電子悲劇/〜ENOLA
電子悲劇/~ENOLA(でんしひげき/エノラ)は、日本の音楽グループであるP-MODELの11枚目のスタジオ・アルバム。
『電子悲劇/~ENOLA』 | |||||
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P-MODEL の スタジオ・アルバム | |||||
リリース | |||||
録音 |
MASTER RECORDING STUDIO INTERNAL STUDIO STUDIO PARKSIDE | ||||
ジャンル |
テクノポップ ワールド・ミュージック | ||||
レーベル | 日本コロムビア/TESLAKITE | ||||
プロデュース | P-MODEL | ||||
P-MODEL アルバム 年表 | |||||
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平沢進関連のアルバム 年表 | |||||
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『電子悲劇/~ENOLA』収録のシングル | |||||
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1997年11月29日に日本コロムビアより発売された。アメリカ最大の音楽レビューサイト、「Rate Your Music」の『史上最高の日本の音楽アルバム』にて16位[1]。
2009年10月11日にオンデマンドCDとして再発売し、2011年9月21日にはデジタルリマスタリングされた上、シングル「ASHURA CLOCK」「LAYER-GREEN」収録の計6曲が追加されて「電子悲劇/~ENOLA (+6)」として再発売されている。
概要
編集ドラムスの上領亘脱退後、三人体制となったP-MODELの初アルバム。P-MODELの作品としては珍しく、平沢進・小西健司が各4曲、福間創が3曲と、メンバー全員がバランスよく作曲している[2]。
ハードディスクレコーダー(ローランド・VS-880)を導入し、タイでのレコーディングも行った[3]。
オリジナル版はCD-EXTRA仕様となっており、1997年に行われたライブ『非局所性LIVE』のダイジェスト映像と後述する物語が閲覧できる。
物語について
編集マキシシングル『ASHURA CLOCK』、『LAYER-GREEN』より、「インターネット・オリエンテーション」と題し、リスナー参加型企画『レイヤー・グリーンの危機 -議定書(プロトコル)を探せ-』がスタート[4]する。
この企画はP-MODELのメンバーとリスナーが主人公となったSF物語であり、本作はこの物語のサウンド・トラックのような内容になっている[5]。楽曲のタイトルや歌詞も物語のキーワードや登場する人物や物体となっている。
シングル二作と本作はCDのデータ部に物語が書かれたHTMLファイルが収録されており、リスナーはストーリーに沿って、QuickTimeまたはShockWaveを用いた映像や謎解きゲームを楽しめる内容となっている。
物語に至るまでの経緯
編集前作『舟』、ライブツアー『電子舟訪日行脚』から引き続き「情報電子帆船P-MODEL号がサイバー・スペースへ旅に出る」というストーリーが続いている。
1996年10月、日比谷野外音楽堂にて行われたライブイベント『Branch-O』にて、P-MODEL号は"不定形巡航体制"に移行する事を発表。この公演をスタート地点として、各メンバーがそれぞれ分かれてソロ活動を行う『Unfix』プロジェクトが開始。このプロジェクトはマキシ・シングル「Unfix#1 Rocket Shoot」から始まり「Unfix #8」にてメンバーが集結し終了する予定であった[3]。
同年11月に新宿・LIQUIDROOMにて開催されたオールナイト・イベント「Unfix #3 コミュノ・ハイブリディア」にてメンバーが一時集結し、各々ソロでのパフォーマンスが行われる予定だったが、当日になり急遽平沢が欠席。不完全な状態で公演は行われたが、その後に予定していたイベント「Unfix #5 ススムとケンジ」も公演中止となる。
翌年の1997年にはメンバーの上領が航路を変更(脱退)した事を発表し[6]、三人体制となった事で「Unfix」プロジェクトは計画を変更となる。「Unfix #8」がマキシ・シングル『ASHURA CLOCK』、「Unfix #9」が追加され、マキシ・シングル『LAYER-GREEN』となった。
物語のあらすじ
編集『Unfix#1 Rocket Shoot』・『Unfix #3 コミュノ・ハイブリディア』
編集コミュノ・ハイブリディア島の電子部族との交流をしたP-MODEL号船員達。部族から電子の海洋に支流があることを聞く。船員達は各自で支流の調査を実施し、やがて「緑の領域」の存在について知る。
『Unfix #8 ASHURA CLOCK』
編集「緑の領域」の調査を進めた船員達は、「緑の領域」がサイバー・スペースの楽園である「レイヤー・グリーン」であることが判明する。しかし、そこへ入るには「非線型方程式」を解かなければならなかった。これらを解析したP-MODEL号はレイヤー・グリーンへ突入するが、その際にトラブルが発生してしまう。トラブルによって「モノクロの丘」へと不時着した船員達は「5DEM」の導きによりレイヤー・グリーンを目指すのだった。
一方で振動性の病原体である「ENOLA」が突入時のトラブルによって誕生し、瞬く間にレイヤー・グリーンに蔓延してしまう。
『Unfix #9 LAYER-GREEN』
編集5DEMの導きにより様々な困難を乗り越えた船員達はレイヤー・グリーンに無事に到着。ここでは奇妙な部族が平和に暮らしていた。船員達は電子僧侶の使いの猿である「4DEM」と出会い、4DEMと共にレイヤー・グリーンを救う旅が始まった。「非局所性農民を訪ねよ」という5DEMの思念を取ったP-MODELと4DEMは農民の住む地域へタクシーで向かった。
しかし、タクシーは事故を起こしてしまい、タクシードライバーは死亡。このタクシードライバーは5DEM自身だったのである。
『万国点検隊 非局所性緑色免疫団』
編集ENOLAの調査を進めていた船員達は、巨大な商用ネットワークを管理している「マクロソフト社」がENOLAを利用した人体実験の陰謀を知る。
マクロソフト社はENOLAを利用して全世界のコンピューターを自社製のホストパソコンへ従属させる計画を立てていた。マクロソフト社はP-MODELのデータベースに侵入し、社名を偽り旅行の案内状を送付。案内状を受け取った者達は「P-MODELにワクチンを届けよう」との触れ込みで「非局所性緑色免疫団」を結成し、インドネシア・バリ島を舞台に様々なイベントに参加することとなった。
様々な試練を乗り越えた免役団はENOLA予防薬を作製する事に成功。免役団全員が予防薬を服用して帰国していったが、数日後、免疫団全員がENOLAに感染していた事が判明する。
『電子悲劇/~ENOLA』
編集死んでしまった5DEMの断片「Pragma」を集めた船員達はそこに書いてある文字を唱えれば5DEMは復活するとして、非局所性農民の住む村でキーワードを唱えた。
しかし、農民たちにもENOLAの症状が現れる。一刻も早く「COOSHINプロトコルの書」を探し出さなければいけない状況に陥ったP-MODELは、ある老人から「BLACK IN WHITE」に乗って「COLOR-ZERO」に行けばプロトコルの書が見つかると聞く。P-MODELはBlack in White船団とCOLOR-ZEROへ航海の旅へと出た。
補足
編集この物語は、シングル・アルバム・ライブの他、万国点検隊[7]やインターネット上のやりとりでストーリーが繋がるという試みが行われた。
インターネット上の参加者は「オンライン・ヴォイジャー」と名付けられ、P-MODEL号も彼らを含む船団「Black in White船団」として物語が進んでいった。
ライブツアー『LIVE 電子悲劇』では、病原体ENOLAに侵されたレイヤーグリーンを救うプロトコルを探すため、P-MODEL号がCOLOR-7からCOLOR-0に向かうとの触れ込みでツアーが開始。ストーリーの結末はツアー最終日『LIVE電子悲劇 COLOR-0』でのみ説明されたため、ストーリーの全貌は不明であったが、2010年にP-MODEL30周年・ソロ20周年特設サイト「凝縮する過去 還弦主義8760時間」で閲覧できた(2020年9月現在、サイトは休止中となっている)。
収録曲
編集- ENOLA
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- タイトルはALONE(孤独)の倒語。これとは別に「病」をテーマとしており、「レイヤーグリーンの危機」や「LIVE電子悲劇」でも病原菌の名として登場する。
- HIDDEN PROTOCOL(release 2)
- 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
- シングルバージョンにあったイントロのドラムが無くなっている他、間奏のドラムソロがステレオ再生される。
- BOGY
- 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
- サビ以外は福間が歌唱を担当している。
- Rocket Shoot Ⅱ
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- シングルバージョン「Rocket Shoot」とはボーカルパートが大きく異なる。
- ENN
- 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
- メインボーカルは小西。平沢はサビの一部分で小西とは違う歌詞を同時に歌っている。
- 衛星ALONE - Satellite ALONE
- 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
- オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークとクラフトワークのオマージュとなっており、福間が作り上げたデモを初めて聞いた際の小西の印象は「おぉOMD」だった[8]。後にデモ音源は福間によってSoundCloudで公開されている[9]。
- LAYER-GREEN(ver.1.05 Gold)
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- シングルバージョンの間奏ではキーボードがメインであったが、こちらではギターがメインで演奏されている。
- Spiritus
- 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
- ASHURA CLOCK(Discommunicator)
- 作詞:平沢進/作曲:平沢進・福間創/編曲:P-MODEL
- シングルバージョンよりも若干短くなっている。
- 歌詞の一部に人身売買を連想させるフレーズがあり、レコード制作基準倫理委員会に指摘されたため当て字となっている。
- 福間の連絡ミスからギターソロ部分に歌詞を入れてしまったため、制作段階では幻の4番が存在した[10]。
- 2010年に平沢ソロ作品としてリメイクされ、「突弦変異」に収録された。こちらは平沢の作曲とされている。
- Black in White
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- A Strange Fruit
- 作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
電子悲劇/~ENOLA (+6)
編集- ASHURA CLOCK
- 作詞:平沢進/作曲:平沢進・福間創/編曲:P-MODEL
- COLORS
- 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
- オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークのオマージュ。
- 平沢が福間に「OMDとか好き?」と訊いていた事がきっかけで、エレポップのようなものを作曲したと語る[3]。
- HIDDEN PROTOCOL
- 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
- LAYER-GREEN
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- BA-DA-DHA
- 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
- AFFIRMATION
- 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
参加ミュージシャン
編集- 平沢進 - ボーカル、ギター、キーボード
- 福間創 - ボーカル(「BOGY」)、System-1、バックグラウンド・ボーカル
- 小西健司 - ボーカル(「ENN」)、System-2、バックグラウンド・ボーカル
- Natthacha Yodsoongnern - ナレーション(「BOGY」)
脚注・注脚
編集- ^ “Electropop - Music genre - RYM/Sonemic” (英語). Rate Your Music. 2021年11月5日閲覧。
- ^ “P-MODELディスコグラフィー・電子悲劇/~ENOLA|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site”. susumuhirasawa.com. 2020年6月19日閲覧。
- ^ a b c d 改訂復刻版音楽産業廃棄物. ブッキング. (2005)
- ^ “P-model レイヤーグリーンの危機”. 1997年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月8日閲覧。
- ^ “電子悲劇/~ENOLA (+6) | ディスコグラフィ | P-MODEL | 日本コロムビアオフィシャルサイト”. 日本コロムビア公式サイト. 2020年9月8日閲覧。
- ^ “(なし)” (1997年5月25日). 1997年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月19日閲覧。
- ^ 当時行われていたファンクラブ旅行。毎回とあるストーリーが存在し、要所で発生するイベントに参加する企画。要所でメンバーが登場し、ファンとの交流を図った。前年までは平沢ソロだったが、1997年度は「レイヤー・グリーンの危機」の一環としてP-MODELがメインだった。
- ^ “https://twitter.com/4_d_mode_1/status/936137816261529600”. Twitter. 2020年9月8日閲覧。
- ^ “EiseiAlone Demo1996”. SoundCloud. 2023年1月20日閲覧。
- ^ “2010/4/7 福間創「アシュラクロック」裏話”. Togetter. 2020年6月19日閲覧。
関連リンク
編集- P-MODELディスコグラフィー・電子悲劇/~ENOLA|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site
- 電子悲劇/~ENOLA (+6) | ディスコグラフィ | P-MODEL | 日本コロムビアオフィシャルサイト
- 凝縮する過去 還弦主義8760時間 - 電子悲劇