通信チェス(つうしんチェス、:Correspondence chess)とは遠距離の相手と、通信を用いて行うチェスの対局を指す。一つのゲームが一日以内で終了するケースはごく稀で、数日・数週間・数ヶ月かかるのが一般的である。

概要

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  • OTBチェス: 「over-the-board chess」のこと。
    対局者とボードを挟んで、リアルタイムにプレイする通常のチェスを指す。
  • 通信チェス: 「Correspondence chess」のこと。
    一般郵便Eメール・専用サーバなどの通信手段を用いて行われる。


  • 通信チェスにも長い歴史がある。通信手段に電報FAX伝書鳩などが使用された事もあった。
  • ゲームの勝敗はすべて管理組織に報告され、レイティングや次の対局などに反映される。
  • 通信チェスの世界最大の組織は、ICCF(国際通信チェス連盟)[1]である。日本では、ICCF公認のJCCA(日本通信チェス協会)[2]が管理している。
  • JCCAは、以前はJPCA(日本郵便チェス協会)[3]と呼ばれていた。
  • インターネットが普及する以前は郵便でのやりとりが多かったため、日本では「郵便チェス」の名で親しまれていた。現在はEメールやWebサーバを使用しての対局が多くなり、変更された組織の正式名称にあわせて「通信チェス」と呼ばれている。

詳細

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通信チェス用のポストカード
  • 通信チェスでは、OTBチェスと同様に持ち時間が決められている。例えば日本の郵便戦の場合は、「10手ごとに30日の考慮時間」となっている。対局時計の代わりに、郵便局が押す「消印」などが消費日数の証拠になる。
  • 通常トーナメント戦は、3人以上の「組(グループ)」をつくり総当り(ラウンドロビン)で行なわれる。1人の相手と1ゲームを行なうシングルラウンドロビンと、1人の相手と白黒を同時平行してゲームを行なうダブルラウンドロビンがある。
    • ダブルラウンドロビンの実例 :
       4人で1組(対戦相手は各自3名)、1人の相手と白黒を同時に対局
        →  3x2=6局のゲームを、各自が同時平行してプレイする。
  • ゲーム中に休暇を申請する事も可能である。通常、暦年あたり合計30日の休暇が取得できる。
    また病気などの場合には、さらに特別休暇30日が取得できる。

対局方法

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  解説
郵便戦 手紙・葉書・絵葉書などの郵便を利用したゲーム。1枚の葉書に1手を書いて、それを双方が交互に送りあう[4]。インターネット環境がなくても、特に問題ない。国際戦では一つのゲームが1年以内に終了するのはまれで、多くは1年半ほどかかる[5]
Eメール戦 Eメールを利用したゲーム。通信方法は異なるが、基本的には郵便による対局と同じ方式。Eメールは郵便より遥かに早く届くので、それだけゲームも短期間で決着がつく。大半のゲームは1年以内となっている[6]
通信チェス・
サーバ戦
Webサーバを使った通信チェス。プレイヤーは決められたウェブページに毎回ログインして、自分の手番のゲームボードの駒を動かす。指し手はデータベース・サーバに記録され、ゲームの進行や勝敗が一元化管理される。この通信チェス・サーバ戦は、持ち時間が非常に長くなった形の「オンライン・チェス」である。

特徴

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  1. 対局は同時刻に行われず、双方が一手一手異なる時間帯にプレイする。
  2. 持ち時間が時間(Hour)ではなく、日数(Day)単位で規定されている。
  3. ゲームの対局中でも、書籍やデータベース・ソフトの利用が公認されている。


  • 通信チェスの長所は、外出せずに遠隔地のプレイヤーと対戦できる点である。仕事が忙しかったり病気だったりしても、国内だけでなく世界中の人々とチェスをプレイできる。
  • ゲーム期間が長いので、指し手以外の様々な情報のやり取りも可能である。
  • 通信チェスでは、ある程度の管理能力と根気が必要となる。返事が待ち遠しくて我慢できない性格の人には、あまり通信チェスは向いていない。
  • ICCFの国際戦では、英語力も必要になる。ICCFからの連絡は、すべて英文となっている。
  • 郵便戦やEメール戦では、指し手を書き間違えても直ちに「負け」となるわけではない。ルールに従って、違反した側の持ち時間が削られる。

評価 (通信チェス・郵便チェス)

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  • 「アマチュアが序盤戦などを研究する場合に理想的な方法である。」 フランソワ・ル・リヨネ[7]
  • 「郵便チェスでは定跡本等を見ながら指せます。序盤の定跡を覚えるよい勉強になります。」 有田謙二[8]

歴史

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  • (年代不詳) 中世、オーストリアの一部の商人の間で対局。[7]
  • (年代不詳) フランス王ルイ6世vs英国の王ヘンリー1世で対局。[7]
  • (年代不詳) 18世紀 ユーゴスラビアの商人vsヴェニス人で対局。[7]
  • (年代不詳) フレデリック2世vsヴォルテールで対局。[7]
  • 1824年 都市間で通信チェスが開催。(アムステルダムvsロッテルダム、ロンドンvsエディンバラ)[7]
  • 1834年~1836年 パリ対ロンドン・ウェストミンスター・クラブのマッチ開催。パリが2:0で勝利[9][10]
  • 1844年 ワシントンvsボルチモアの、大都市間での電報チェス。[7]
  • 1889年~1890年 OTBの世界選手権を行なったシュタイニッツとチゴリンが、電報を使ったマッチを行なう。シュタイニッツが2:0で勝利。[10]
  • 1928年 最初の国際組織IFSB[11]創立。[7]
通信チェス世界チャンピオン(近年)
国籍 氏名
19(Eメール戦) フランス Christophe Léotard
20(郵便戦) フィンランド Pertti Lehikoinen
21(Eメール戦) オランダ Joop J. van Oosterom
22(ウェブ戦) ロシア Aleksandr Surenovich Dronov
23(ウェブ戦) ドイツ Ulrich Stephan
24(ウェブ戦) スロバキア Marjan Šemrl
  • 1935年~1939年 最初の通信チェス・オリンピック開催。
    (18カ国参加。ハンガリーが優勝。)[7]
  • 1935年 ICCFの前身であるIFSBが国際通信マスターのタイトルを設置[12]。最初にそのタイトルを得た25人の中には、アレヒン、ボゴリュボフ、ケレス、グリュンフェルド、マローツィ(Maroczy)、バロー(Balogh)、エリスカセス(Eliskases) らがいる。[10]


  • 1936年 通信世界選手権のために、実行委員会が7人のメンバーにより結成される。このうちの一人にOTB世界チャンピオンのアレヒンがいる。第二次世界大戦が始まって、この選手権は行なわれずに終了。[10]
  • 1945年 消失したIFSBに代わり、ICCF(国際通信チェス連盟)創立。[7]
  • 1947年 ICCFにより第1回世界通信チェス選手権の予選スタート。[10]
  • 1950年 その決勝トーナメントがスタートし、オーストラリアの C. Purdy が第1回世界チャンピオンになる。[10]
通信チェスの日本人称号保持者(2007年11月現在)
タイトル名 氏名(敬称略)
ICCF GM 大竹栄
ICCF GM 酒井清隆
ICCF SIM 富澤尊儀
ICCF IM 小野田博一
ICCF IM 寺田章次
アジア・アフリカチャンピオン 早川悟
  • 1954年 ディックホフ記念トーナメント開催。L.シュミット(独)が優勝。[7]
  • 1965年 JPCA(JCCAの前身)がICCFに加盟。[10]
  • 1966年 日本初の通信チェスの日本選手権が行なわれる。[10]
  • 1970年 宇宙船ソユーズ9号vs(地上の)ソビエト連邦の技術者で対局。 
    初の「宇宙vs地球」対局の所要時間は6時間、結果はドロー。[7]
  • 1997年2月 ICCF初のEメール招待トーナメント「ペリカン・メモリアル」開催。[10]
  • 2002年 JPCAが第1回Eメール日本選手権を開催。[13]
  • 2004年 ICCFでWebサーバ戦が開始となる。[14]
  • 2008年 ICCFですべてのEメール・トーナメントを廃止。[ICCF Confress 2008 Minutes]

注釈・出典

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  1. ^ ICCF:International Correspondence Chess Federation
  2. ^ JCCA:Japan Correspondence Chess Association
  3. ^ JPCA:Japan Postal Chess Association
  4. ^ 厳密にいえば、前回の相手の手と今回の自分の手を書いて送付する。相手の指し手が予想できる場合は、それに対する応手を書いて送っても良い。
  5. ^ この部分の出典については、1996年から2005年に発行された専門誌『Chess Mail』が挙げられる。トーナメント表などに対局期間の記載あり。なお、現在この専門誌は休刊(廃刊)している。
  6. ^ この対局期間の出典については、ICCFのトーナメント表を参照。全ゲームの7割から8割が、およそ1年以内に終了している。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l フランソワ・ル・リヨネ 著 『チェスの本』 成相恭二訳 白水社 ISBN 4-560-05603-X
  8. ^ 有田謙二著 『チェス小百科』 河出書房新社 ISBN 4-309-72176-1
  9. ^ パリ・チームが用いたディフェンス(1. e4 e6 2. d4 d5) が、このマッチ後にフレンチ・ディフェンスと呼ばれるようになった。
  10. ^ a b c d e f g h i 『ICCF Gold』 2002年ICCF発行
  11. ^ Internationale Fernschachbunder
  12. ^ 1935年、Fernschach誌に発表
  13. ^ JPCAのウェブサイト(英語版)より。
  14. ^ ICCFの公式サイトより。

関連項目

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外部リンク

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