開かれた社会とその敵
『開かれた社会とその敵』(ひらかれたしゃかいとそのてき、英: The open society and its enemies)は、第二次世界大戦中にカール・ポパーによって著され、広く読まれることになった2巻本である。合衆国では版元が見つからず、1945年にロンドンのラウトレッジ出版社から最初に出版された。
著者 | カール・ポパー |
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国 | 英国 |
言語 | 英語 |
題材 | 歴史主義 |
出版社 | ラウトレッジ |
出版日 | 1945 |
出版形式 | 印刷本(ハードカバーとペーパーバック) |
ページ数 | 361 (1995 Routledge ed., vol. 1) 420 (1995 Routledge ed., vol. 2) 755 (1 volume 2013 Princeton ed.) |
ISBN | 978-0-691-15813-6 (1 volume 2013 Princeton ed.) |
本作は、近代図書館理事会により、20世紀におけるベスト100ノンフィクションのひとつに選定された[1]。
出版
編集ポパーが戦争の間、2つの大洋をこえてニュージーランドという学問的辺境で著述していたころ、哲学や社会科学の真の名士達がこの著作の出版に携わっていた。エルンスト・ゴンブリッチ(出版社の手配の主要な役割を任された)、フリードリヒ・ハイエク(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにポパーを招聘しようとし、それゆえ社会哲学へのポパーの回帰に感激した)、ライオネル・ロビンズ、ハロルド・ラスキ(この2人に原稿がレビューされた)、ジョン・フィンドレイらがその中にいた。3つのタイトル候補が取り下げられた後に、著作のタイトルを提案したのはフィンドレイであった(「一般人のための社会哲学」(A Social Philosophy for Everyman)が原稿の原題だった。「三人の偽予言者 プラトン、ヘーゲル、マルクス」(Three False Prophets: Plato-Hegel-Marx)と「政治哲学批判」(A Critique of Political Philosophy)もまた考慮の末に拒否された)。
構成
編集- 序論
- 第1巻 - プラトンの呪縛
(The Spell of Plato)- 起源と運命の神話
(The Myth of Origin and Destiny) - プラトンの記述社会学
(Plato's Descriptive Sociology)- 第4章 - 変化と静止
(Change and Rest) - 第5章 - 自然と協定
(Nature and Convention)
- 第4章 - 変化と静止
- プラトンの政治綱領
(Plato's Political Programme) - プラトンの攻撃の背景
(The Background of Plato's Attack)- 第10章 - 開かれた社会とその敵
(The Open Society and its Enemies)
- 第10章 - 開かれた社会とその敵
- 起源と運命の神話
- 第2巻 - 予言の大潮 --- ヘーゲル、マルクスとその余波
(The High Tide of Prophecy: Hegel, Marx, and the Aftermath)- 神託的哲学の勃興
(The Rise of Oracular Philosophy) - マルクスの方法
(Marx's Method) - マルクスの予言
(Marx's Prophecy) - マルクスの倫理
(Marx's Ethics)- 第22章 - 歴史信仰の道徳論
(The Moral Theory of Historicism)
- 第22章 - 歴史信仰の道徳論
- 余波
(The Aftermath)- 第23章 - 知識社会学
(The Sociology of Knowledge) - 第24章 - 神託的哲学と理性への反逆
(Oracular Philosophy and the Revolt Against Reason)
- 第23章 - 知識社会学
- 結論
(Conclusion)- 第25章 - 歴史に意味はあるか
(Has History any Meaning?)
- 第25章 - 歴史に意味はあるか
- 神託的哲学の勃興
内容
編集『開かれた社会とその敵』において、ポパーは歴史主義の批判と「開かれた社会」、自由民主主義の擁護とを展開した。この著作は2巻本であり、第1巻は「プラトンの魔力」 (The Spell of Plato)[2] 、第2巻は「予言の絶頂 ヘーゲル、マルクス、その余波」(The High Tide of Prophecy: Hegel, Marx, and the Aftermath)[3] と副題が付けられた。
第1巻の副題はまたその中心的な前提でもある。すなわち、古くからのほとんどのプラトン解釈者は彼の偉大さに惑わされてきた。その際、ポパーは次のように論じる。彼らはプラトンの政治哲学を、欺瞞、暴力、支配者のレトリック、優生学の恐ろしい全体主義的な悪夢として理解するべきであるのに、むしろ害のない牧歌とみなしてきた。
彼の時代の主なプラトン学者と対照的に、ポパーは、プラトンの後年におけるアイデアが彼の師ソクラテスの人道主義的で民主主義的な傾向をなんら説明しないことを主張して、プラトンの思想をソクラテスの思想から分離させた。特に、ポパーは『国家』においてプラトンがソクラテスを裏切ったと非難した。『国家』では、プラトンはソクラテスを全体主義に共感するものとして描いている(ソクラテス問題を見よ)。
ポパーは、社会改革と社会的不満についてのプラトンの分析を称えるが、その解決については拒絶した。これは、切望されやっと生まれでた「開かれた社会」としてのアテナイ民主主義の新興の人道主義的理念についてポパーの読みに依っている。彼によると、プラトンの歴史主義的な考えは、そのような自由主義的な世界観に伴う変化への恐れによって動かされている。ポパーは、プラトンが自身の虚栄心の犠牲者であったとも示唆している。プラトンの構想は最高の哲人王になることために設計されている。
第2巻において、ポパーはヘーゲルとマルクスを批判することへと移る。そこで、2人の考えをアリストテレスへとさかのぼり、2人が20世紀の全体主義の根源であることを論じる。
日本語訳
編集参考文献
編集- ^ Modern Library, 1999. 100 Best Nonfiction
- ^ The Spell of Plato
- ^ High Tide of Prophecy
関連項目
編集外部リンク
編集- 内容詳細(英語)
- 『開かれた社会とその敵』 - コトバンク