数学 > 関数解析学 > 連続線型拡張

数学関数解析学の分野における連続線型拡張(れんぞくせんけいかくちょう、: continuous linear extension)とは、次に述べる手順のことを指す:

完備ノルム線型空間 上にある線型変換を定義する時、初めに 内の稠密部分集合上に線型変換 を定義し、その後、後述の定理によって、 を全空間へと拡張することが便利となることが、しばしばある。この結果として得られる拡張は線型かつ有界(したがって、連続)である。

定理

編集

以下のBLT定理が知られている。なお「BLT定理」という名称は有界線型変換(Bounded Linear Transformation)による。

定理 (BLT定理) ―   をノルム空間 から完備なノルム線型空間   への任意の有界線型作用素とする。このとき 完備化  から   へのある有界線型変換  

 

を満たすものが一意に存在する。また  の作用素ノルムは 作用素ノルムに等しい。

定理の後半のノルムに関する部分は前半から明らかに従う。

応用

編集

一例として、リーマン積分の定義について考える。ある区間   上の階段関数は、次の形式で記述される:

 

ここで   は実数であり、  とし、  は集合  指示関数を表す。  上のすべての階段関数からなる空間に   ノルム(Lp空間を参照)を備えたものはノルム線型空間であり、ここではそれを   と表す。階段関数の積分を、次のように定義する:

 

このとき、関数としての   は、  から   への有界線型変換である[注釈 1]

  ノルムについて右側連続であるような、  上の区分的連続かつ有界関数からなる空間を、  で表す。上述の空間   は、  において稠密であるため、BLT定理を応用することが出来る。結果として線型変換   は、  から   への有界線型変換   へと拡張される。これにより、  内のすべての関数についてリーマン積分を定義することが出来る。すなわち、すべての   に対して、そのリーマン積分は

 

で定義される。

ハーン=バナッハの定理

編集

上述の定理によって、有界線型変換   を、「   において稠密であるなら」、  から   へのある有界線型変換へと拡張することが出来た。   において稠密でない場合、ハーン=バナッハの定理を使うことで、ある拡張が存在することを示すことが出来る場合もある。しかし、そのような拡張は必ずしも一意ではない。

脚注

編集
  1. ^ ここで、  もノルム線型空間であることに注意されたい。実際、 線型空間の公理を満たすことから線型空間であり、そのノルムは絶対値によって定めることが出来る。

参考文献

編集
  • Reed, Michael; Barry Simon (1980). Methods of Modern Mathematical Physics, Vol. 1: Functional Analysis. San Diego: Academic Press. ISBN 0-12-585050-6