関西電力300形無軌条電車
関西電力300形無軌条電車 (かんさいでんりょく300がたむきじょうでんしゃ)は、1993年(平成5年)に登場した関西電力の無軌条電車(トロリーバス)。
関西電力300形無軌条電車 | |
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黒部ダム駅に停車中の300形 | |
基本情報 | |
製造所 |
大阪車輌工業(車体) 三菱自動車工業(足回り) スカニア(車両駆動システム)[要検証 ] |
運用開始 | 1993年 |
引退 | 2018年11月30日 |
廃車 | 2018年 |
主要諸元 | |
編成 | 1両 |
電気方式 | 直流600V |
車両定員 | 73(座席36+立席36+乗務員1) |
車両重量 | 12,200kg |
全長 | 11,080 mm |
全幅 | 2,505 mm |
全高 | 3,335 mm |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 |
主電動機出力 | 120kW(端子電圧440V) |
制御装置 | VVVFインバータ制御(GTOサイリスタ素子) |
備考 |
ホイールベース:5,800mm 最小回転半径:10,400mm タイヤサイズ:12R22.5-14 |
概要
編集関電トンネルトロリーバスでは、1964年(昭和39年)の開通以来、100形・200形無軌条電車が使用されてきた。しかし、初期の車両で約30年、最終増備からでも約20年が経過し、車両代替時期を迎えたことから新型車両の導入を行うことになり、製造されたのが本形式である。
本形式の最大の特徴は、日本のトロリーバスとしては初めてVVVFインバータ制御を採用したことである。主要電機品は東芝製のGTO素子によるVVVFインバータ装置が採用されているが、通常の鉄道車両と異なり床下スペースに余裕がないため、最後部の座席下[1]に設置された。
足回りは三菱自動車工業により製造されている。それまでの100形・200形では、14段の変速段をアクセルペダルの踏み込み角度によって進段操作を行うという「手動進段」であったが、本形式ではアクセルペダルの踏み込み角度を電気信号に変更し、自動的にトルクコントロールを行う「自動進段」となる。これにより、通常のトルクコンバータとオートマチックトランスミッションを使用したバスとほぼ同様の運転操作が出来た。また、日本のトロリーバスとしては初めてパワーステアリングを採用。サスペンションは前後共に固定車軸+リーフスプリングで、ショックアブソーバーを備える。
車体は大阪車輌工業製で、日本のトロリーバスでは初となるスケルトン車体を採用した。これにより、丸屋根から平屋根に近い形状となり、車内荷物棚の収容力が向上した。また、側面窓は逆T字形の半固定窓が採用され、100形・200形の一段上昇式(バス窓)と異なり、着席している乗客が窓から手を出すことはできない。床構造はそれまでの18mm厚の難燃性合板から3mm厚の硬質アルミ板となった。
前中扉配置で、前扉は幅930mm(有効幅750mm)の折戸、中扉は幅900mmの外吊式両開き引戸が採用された。後部右側には450mm幅の非常口が設置されている。車内は前向きシートで、客用扉側(進行方向左側)は1人がけ座席がドア間に5脚・中扉以降に4脚、非常口側(進行方向右側)には2人がけ座席を11脚配置。シートピッチは700mmであるが、後部ではやや広くなる。最後部座席は5人まで着席できる。運行区間が関電トンネル内だけという事情から冷房装置は設置されず、天井にクロスファンが合計7基設置された。正面屋根上には標識灯が設置され、1台での単独運行と複数台運行の最後部車両は左右の橙色の灯具2基、それ以外は中央の緑色の灯具1基を点灯していた。
100形・200形では正面の前面窓上部にワンマン表示と方向幕が設置されていたが、本形式では省略され、後述のラッピングで車体側面に運行区間を表示した。
1993年に3台が製造され、以後毎年3台ずつ増備され、100形・200形を全て置き換える。
2018年時点では15台が扇沢駅 - 黒部ダム駅間で運行されていた。
ラッピング
編集2013年(平成25年)に、黒部ダムの完成50周年を記念し、全車両に初めてラッピングフィルムが採用される。ダムの観光放水で現れる虹と、マスコットキャラクター「くろにょん」が描かれたイラストが正面の窓下と、進行左側の乗降ドア間に貼付。「おかげさまで50周年」のキャッチコピーも印刷されていたが、翌2014年(平成26年)はトロリーバスの開業50周年だったため、修正や撤去はせずに、そのままの状態で2年間運行を続けた。
2015年(平成27年)にはキャッチコピーを修正し、正面のリボンは「関電トンネルトロリーバス」、側面のリボンは「Welcame to Kurobe Dam」、くろにょんが持っていた50周年の看板は「黒部ダム駅-扇沢駅」の行先表示器風の書体に書き換え、引き続き使用していた。
トロリーバス廃止による引退
編集2017年(平成29年)8月28日、関西電力が国土交通省北陸信越運輸局に、本路線の充電式電気バス転換に伴う鉄道事業廃止の届出を行ったことを発表した[2]。翌2018年の営業開始前に、全ての車両の正面窓下に付けられていた社章は取り外され、2019年に運行を開始した電気バスに継承された[3]。空いたスペースに「トロバス ラストイヤー」と書かれた丸型のヘッドマークが、最終運行日まで掲げられた[4]。
本形式は2018年(平成30年)11月30日限りで、25年にわたる運行を終了。同年12月、大型トレーラーで富山県高岡市伏木にある日本総合リサイクルへ陸送され[5]、301号車を残して解体された。301号車も解体の予定とされていたが、ある愛好家が同社に申し入れて解体が先送りとなり、愛好家から残っていることを伝えられた市は、保存に向けたクラウドファンディング(ふるさと納税のスキームを利用)を実施した[6]。地元大町市出身のお笑い芸人鉄拳もトロリーバスのイラストを描いて支援に協力した[7]。その結果、当初の目標額180万円を開始3日目で達成し[8]、屋根の設置やコーティングなどの維持管理費120万円を加えた目標額300万円も6日目で達成[9]。最終的に647万5000円の寄付金を集めてプロジェクトが成立した[10]。2020年11月14日から扇沢駅近くの扇沢総合案内センターにて保存・展示されている[11]。
脚注
編集- ^ リアエンジン式のバスでエンジンが搭載されている場所に相当する。
- ^ “国内のトロリーバス、残り1か所に 関電が廃止、立山黒部貫光が「唯一」に”. 乗りものニュース (2017年8月19日). 2020年3月27日閲覧。
- ^ “立山黒部の新型「eバス」、解体「トロバス」の面影残し快走”. 産経新聞 (2019年9月3日). 2020年5月1日閲覧。
- ^ “関西電力が黒部ダムで「トロバスラストイヤーキャンペーン」を実施”. 共同通信PRワイヤー (2018年4月18日). 2020年3月27日閲覧。
- ^ “関電トロリーバスが日本総合リサイクルへ”. railf.jp (2018年12月19日). 2018年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月14日閲覧。
- ^ “【富山】トロリーバス 保存へ里帰り 高岡から大町 最後の1台出発”. 中日新聞. (2020年9月6日) 2024年9月21日閲覧。
- ^ “大町市出身・鉄拳さんからイラスト付きメッセージ届きました!”. クラウドファンディングサイト「READYFOR」 (2020年4月16日). 2020年5月1日閲覧。
- ^ “目標金額達成!ありがとうございます!”. クラウドファンディングサイト「READYFOR」 (2020年3月12日). 2020年5月11日閲覧。
- ^ “御礼 ネクストゴール到達”. クラウドファンディングサイト「READYFOR」 (2020年3月12日). 2020年5月11日閲覧。
- ^ “解体を待つ奇跡の1台「トロバス」を保存して守りたい!”. 大町市観光協会「信濃大町なび」 (2020年3月12日). 2020年5月11日閲覧。
- ^ “大町の関電トロバスが補修終え、設置完了 14日にお披露目”. 中日新聞. (2020年11月11日). オリジナルの2020年11月14日時点におけるアーカイブ。 2020年11月14日閲覧。
参考文献
編集- バスラマ・インターナショナル18号「日本で唯一 黒部ダム 関電トンネルのトロリーバスに新型車登場」(1993年・ぽると出版)
関連項目
編集- 関電トンネルトロリーバス
- 立山黒部貫光8000形無軌条電車…本形式をベースとして製造された車両。