遥かな町へ

谷口ジローの漫画

遥かな町へ』(はるかなまちへ)は、谷口ジローが1998年に発表した日本の漫画作品である。2009年に舞台化、2010年に映画化された[1][2]

遥かな町へ
漫画:遥かな町へ
作者 谷口ジロー
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミック
発表号 1998年4月25日号 - 1998年12月10日号
巻数 全2巻
話数 全16話
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概説

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谷口ジローは、『犬を飼う』(1992年)を描き終えたことで、自身の体験や家族の話を創作に活す自信を得ていた[3]。それが『父の暦』(1994年)や本作の発表に繋がった[3]。本作は、あの時こうしておけば違った人生を歩んでいたのではないかという物語であり、今をしっかり生きてゆかなければならないという深意があったと語っている[4]。翻訳されるにあたって、谷口ジローには「蒸発」という事象を欧州の読者に理解してもらえるか懸念があったというが、フレデリック・ボワレの入念な脚色によって、本書は欧州に於いて成功するに至った[4][5]

受賞

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あらすじ

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48歳の中原博史は、酩酊して帰りの列車を乗り間違えてしまった。その列車は、幼少期を過ごした倉吉行きであり、この際、心臓発作で亡くなった母の墓に行くことにした。母の墓前で眩暈に襲われた中原博史は、14歳の自分にタイム・スリップしてしまう。それは、父が蒸発する4か月前の世界だった。

初出

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ビッグコミックで全16話が発表された[4]

  • 第1話 - 第31巻第9号(1998年4月25日(8)号)
  • 第2話 - 第31巻第10号(1998年5月10日(9)号)
  • 第3話 - 第31巻第11号(1998年5月25日(10)号)
  • 第4話 - 第31巻第13号(1998年6月10日(11)号)
  • 第5話 - 第31巻第14号(1998年6月25日(12)号)
  • 第6話 - 第31巻第15号(1998年7月10日(13)号)
  • 第7話 - 第31巻第16号(1998年7月25日(14)号)
  • 第8話 - 第31巻第17号(1998年8月10日(15)号)
  • 第9話 - 第31巻第18号(1998年8月25日(16)号)
  • 第10話 - 第31巻第20号(1998年9月10日(17)号)
  • 第11話 - 第31巻第21号(1998年9月25日(18)号)
  • 第12話 - 第31巻第22号(1998年10月10日(19)号)
  • 第13話 - 第31巻第24号(1998年10月25日(20)号)
  • 第14話 - 第31巻第25号(1998年11月10日(21)号)
  • 第15話 - 第31巻第26号(1998年11月25日(22)号)
  • 第16話 - 第31巻第28号(1998年12月10日(23)号)

単行本

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フランス語のほか、イタリア語、スペイン語、中国語、朝鮮語、カタロニア語、英語、オランダ語、ポーランド語、ドイツ語、クロアチア語及びノルウェー語に翻訳された[22][23]

日本語
1998年と1999年に上下全2巻が出版され、2005年には2巻合冊の全1巻として再版された[22]。2021年には愛蔵本叢書「谷口ジローコレクション[注 6]」の一書として出版された[25]
  • 『遥かな町へ』(上巻)小学館〈ビッグコミックススペシャル〉、1998年11月。ISBN 4-09-183712-3 [26]
  • 『遥かな町へ』(下巻)小学館〈ビッグコミックススペシャル〉、1999年4月。ISBN 4-09-183713-1 [27]
  • 『遥かな町へ』小学館〈ビッグコミックススペシャル〉、2005年1月。ISBN 4-09-183715-8 [28]
  • 『遥かな町へ』小学館〈谷口ジローコレクション〉、2021年12月。ISBN 978-4-09-179366-9 [29]
フランス語
カステルマンから、フレデリック・ボワレのフランス語訳で、第1巻が2002年9月27日に、第2巻が2003年6月4日に、カステルマンの叢書La collection Écrituresから刊行、第2巻発売の際には全2巻を化粧箱に収めた「コフレット(: Coffret)」も発売された。2006年11月17日には、2巻を1冊に合冊した「完全版(: L'Intégrale)」が発行、2010年11月3日には、映画公開に合わせて、映画に関する小冊子が付属した「特別版(: Edition Spéciale Film)」が出版された。

演劇

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フランス語
カステルマンのフランス語訳を原作に、ドリアン・ロセルが演出を担った[38]。2009年2月20日にジュネーブで初演、以来フランス語圏で度々再演された[38][39]
日本語
2022年11月に東京で、ドリアン・ロセルの演出を日本人俳優の出演よって上演された[39]

映画

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遥かな町へ
Quartier lointain
監督 サム・ガルバルスキ
脚本 サム・ガルバルスキ
フィリップ・ブラバン
ジェローム・トネール
原作 谷口ジロー
出演者 パスカル・グレゴリー
レオ・ルグラン
ジョナサン・ザッカイ
アレクサンドラ・マリア・ララ
タニア・ガルバルスキ
シルヴィローラ・マルタン
音楽 エール
公開   2010年5月20日
  2010年5月28日
  2010年11月24日
  2010年11月24日
  2010年11月24日
  2012年11月10日
上映時間 98分
製作国 ベルギー
ルクセンブルク
フランス
ドイツ
言語 フランス語
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フランスで2010年11月24日に公開された原作と同名の映画は、サム・ガルバルスキが監督をし、ジョナサン・ザッカイ、レオ・ルグラン、アレクサンドラ・マリア・ララパスカル・グレゴリーらが出演した[40]。物語の舞台はフランスのナンチュアで、主人公の名はトマ、職業も漫画家と改められた。谷口ジローは主人公の職業が変更された点について抵抗感を覚えたと語っている[41]。この映画の音楽はエールによって作曲された[注 7][40]。谷口ジロー本人も出演している[43]

日本国

劇場での公開はなかったが、2012年に開催された「まんが王国とっとり建国記念 国際まんが博」の関連行事として、同年11月10日に日本語字幕を付けての上映会が開かれた[44]

ビデオソフト
鳥取市が制作し、DVD-Videoを媒体として2013年2月27日に発売された[注 8][45][46]
  • 『遥かな町へ』、2013年2月27日、ZMBY-8381、メディアファクトリー。

余聞

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関連書誌

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脚註

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註釈

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  1. ^ 日本放送協会並びに京都国際マンガミュージアムは、「Festival International de la Bande Dessinée d'Angoulême」を「アングレーム国際漫画祭」と邦訳している[7][8]
  2. ^ 第30回アングレーム国際バンド・デシネ・フェスティバルのアルファアート最優秀脚本賞及びバンド・デシネ書店員賞は、カステルマンが刊行したフランス語版『遥かな町へ』全2巻のうち、2002年に刊行された第1巻に対して贈られた[9]
  3. ^ 第5回べデリ賞の審査員特別賞は、カステルマンの『遥かな町へ』のコフレット(: Coffret)に対して贈られた[14]
  4. ^ 扶桑社の染谷誠は、「Forum International Cinema & Litterature」を「映画と文学に関するフォーラム」と邦訳している[13]
  5. ^ 日本国政府は「Internationale Comic-Salon Erlangen」を「エアランゲン国際コミック・サロン」と邦訳している[19]
  6. ^ 谷口ジローコレクションは、現存する原稿を最新のスキャナで取り込み、セリフなどの文字を打ち直し、判型は初出時と同じB5判、雑誌掲載時に4色印刷及び2色印刷で掲載されたページは全て4色印刷で再現した愛蔵本叢書である[24]
  7. ^ 谷口ジローは『遥かな町へ』をエールの曲を聴きながら描いていて、映画の音楽をエールが担当すると聞いて、その偶然に大変驚いたという[42]
  8. ^ 鳥取県内では2013年2月20日から先行販売された[45]

出典

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  1. ^ Bernard Laurent (2009年). “Quartier lointain” (フランス語). DOSSIER PÉDAGOGIQUE. la Comédie de Genève. 2023年12月8日閲覧。
  2. ^ 谷口ジローの「遥かな町へ」映画化、フランスなどで公開”. コミックナタリー. ナターシャ (2010年10月20日). 2023年12月8日閲覧。
  3. ^ a b このマンガがゼッタイ!売りたいんですーッ」『ジャンプSQ』第2巻第6号、集英社、東京、2008年6月1日、513-516頁、全国書誌番号:010172432023年12月8日閲覧 
  4. ^ a b c 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 41–82, 谷口ジローが語る 2.
  5. ^ ブノワ・ペータース (2017年2月24日). “「谷口ジローの思い出」ブノワ・ペータース "Souvenir de Jirô Taniguchi " Benoît Peeters”. 日刊ベリタ. ベリタ. 2023年12月9日閲覧。
  6. ^ "マンガ部門". 文化庁メディア芸術祭. 文部科学省文化庁. 2024年1月13日閲覧
  7. ^ "描くひと 谷口ジロー展". 京都国際マンガミュージアム. 京都精華大学国際マンガ研究センター. 2022年. 2024年1月14日閲覧
  8. ^ "楳図かずおさん 27年ぶりの新作で描いた"人類の未来とは"". サイカルジャーナル. 日本放送協会. 2022年1月31日. 2024年1月14日閲覧
  9. ^ a b "Angoulême 2003 : Le Palmarès". Ramboliweb (フランス語). World People. 2003年1月29日. 2024年1月15日閲覧
  10. ^ "谷口ジロー、イタリア・ルッカの祭典で最高栄誉賞を受賞". コミックナタリー. ナターシャ. 2010年11月5日. 2024年1月15日閲覧
  11. ^ "I premiati di Lucca Comics & Games 2003". Lucca Comics & Games 2003 (イタリア語). 2024年1月15日閲覧
  12. ^ "Palmares Premio Romics del Fumetto". Romics (イタリア語). Mens Nova. 2023年. 2024年1月11日閲覧
  13. ^ a b 『描くひと 谷口ジロー』, p. 264, 年譜.
  14. ^ a b "Lauréats Bédélys 2003" (Press release) (フランス語). Promo 9e Art. 17 February 2004. 2004年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧
  15. ^ PREMIADOS VOTACIONES PROFESIONALES” (スペイン語). 35 Salón Internacional del Cómic de Barcelona. Ficomic (2017年). 2017年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月17日閲覧。
  16. ^ Félix López. "Jiro Taniguchi - Ficha de autor en Tebeosfera" (スペイン語). Asociación Cultural Tebeosfera. 2024年1月12日閲覧
  17. ^ Didier Pasamonik (2004年3月29日). "« Quartier Lointain » de Jirô Taniguchi prix de la meilleure BD adaptable au cinéma ". ActuaBD (フランス語). ACTUABD. 2024年1月12日閲覧
  18. ^ "2004, jonction glamour entre cinéma et littérature". Forum International Cinema & Litterature (フランス語). International Films Business. 2004年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧
  19. ^ "第16回「エアランゲン国際コミック・サロン」が開催". メディア芸術カレントコンテンツ. 文部科学省文化庁. 2014年6月4日. 2024年1月12日閲覧
  20. ^ Eckart Sackmann (2008年). "Comic des Jahres 2007". comic.de (ドイツ語). 2008年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧
  21. ^ "Max und Moritz-Preis 2008: Jury gibt Nominierungen in 7 Kategorien bekannt". Internationaler Comic-Salon Erlangen (ドイツ語). Kulturamt Erlangen. 2024年1月19日閲覧
  22. ^ a b 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 256–263, 書誌一覧.
  23. ^ 《遙遠的小鎮》將由比利時改編電影作品 半百人生重溫兒時生活” (中国語). 巴哈姆特 (2010年10月22日). 2023年12月9日閲覧。
  24. ^ 『孤独のグルメ』著者初の本格選集『谷口ジローコレクション』第1期全10巻”. CINRA. cinra (2021年9月24日). 2023年12月8日閲覧。
  25. ^ 谷口ジロー作品の本格選集が雑誌掲載時と同じB5サイズで登場、未発表のラフも掲載”. コミックナタリー. ナターシャ (2021年9月24日). 2023年12月8日閲覧。
  26. ^ 遥かな町へ 谷口 ジロー(著/文) - 小学館”. 版元ドットコム (2016年7月21日). 2023年12月6日閲覧。
  27. ^ 遥かな町へ 谷口 ジロー(著/文) - 小学館”. 版元ドットコム (2016年7月21日). 2023年12月6日閲覧。
  28. ^ 遥かな町へ”. s-book.com. 小学館. 2004年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  29. ^ 遥かな町へ(谷口ジローコレクション)”. 書籍. 小学館. 2023年12月6日閲覧。
  30. ^ Quartiers lointains - Jiro Taniguchi” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman (2002年). 2002年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  31. ^ Quartiers lointains - Jiro Taniguchi” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman (2003年). 2003年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  32. ^ Coffret Quartier lointain - Jirô Taniguchi” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman (2003年). 2007年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  33. ^ L'Intégrale - Jirô Taniguchi - Quartier lointain” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman (2006年). 2007年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  34. ^ Quartier lointain - Edition Spéciale Film” (フランス語). Manga news. MANGA-NEWS. 2023年12月8日閲覧。
  35. ^ Quartier lointain” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman. 2023年12月7日閲覧。
  36. ^ Quartier Lointain (OP Roman graphique)” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman (2020年). 2023年12月7日閲覧。
  37. ^ Quartier Lointain - Sens de lecture original” (フランス語). bande dessinée. Éditions Casterman. 2023年12月7日閲覧。
  38. ^ a b Quartier lointain - Comédie de Genève” (フランス語). théâtre. Comédie de Genève (2009年). 2023年12月6日閲覧。
  39. ^ a b 工藤恵 (2022年12月16日). “舞台「遥かな町へ」 漫画の魅力、国境超え上演 故谷口ジロー作”. あなたの静岡新聞. 静岡新聞社. 2023年12月6日閲覧。
  40. ^ a b Quartier lointain” (フランス語). AlloCiné. Webedia. 2023年12月6日閲覧。
  41. ^ 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 149–170, 谷口ジローが語る 3.
  42. ^ 『描くひと 谷口ジロー』, pp. 171–198, 谷口ジローが語る 4.
  43. ^ Sabrina Champenois (2010年11月22日). “Trait très sensible” (フランス語). Libération. 2010年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  44. ^ イベント満載!! まんがの文化に親しもう!」『とっとり市報』第1024号、鳥取市、鳥取、2012年8月、4-5頁、全国書誌番号:000174232023年12月6日閲覧 
  45. ^ a b 遥かな町へ DVD公式サイト TOPページ”. メディアファクトリー. 2013年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月7日閲覧。
  46. ^ 谷口ジロー原作 映画『遥かな町へ』DVDが本日発売!!”. BDfile. 小学館集英社プロダクション (203-02-27). 2023年12月7日閲覧。
  47. ^ マルっと!とっとり・これまでの放送”. 山陰放送 (2021年). 2023年12月15日閲覧。

参考文献

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  • Paul Gravett (dir.), « De 1990 à 1999 : Quartier lointain », dans Les 1001 BD qu'il faut avoir lues dans sa vie, Flammarion,‎ (ISBN 2081277735), p. 698.
  • Fabien Tillon (2002年10月). "Hiroshi ment ?". BoDoï (フランス語) (56): 16.
  • ブノワ・ペータース 著、染谷誠 編『描くひと 谷口ジロー』双葉社、東京、2019年9月29日。ISBN 978-4-575-31492-2NCID BB29080545OCLC 1126777928全国書誌番号:23284053 

外部リンク

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