造船所

船を建造・修理する場所

造船所(ぞうせんじょ)は、を建造し修理する場所である。

漁船を修理しているフェロー諸島クラクスヴィーク(Klaksvík)にある小さな造船所
オランダGraveにある魚道と造船所
ドイツブレーマーハーフェンのシーヒャウ・ゼーベック造船所(Schichau Seebeck)の建造施設
グディニャ造船所(ポーランド
川崎重工業神戸工場(日本)

概要

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対象の船はヨットクルーズ客船軍艦貨物船など様々なものが含まれる。造船所には船台方式のものとドック方式のものがあり、船台は主に最初の建造に使われるのに対して、ドックは修理に使われることが多い。

大きな造船産業のある国は、日本中華人民共和国韓国ドイツトルコポーランドクロアチアなどがある。ヨーロッパの造船業はアジアに比べるとより小さな会社が沢山ある傾向にあり、アジアでは少数の大企業が造船を行っている。

アメリカ合衆国では、ほとんどの造船所は民間のもので、最大のものは軍需企業であるノースロップ・グラマンである。アメリカで公的に保有されている造船所は海軍の施設で、修理と補給を行っている。

大きな造船所には、クレーン乾ドック(ドライドック)、船台、ほこり対策の施された倉庫塗装施設や船舶組み立て用の広大なスペースなどがある。

船舶がその寿命を終えると、主に南アジアなどにある船舶解体場へ送られる。歴史的には船舶解体も先進国にある乾ドックで行われてきたが、コストの問題や環境規制の関係から発展途上国へと移ることになった。

歴史

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造船所は海に面して、あるいは干満のある川に面して作られる。イギリスでは例えばテムズ川ヘンリー8世1512年にウーリッジ造船所(Woolwich Dockyard)、1513年にデプトフォード造船所(Deptford)を造った)、マージー川、ティーズ川(River Tees)、タイン川(River Tyne)、ウィア川(River Wear)、クライド川などに造船所が作られ、特に後者はかつての世界でも有名な造船センターへと成長した。アルフレッド・ヤーロー卿(Alfred Yarrow)も、19世紀末にロンドンドックランズのテムズ川沿いに造船所を構え、後に北へクライド川沿いのスコッツタウン(Scotstoun)に移転した。他のイギリスの有名な造船所としては、北アイルランドベルファストタイタニック号を建造したハーランド・アンド・ウルフや、ケントのチャタム(Chatham)にある海軍の造船所がある。

世界でもっとも初期の造船所は、インダス文明において紀元前2400年頃、現在のインドグジャラート州にあった港町であるロータルに建設された。ロータルの造船所は、シンド州ハラッパーの都市群と当時周辺のカッチ砂漠がまだアラビア海の一部であったカチャワル半島を結ぶ交易路上にあるサバルマティ川(Sabarmati River)に面していた。ロータルの技術者は高い精度で造船所と交易用の倉庫を建設した。造船所は町の東側に沿って建設され、考古学者によって技術上の高い偉業であると評価されている。土砂で埋まってしまうことを防ぐために川の本流からは離されているが、潮が満ちた時には船が出入りできるようになっていた。

船は、産業革命の数百年も前にイタリアヴェネツィア共和国で最初に工場で量産されるようになった。ヴェネツィアの造船所(アルセナーレ)ではあらかじめ製造されていた部品と組み立てラインを使い、最盛期には16,000人の人を使って、ほぼ毎日1隻のペースで船が大量生産されていた。

造船

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定期検査と補修

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船舶は定期的に造船所のドックに入って、普段は水面下で見えない船底部分も含めた検査と補修を受ける。これらもまた造船所の仕事となる。

船級の維持

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ドック入りの時には、船級協会や船籍国政府の検査を受けて合格しないと、「船級」が維持できずに、船体保険や貨物保険が掛けられなくなる。稀に船級を持たないまま運航する船があり、これらは「サブスタンダード船」と呼ばれ、海難リスクの高い船として注意が払われる[1][2]

船底の掃除と再塗装

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何年も自然の水面に浮かんでいる船の船底には、フジツボなどの水生生物が付着したり腐蝕したりして凸凹が生じる[注 1]。この度合いを「表面粗度」(ひょうめんそど)と呼んで、この抵抗の増加は船速を遅くして航海日数を増やし燃費も悪くするため、定期的な清掃作業が必要となる。船体表面の付着物は高圧水流によって取り除かれ、船底部は特に「船底塗料」と呼ばれる専用の塗料で再塗装される[3]。大型船の船底を清掃するにはドック入りが必要となりコストがかかることから、汚れや生物の付着を防ぐ効果を持つ塗料が研究されてきた。

以前から使用されてきた自己研磨型塗料のうち有機スズ化合物トリブチルスズなど)を含む物は、その毒性[注 2]の高さから環境破壊の原因として国際的に使用が禁止され、現在では塗料の成分が溶け出すことで表面への付着を阻害する自己研磨型(自己消耗型)塗料[注 3]が使われている。船は2-3年ごとに主に船底部の再塗装の為にドック入りして塗り替えが行なわれ、多くの場合、船底部と同時に喫水より上も含めた船体全体が清掃されて必要ならば再塗装される[1][2]。またスクリューの掃除と再塗装も同時に行われる[注 4]

損傷部分の再塗装手順
  1. 水洗
  2. ショットブラスト
  3. 下塗り:プライマー(約40µm)
  4. 中塗り:サーフェサー(約120µm)
  5. 上塗り:エナメル等(500µm以上)[4]

世界の造船所の例

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歴史的な造船所

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軍用の造船所

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ノーフォーク海軍造船所

特徴のある造船所

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脚注

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注釈

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  1. ^ 海水下の物体表面には、海洋バクテリアや珪藻類が短時間で「スライム層」を形成し、やがて、アオノリなどの海藻類やフジツボ類、ムラサキイガイ類、ヒドロ虫類が付着する。このような汚損生物と呼ばれる生物群が船底に付着することで、航走行時の抵抗が増す。
  2. ^ 巻貝への生殖機能異常によって環境ホルモン(内分泌攪乱物質)の1つとされ、イルカ、鯨への蓄積性も認められたため、日本では1997年から使用が全面禁止となった。
  3. ^ 自己研磨型の塗料には、銅アクリルポリマー、珪素ポリマー、亜鉛ポリマーが存在し、基材となるポリマーが徐々に加水分解されて失われて行き、内部の防汚剤が溶け出す仕組みになっている。これらは2年程度で塗り直しの必要がある。また、シリコーン樹脂とオイルを組み合わせたシリル系塗料も開発されている。
  4. ^ スクリューは高速回転するため、剥離しにくく撥水効果の高い塗料により汚れや生物を回転で飛ばす専用塗料が使用される。

出典

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  1. ^ a b 池田良穂著 『船の最新知識』 ソフトバンク クリエイティブ(株) 2008年11月24日初版第一刷発行 ISBN 9784797350081
  2. ^ a b 池田良穂著 『船のすべてがわかる本』 ナツメ社 2009年2月9日発行 ISBN 9784816346408
  3. ^ 船底塗料の種類 - 日本ペイントマリン株式会社
  4. ^ 中道敏彦、坪田実著 『塗料の本』 日刊工業新聞社 2008年4月15日初版1刷発行 ISBN 9784526060526

関連項目

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外部リンク

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  • Sea Your History - イギリスの海軍に関する博物館(Royal Naval Museum)のページ (英語)
  • U.S. Shipyards - アメリカ合衆国の造船所に関する情報 (英語)
  • Trading Places - ヨーロッパの造船所の歴史 (英語)
  • Shipyards アメリカ合衆国の造船所の表 (英語)