風眼抄
作品の概要
編集山田風太郎が1963年(昭和38年)から、1979年(昭和54年)まで、文芸誌、新聞、文学全集の月報などに発表した随筆から編纂されたものである。内容は三部構成となっており、第一部は自らの生い立ちと知友との思い出、第二部は作品の生まれた背景や自らの歴史観について、第三部は文学論が中心となっており、自身の作品におけるルーツのひとつである推理小説に関しても頁が割かれている。また、所々に自身の趣味や日常生活についても話題が引かれており、全体的に筆致はやわらかくユーモアに富んだものとなっている。
出版状況
編集『風眼抄』の単行本は1979年(昭和54年)、六興出版より新書判で出版された。装訂は田村義也が担当。山田は出版にあたり、作品選択を出版社に一任し、六興出版編集部にて48篇が選ばれた。山田は本書のあとがきで、「もし長期入院などの事態が起こったら、高名の作家の随筆に加えて、自分のこの平凡な随筆を持ってゆくことになるかも知れない」と述べており、自分が編集に関与していないにもかかわらず、その出来ばえに満足していたと思われる。『風眼抄』は、下記の文庫判で出版され、山田の代表的な随筆集となった。
収録作品タイトル
編集タイトルの表記は中央公論新社版に拠る。
第一部
編集- わが家は幻の中
- 旧友
- 私のペンネーム
- 私の処女作
- わが町・わが本
- 昭和六年の話
- 暗い空の文字
- ある古本屋
- 自分用の年表
- 「警視庁草紙」について
- 伝奇小説の曲芸
- 酒中日記 旧師との再会
第二部
編集- 飲めば寝るゾ
- 明治人
- 私のケチな部分
- 坐る権利
- 廃県置藩説
- くせの話
- 人間ラスト・シーン
- 同名異人
- 蟹と大根
- 昔のものはほんとうにうまかったか
- 招かない訪問者
- 麻雀血涙帖
- 春愁糞尿譚
- 花のいのち
- 日本駄作全集のすすめ
- 風山房風呂焚き唄
- 今は昔物語