館林ストーカー殺人事件
館林ストーカー殺人事件(たてばやしストーカーさつじんじけん)とは、2014年(平成26年)2月に群馬県館林市で発生した殺人事件である。
概要
編集事件当日
編集2014年(平成26年)2月19日午後3時頃、群馬県館林市のディスカウントストアの駐車場に駐車されていた軽乗用車の運転席で女性の射殺体が発見された[1][2]。車のドアには鍵がかかっておらず、被害女性の携帯電話や財布や買い物をした商品が車内で残されていた[3]。司法解剖の結果、午後2時50分に被害女性は頭を撃ち抜かれて射殺されたものとみられたが、車内から銃は発見されなかった[3]。
被害女性がストーカー被害を訴えていたことから、警察は怨恨による殺人の可能性を視野に元交際相手でトラック運転手の男を対象に捜査をし、翌日(2月20日)には殺人容疑で逮捕状を取った[4]。しかし、2月21日に元交際相手の男は栃木県鹿沼市の山中で停車されていた軽自動車の中で射殺体として発見された[5][6]。車内には死亡した男のすぐそばに被害女性射殺をにも使われたと思われる回転式拳銃があり、自殺したものと判断された[5]。
事件以前からの流れ
編集被害女性は、2013年(平成25年)11月1日に当時住んでいた栃木県佐野市で「元交際相手の男に暴行を受けた」と被害届を提出していた。栃木県警察本部は翌日(11月2日)に暴行容疑で男を逮捕[7]。11月22日に男は釈放されたが、被害女性の意向を受けた栃木県警察本部はストーカー規制法に基づく文書警告を出した[3][7][8]。12月3日に被害女性は男の土地鑑がない群馬県大泉町の知人宅に転居し、12月5日には住民票の閲覧制限を申請した[9]。
元交際相手の男は、2014年1月22日と2月7日に被害女性の家族が栃木県小山市内の勤務先に駐車していた乗用車のドアの隙から覚醒剤を入れた後、公衆電話から匿名で警察に通報し、被害女性の家族が逮捕されるよう仕向けた[10]。家族が逮捕された後に面会に訪れた被害女性を追跡すれば居宅を突き止めると考えたが、家族は逮捕されなかったため失敗した[10]。
次に元交際相手の男は被害女性の家族の車にGPSを取り付け、家族が被害女性と接触をしたことによって、2月19日の数日前に被害女性の居宅を突き止め、さらに被害女性の車にも別のGPSを取り付けた[10]。元交際相手の男はこのGPS情報を基に被害女性の居場所を掴んで、被害女性射殺という犯行に及んだものとみられた[10]。
元交際相手の男の協力者として被害女性の家族の車に覚醒剤を入れた後に公衆電話から警察に通報した行為について覚醒剤取締法違反(所持)罪と虚偽告訴罪で6月23日に元交際相手の男の知人が起訴された[11]。
また、元交際相手の男の知人は被害女性の家族の車にGPSを取り付けた行為について、殺人を助けたとして殺人幇助容疑で7月30日に逮捕されたが、8月20日に嫌疑不十分で不起訴処分となった[12]。
6月28日に元交際相手の男の携帯電話の履歴から、元交際相手の男へ回転式拳銃1丁と実弾数発を譲り渡した疑いがあるとして銃刀法違反容疑で暴力団組員の男が逮捕されたが、嫌疑不十分で不起訴処分となった[13]。
9月19日に前橋地裁(斉藤学裁判官)は、覚せい剤取締法違反罪と虚偽告訴罪で起訴された元交際相手の男の知人に対して懲役3年、執行猶予5年(求刑:懲役3年6月)の有罪判決を、家族が逮捕されれば被害女性が訪れるであろう栃木県警察本部小山警察署周辺で見張っていた行為について虚偽告訴罪の共犯として起訴された元交際相手の男の知人に対して懲役2年6月、執行猶予5年(求刑:懲役3年)の有罪判決をそれぞれ言い渡した[14]。
脚注
編集- ^ “頭撃たれ26歳女性死亡 群馬・館林の駐車場、殺人で捜査”. 日本経済新聞. (2014年2月20日). オリジナルの2022年12月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ “駐車場の車内で女性死亡 群馬・館林、殺人事件で捜査”. 朝日新聞. (2014年2月20日) 2014年2月23日閲覧。
- ^ a b c “群馬女性殺害 被害者、直前まで知人と電話”. 産経新聞. (2014年2月21日)
- ^ “「元交際男の知人に組員」 群馬・館林の殺害女性、周辺に話す”. 日本経済新聞. (2014年2月22日). オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “元交際相手、拳銃自殺か 館林の女性殺害”. 日本経済新聞. (2014年2月21日). オリジナルの2021年5月17日時点におけるアーカイブ。
- ^ “車の遺体は元交際相手 群馬・館林の女性射殺”. 朝日新聞. (2014年2月21日) 2014年2月23日閲覧。
- ^ a b “殺害女性、過去にストーカー被害 群馬の射殺?遺体”. 朝日新聞. (2014年2月20日) 2014年2月23日閲覧。
- ^ “元交際相手の自宅を殺人容疑で家宅捜索 館林・女性射殺”. 朝日新聞. (2014年2月22日) 2014年2月22日閲覧。
- ^ “殺害の26歳女性、ストーカー被害で住所は閲覧制限 昨年暮れに転居”. 産経新聞. (2014年2月20日) 2014年3月21日閲覧。
- ^ a b c d “館林ストーカー殺人 GPSで被害者位置特定 家族の車に取り付け 群馬”. 産経新聞. (2014年7月31日). オリジナルの2022年4月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ “女性射殺事件で暴力団組員逮捕 自殺の元交際相手に拳銃譲り渡し容疑で”. iza. (2014年6月28日). オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “(ピックアップ)殺人ほう助、不起訴 女性射殺事件で前橋地検”. 日本経済新聞. (2014年8月21日). オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ “館林の女性射殺:銃譲り渡し容疑で逮捕の男性不起訴 証拠不十分 /群馬”. 上毛新聞. (2014年7月19日)
- ^ “館林女性射殺に関与2被告に有罪 前橋地裁判決「安易に犯行加担」”. 産経新聞. (2014年9月20日). オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
外部リンク
編集- 館林ストーカー殺人事件で見え隠れする「警察の過失」 週刊文春 2014年2月27日
- 館林ストーカー殺人 本当に防げぬ事件だったか 産経新聞 2014年12月24日