多くの州では努力義務、または免責書類に署名。
日本でのワクチンは自由診療であり、上記の渡航前の他に、発作性夜間血色素尿症(PNH)における分子標的治療薬「エクリズマブ(ソリリス)」を投与する患者や、脾臓摘出術や無脾の患者への摂取が推奨されている。
治療
編集基本的に抗菌薬としてペニシリン系やセフェム系抗生物質が有効。また、感染接触者への予防投与としてリファンピシン等投与も行われる。